本当の君を愛し続けると誓おう
最近Eveさんにどハマりしている神崎です。
思いついたので書いてみました。
「ねえ」
「ん?」
「大好きだよ。付き合って?」
今日は優斗の誕生日。
これで15回目。バレンタインの日の7回と、優斗の誕生日の8回。高校に入ってからずっと。
いつも「ごめんね」と言われる。
今日も多分……
「や…………だ」
「え?」
「やっとだ」
「え?」
「あはははは!ほんと、やっと……やっとだよ!」
“やっと”?
「ふふふ……今日で僕は23。君は22。僕たちはもう、大学を卒業したよね?」
「え、うん……そうだね……?」
感情が読めない目で笑って話しかけてくるこの人は、いつもの優斗なのだろうか。
「だから…………もう君の世界は僕だけでいいよね?」
「え?」
「分かりにくかったかな……もっとちゃんと言おうか?僕以外の人と会わないで?僕以外と話さないで?僕以外のことを考えないで?」
それに対して困惑してるわけじゃない。
でも、何を言っているのかが全く分からない。
「え?なんで?ずっと、“ごめんね”って言ってきたじゃん……しかも何なの急に。怖いよ……」
「大学を卒業させてあげたかったんだよ。でももう卒業したよね?……だから僕は君を僕の作った籠に閉じ込めるんだ。僕にしか頼れないように。一生僕しか見ないように。大切に大切に」
そう優斗は言った。
「なんで……やだよ……怖いよ……」
「君が僕のことを考えるようにずーーっと断ってきたんだ。でも今日で終わり。君も嬉しいでしょ?」
「いやだ……いやだよ!」
私は走り出して優斗の部屋のドアノブを回した。
え?
回らない。
開かない。
「ははは……まさか逃げるなんて思ってもなかった……でも……もうこれで……君は……朱里は……僕のところから……逃げられないよね……?」
優斗が感情のない目をして近寄ってくる。
「私はそんなこと望んでない!やめて!来ないで!ねえ!いつもの優斗に戻って……!」
その手には毒々しい液体の入った注射器が握られていた。
「もう……遅いよ……何もかもが、手遅れなんだよ……ごめんね、チクッとするよ」
「やめて!!」
暴れた私を優斗が押さえつける。
その直後、首に針で刺された痛みが走った。
そして私は彼を睨もうとして顔を上げた。
見上げた彼は今にも泣き出しそうな顔をしていた。馬鹿だな。泣きたいのはこっちだよ。
「これで君はもうここから出られないね……起きた時にはもう出られない……記憶もない……僕の可愛い奥さんなんだから……」
なんで君が泣きそうなのさ。
瞼が開かなくなってきた……
「ねぇ…………ゆうと……」
「なあに?」
最後に、これだけ…………
「君の優しいところ、笑ってるところ……大好きだったよ……」
「……ッ!」
彼が涙を零した。泣かないでよ。
「こんなことにならなかったら……君がこんな人にならなかったら……また違ったんだろうね……って言っても……もう遅いか…………私は今言ったこと……忘れると思うけど……君だけは覚えててね?」
これでいい。これで満足。
「私」の最後は……これで………………
最後に見たのは、彼が泣いたぐしゃぐしゃの顔だった。
彼女が……朱里が、僕の方に倒れ込んできた。気を失っているのか……?
「これで……よかったのかな……」
最後の言葉……思い出しちゃいけない。
後悔してしまうだろうから。
ずっと前から好きだった。
淡い気持ちが……執着に変わったのは……ドロドロとした気持ちに変わったのは、いつだっただろうか?
彼女に近寄ってくる虫を退治していたのは、いつからだっただろうか?
彼女の情報を片っ端から集め出したのはいつからだっただろうか?
もう随分と昔だったように思える。
ずっと、ずっとこの時を待ってた。
だから僕は、どんな犠牲を払ったとしても。
たとえ、好きな人の今までの記憶を無くさせたとしても。
それでも……それでも僕は、本当の君を愛し続けると……そう誓おう。
そう誓いながら彼女をベッドに横たわらせた。
そして僕はそのベッドに腰掛けた。
「明日、起きてるといいなあ……起きたら何しようね?デート?家で過ごすのもいいね?」
彼女の頬に零れる涙を拭きながら虚空に向かって呟いた。
そう呟いた僕は泣いていた。
男の子は元純粋な男子です。
なんでこうなったのか……?w