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1 プロローグ

「クソッ、また所見殺しかよ。ほんとクソゲーだな」


 口ではそう言いつつも、彼―――南沢シュウはこのゲームを数時間もプレイしている。


 週末日、仕事でたまったストレスをゲームで晴らす。


 シュウの場合はストレスが増えているが、これが彼の日常だ。


 だが、そんな日常も、突然崩壊する。


 モンスターによって。


「な、なんだ!?」


 突如起こる大きな揺れ。


 25年ほど生きたシュウでも経験したことがない揺れだ。


「しょうがないな」


 シュウはすぐ冷静になり、ゲームを止め、台所へ向かう。


 すぐに揺れは収まり、丁度ゲームも一段落ついたところだと、昼食を食べに向かった。


 だが、キッチンで彼の動きは止まってしまう。


 見てしまったのだ。


 小柄で緑の肌に醜悪な見た目のモンスター―――ゴブリンを。


 なぜここにゴブリンが?


 そもそもあれはゴブリンなのか?


 今、夢を見ているのか?


 シュウの思考は定まらず、気が付くとゴブリンの拳が目の前に。


「いっっっってぇぇ!!」


 顔にクリーンヒット。


 激痛が走り、立っていられなくなってしまう。


(逃げないと………)


 そんな時でもシュウの思考は冷静で、すぐに体をゴブリンの反対方向へ向けた。


 しかし、平衡感覚が仕事をしていないためか、ふらつき、コケてしまう。


 そんな隙をゴブリンは見逃さない。


 シュウは押し倒されてしまった。


 ゴブリンは鋭い歯を修に突き立てようとしている。


(こいつ………!! 人を食うのか!?)


 食う、食われるの関係は自然の摂理だ。


(何か武器を…武器武器武器武器ッ………!!)


 シュウもすぐに思考を切り替えて、戦う方向に決める。


 だが、辺りに武器になりそうなものはない。


 そんな時、ゴブリンの牙がシュウの肩を突き刺し、そのまま抉り取った。


「ぐっ……があああああああぁぁぁあああ!?」


 想像を絶する痛み。


 先ほどとは桁違いに痛い。


 痛みからシュウは暴れ、ゴブリンの拘束から逃れることができた。


 肩を抑えながらキッチンの近くに向かう。


 すぐに引き出しを開け、刃渡り十五センチの包丁を取り出す。


 同時にゴブリンが後ろから飛びついてきた。


 不意を突かれたシュウは包丁を落としてしまう。


 倒れ、這いずりながらも包丁の元へ。


(痛いッ……!! 痛い!!痛い痛い痛い………!!)


 途中、何度も噛み付かれ、体を抉られながらも、何とか包丁を手に取ることができた。


 シュウは手首をひねり、ゴブリンへ突き刺す。


 視界がぼやけているためか、肩に刺してしまい、致命傷には至らなかった。


 ゴブリンの悲鳴が聞こえるが、痛みに耐えながら、シュウの体へ齧り付く。


 他のゴブリンなら、痛みに耐えかね、逃げようとしただろう。


 ただ、このゴブリンはちょっとだけ、空腹だっただけだ。


 シュウは痛みが少し和らいだ気がした。


 興奮し出たアドレナリンが痛みを和らげたのだ。


(死にたくない)


 シュウの思いはこれだけだった。


 無我夢中で、包丁の抜き刺しを繰り返す。


 どれくらいたっただろうか。


 いつの間にかゴブリンは死んでいた。


『レベルが上がりました。一番初めにモンスターを討伐しました。固有スキル「オリジンハンター」を取得しました』


 やった、やったぞ!


 シュウは歓喜し、倒れこんだ。


(あれ……体が………動かない)


『最初の討伐と最初の死を同時に達成しました。固有スキル「ゲームシステム」を取得しました。実績を解除しました。次のリスポーンは一時間後です』


 ◇◆◇


 そこはボロボロの廃墟だ。


 ゴブリンの死体が大量にある以外は普通だろう。


 大量のゴブリンの屍の上に立つ大男は達成感からか喜びに満ちていた。


『条件を満たしました。王種スキル「殺戮王」を取得しました』



 場所は変わり、一つの民家へ。


 そこにいる彼は偏食だった。


 周りからは狂ってると思われるほどに。


 そして彼は、先ほど殺したゴブリンを、ワクワクしながら食べた。


「美味しい………!!」


 彼は味覚も、頭も狂っていた。


 ナイフ片手にゴブリンや他のモンスターを殺し、その場で食べていった。


『条件を満たしました。大罪スキル「暴食」を取得しました』


 

 変わってしまった世界で、人々も変わる。


 この世界にいち早く適合する狂人たち。


 中でも、最も狂った人物は、復活する。


『一時間たちました。リスポーンします』


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