推し活再開
わたしは、子どもが苦手である。
嫌い? そういうわけではない。おそらく、だけど。わたし自身ひとりっ子で、両親もひとりっ子なので従兄弟もいない。ご近所さんたちの屋敷にも小さな子がいなかった。
つまり、これまで子どもと触れ合う機会がなかった。というわけで、子どもとどう接していいのかわからない。
子どもについては、一般的な話や親たちの愚痴や書物による蘊蓄などによって知らないわけではない。
『うるさくてしつこくて可愛げがない』
というのが、わたしの子どもにたいする認識。というか、偏見。
わたし流の砕けた表現をすると、「めちゃくちゃ鬱陶しい」である。
それはずっとつきまとっていて、いまもその認識や偏見はなんら変わってはいない。
(というか、わたし自身の精神年齢がお子ちゃまだからかも)
わたし自身、大人になりきっていない。だから、子どものことやその接し方がわからないのかもしれない。
それはともかく、いまである。
その子どもがすぐ目の前にいる。
ブラッドは、年齢は七歳。当然、男の子である。
金髪碧眼で、澄んだ青空と同じ色の瞳はパッチリしていて、頬にはえくぼが出来る。サラサラの金髪は軽くウエーブがかかっている短髪で、一見して髪質が柔らかいことがわかる。顔自体は小さい。それをいうなら、体もそんなに大きくはない。背はそこそこかもしれないけれど、線が細いのだ。
クラークとはまた違った美しさ。まさしく、貴公子である。
しかも美しいだけではない。可愛いのだ。
うつくし可愛い、という表現がピッタリかもしれない。
彼は、とにかくおとなしい。口数も少ないけれど、そもそも控えめなよう。やさしく気遣い抜群で謙虚なところは、若い頃のクラークに似ているかもしれない。
わたしは、ブラッドをひとめ見た瞬間心を奪われた。衝撃が全身を駆け抜けた。実際、ふらついて倒れそうになった。それから、鼻から血をまき散らしそうになった。
一瞬にしてわたしを虜にした彼は、なにもかもが尊かった。
(ダメ。可愛すぎる。尊すぎる。わたし、自制出来ない)
子どものことが大の苦手のわたしが、元推しの息子に心底惚れた瞬間だった。
ああ、そうそう。惚れた、というのは愛だの恋だのというわけではない。それは、いくらなんでも犯罪っぽくなってしまう。
そうではない。
『可愛くて尊い』
認定である。
わたしは、この瞬間から推し活を再開した。