色波高校ダレ部、始動!
「おい、記念すべき第1回だぞ!なんでそんなダラダラしてんの!」
色波高校管理棟、教室より狭い旧社会科準備室に、ダレ部部長、山白帯牙の通る声が響く。
その耳に残る声を、遮蔽なしに聞いてしまった被害者が三人。
「うっさ…。いきなりなんですか?タイガさん」
帯牙の突然の騒音に嫌味を言いつつ、しっかりと反応を返したのは、ダレ部唯一の1年生、赤下あかり。
「あかりちゃん、気にしないで。山白のコレは無視するのが正解だよ」
あかりを優しく諭すも、帯牙に対して辛辣な扱いをする女子生徒。彼女はダレ部2年生の青邑夏月だ。
「…………………チッ」
部室に設えた座席の端を陣取り、帯牙の言に対し舌打ちだけを返す。黙々と手元のスマホ3台でソシャゲを同時展開する男子生徒がダレ部(仮)2年生、緑川|陽輝。
三者三様の反応を認めた帯牙は、満足そうに頷く。
「いいね、この個性あふれる反応。まるで人だな!最高だ!」
「人間未満は声を10デシベル以下に保ってくれないか?僕ら人間の生活の邪魔をするなよ」
帯牙の喧しさに耐えられないといったように、陽輝が騒音の元凶を睨む。
当の元凶は全く気にしておらず、むしろ反応が返ってきたことが嬉しいのか、陽輝に満面の笑みとサムズアップを返す。
そんな帯牙に陽輝は呆れてため息を漏らし、スマホ3台をまた操作し始める。
「……なんでこんな部に入っちゃったんだろ」
その様子を、部室に設えてあるソファにちょこんと座って眺めていたあかりが、そんな言葉を漏らす。
「わたしはあかりちゃんが来てくれて嬉しいよ。あかりちゃん可愛いし、私のおすすめしたアニメとかちゃんと見てくれるし、マンガもラノベも読んでくれるから、大好き!」
そんなあかりの肩に身を寄せて、華やかな笑みで夏月が語り掛ける。
「好きです。夏月先輩、結婚しませんか」
「ふふ、月収一千万で考えてあげる」
華やかな笑顔からとんでもない発言が出て、思わず「うわぁ…」と声を漏らすあかり。
そんなささやかな時間を過ごしながら、色波高校の放課後はゆったりと過ぎていく。
「そんなこんなのああだこうだで、俺と、俺たちの青春が始まった!」
「そんなこんなのああだこうだで始まる青春って、たかが知れてません?」
「お前らはともかく、僕の学生時代をそんなこんなとああだこうだでまとめるな。しばくぞ」
「こういうとき締まらないよね。山白って」
彼ら彼女らの、怠惰で緩慢な青春が始まる。
・登場人物紹介
山白帯牙 (やましろ たいが)
4月1日生まれ。文武両道、才色兼備、支離滅裂、唯我独尊。
座右の銘は「人であれ」
好きなもの→人生を豊かにする要素
嫌いなもの→意志を持たない人