第五話
僕とダーナは近所の冒険者ギルドに来ていた。
僕たちは別に冒険者じゃないけれど、冒険者以外の人も冒険者ギルドにはやってくる。
依頼人として、ね。
「すみません。護衛依頼をお願いしたいんですが」
「はい、どちらまででしょう?」
「近所にある遺跡まで往復で。拘束は一日でお願いします」
「はい。お嬢ちゃんたち、護衛依頼の報酬は支払えるのかな?」
「ふふふ、お金ならちゃんとありますので」
ダーナが不敵な笑みを浮かべている……!
そう、僕たちは近所にある遺跡まで冒険者を雇うことにしたのだ。
目的はふたつ。
ひとつは街の外の土地を【領土支配】していくこと。
遺跡と往復の道を【領土支配】すれば、かなりの経験値が見込めるはずだ。
ふたつには、遺跡に巣食う魔物の討伐だ。
どうも遺跡にはアンデッドが巣食っているらしく、ダーナはそれを事前に情報収集して知っていたらしい。
アンデッドならばダーナの光魔法で浄化できる。
アンデッド以外の魔物は護衛の冒険者に丸投げすればいい。
「なるほどねー。結構、正統派ルート?」
「お金がなければ取れない手段ではありますね。これを期に戦える従魔が一体、欲しいですね」
「それな」
戦える従魔がいれば、冒険者を雇う必要もないのだ。
翌々日、僕たちは護衛依頼を受けてくれた新人冒険者たちと一緒に近所の遺跡に来ていた。
ダーナの言う通り、街の外は誰の支配下にもないらしく、やすやすと僕の領土になってくれた。
経験値がっぽがっぽだ。
そして遺跡も僕の領土になった。
ちゃんとした建物があると経験値の入りが違うことも判明した。
この時点で【召喚】のレベルは一気に3レベルも上昇している。
遺跡が大きかった。
そしてアンデッドだ。
これはダーナ無双。
光魔法の浄化を放てば、一発でアンデッドは昇天していく。
気持ちいいくらい経験値が入ってくる。
単体では遺跡ほどじゃないけれど、数が多いのでかなりがっぽがっぽである。
復路は別の道をお願いしたため、領土が増えた。
ダーナってば抜かり無い。
最終的に僕の【召喚】は4レベルも上がったのだった。
というわけで、僕の部屋で四回連続で【召喚】することになったのである!
いくぞー、第一弾!
「【召喚】!」
ズモモモモモ!
複雑な魔法陣がくるくると回りながら派手に輝く。
ブラックウルフだ!
コイツは黒い狼の魔物で、夜闇に紛れて獲物を襲う危険な奴だ。
《名前 マット 種族 ブラックウルフ
ギフト 【影化】》
【影化】は影に混じって姿を隠す隠密系のギフトらしい。
「では――【転職】」
マットの足元をクルクルと魔法陣が回りながら輝く。
すると目の前にリストが出てきた。
「〈暗殺者〉! これ格好良い!」
「いいですね、〈暗殺者〉。ブラックウルフらしいですし、何より強力な戦闘系クラスです」
《マットを〈暗殺者〉のクラスにしますか?》
イエス!
そして第二弾!
「【召喚】!」
ズモモモモモ!
複雑な魔法陣がくるくると回りながら派手に輝く。
魔法陣から現れたのは?
デカぁい! ミノタウロスだァ!
ダンジョンの守護者としておなじみ、強力な魔物だ。
《名前 ロース 種族 ミノタウロス
ギフト 【剛力】》
【剛力】は両手持ちの武器を片手で扱うことのできるギフトだ。
「では――【転職】」
マットの足元をクルクルと魔法陣が回りながら輝く。
すると目の前にリストが出てきた。
「やっぱミノタウロスだし〈斧士〉とか?」
リストを覗き込んだダーナが「〈鍛冶師〉などどうでしょうか?」と提案してきた。
なるほど、この怪力を活かして【鍛冶】かぁ。
父上のお手伝いに良さそうだ。
「よし、ロースを〈鍛冶師〉に!」
《ロースを〈鍛冶師〉のクラスにしますか?》
イエス!
そして第三段!
「【召喚】!」
ズモモモモモ!
複雑な魔法陣がくるくると回りながら派手に輝く。
魔法陣から現れたのは?
金色の装飾がなされた弓だ。
「あ、従魔じゃなくて宝具だ!」
「生き物以外も【召喚】できるのですね」
さてステータスは?
《名前 シャイニングボウ 分類 ボウ
ギフト 【光の矢】》
どうやら光の矢を打ち出す魔法の弓らしい。
「凄い、矢がなくてもいくらでも撃てるよこれ」
「非力な私にちょうど良さそうですね。光属性なところとか相性が良さそうです」
「え? うん、そうだね。ダーナに預けておくよ」
これでダーナはアンデッド以外も倒せるようになった。
でも【弓技】のギフトもないのに、弓は当たるのだろうか?
そして第四段!
「【召喚】!」
ズモモモモモ!
複雑な魔法陣がくるくると回りながら派手に輝く。
魔法陣から現れたのは?
スライムだ!
あらゆるものを消化・吸収し、魔法でなければ倒せない凶悪な魔物として恐れられている。
《名前 ベス 種族 スライム
ギフト 【分裂】》
【分裂】は一定以上の食料を消化して大きくなった際に、【分裂】して増えるギフトだ。
増えたスライムもベスとして扱われるので、僕の従魔が増えるよやったね!
「【分裂】とは凶悪な個体ですね。――では【転職】」
マットの足元をクルクルと魔法陣が回りながら輝く。
すると目の前にリストが出てきた。
魔法系と生産系が多いかな。
あ、これは珍しいぞ。
「ねえダーナ、〈密偵〉っていうのは?」
「スライムが〈密偵〉ですか? 聞いたこともありませんね……」
「面白そうだし、これにしよう」
《ベスを〈密偵〉のクラスにしますか?》
イエス!
当面はマットを街の外の領土内で狩りをしてもらって、ロースは父上の手伝いで鍛冶、ベスは母上の手伝いでゴミ箱になってもらうことにした。
ベスは生ゴミなども遠慮なく食べてくれるから、凄く便利な奴だ。
恐ろしいスライムも従魔として言うことを聞いてくれると、頼もしい味方になる。
僕は今日、頼もしい味方を三体も手に入れたのだ!
《名前 サロモン 種族 人間 クラス 魔王
ギフト 【召喚Lv7】【領土支配】》
《名前 ダーナ 種族 天使 クラス 神官
ギフト 【転職】【光属性魔法】》
《名前 ゴブオ 種族 ゴブリン クラス 土魔法使い
ギフト 【農耕】【土属性魔法】》
《名前 ナイロン 種族 ラッキーシープ クラス 水魔法使い
ギフト 【幸運】【水属性魔法】》
《名前 マット 種族 ブラックウルフ クラス 暗殺者
ギフト 【影化】【死線】》
《名前 ロース 種族 ミノタウロス クラス 鍛冶師
ギフト 【剛力】【鍛冶】》
《名前 ベス 種族 スライム クラス 密偵
ギフト 【分裂】【隠密】》
《名前 シャイニングボウ 分類 ボウ
ギフト 【光の矢】》




