006軒:魔導具ショップは楽しい
――ミナトとアーチェはエレベーターで魔導士ギルドの1階へ降りてきていた。
まずは受付でアーチェの魔導書士登録の確認をして、それから魔導具ショップに行くのだ!
「これは一ノ瀬湊さんにアーチェ・ブロンさん、ギルドマスターとの面会は無事に済まされたようですね。」
「あぁ……今度はアーチェの魔導書士登録の確認をお願いしたい。登録が無ければ今登録を申請する。」
「かしこまりました。少々確認しますのでお待ちください。」
……ランチを食べてからギルドマスターに会いに来て、今は15時ぐらいと言ったところだろうか、両手で魔導書を抱えている人や、魔導術士とパーティを組む為に訪れる人まで様々だが、魔導士ギルドはなかなかに人の往来が激しいようだ。
「お待たせしております。
登録を確認出来ませんでしたので、新規に登録させて頂きます。」
「こちらに移動して頂いて、アーチェ・ブロンさんの右手を石板の中央に置いて頂けますでしょうか。」
……受付に向かって右側のカウンター横に案内される。
そこには黒い黒曜石でできた石板が置かれていた。
どうやら情報を登録する魔導具のようだ。
「はいなのん。これでいいのかな?」
アーチェが黒曜石の石板に手を置くと、それは淡く光り出し読めないが文字が浮かび上がった。
「以上で登録は完了となります。」
「随分と簡単に終わるんだな……」
「元々は記憶の魔導書に登録していたのですが冊数が増えまして、数年前にこの記憶石板の魔道具が開発されて、今では魔導士ギルド加入者の情報は全てこちらで管理しています。」
「今後、魔導士ギルドを通じまして、魔導術士が探されている魔導書の作成依頼を受けて頂く事が可能になります。
その際に作成納品されました魔導書の記録なども、こちらの記憶石板に保存され参照する事が可能になります。」
「了解なのん!」
「何だかアーチェが立派になった気がするな……登録しかしてないが」
「ひと言余計なのん……」
「まぁ魔導具ショップに行くか」
「行くのん♪」
◇◆◇◆
――手持ちは金貨27枚だが、今日の宿代と夜の食事代を引いておくと、残りの軍資金は金貨25枚と言う事になる。
魔導具ショップは1階受付の丁度裏側あたりだった。
魔道具士フロアはショップを中心とし、外側に工房がいくつか併設されている。
工房は自分でアトリエを持つ事ができない、駆け出しの職人が使っているようだ。
どのような物が実際に販売されているのか、気になる気持ちでいっぱいだ!
「……なかなか色々な物があるな」
入ってすぐに目に飛び込んで来たのは白の書のブースだが、薄さや大きさ外装の作りで様々な物が置かれている。
「簡単な生活魔法は比較的に薄かったり小さかったりしても平気なのん」
「でもミナトが欲しい魔法の倉庫は、それなりにしっかりした物が必要なのん」
「ギルマスが時空間系中級魔法って言ってたもんななるほど……」
「このあたりのはどうのん?」
アーチェがシンプルな黒革の白の書を選んできた。
「値段は……金貨2枚か、よいんじゃないか?」
「じゃあミナトの魔法の倉庫はこれにするのん。」
「ボクはこっちの薄い安いのを3冊セットのを買わせて欲しいのん」
「何に使う予定なんだ?」
「1冊は服とかを綺麗にする清潔の魔導書用にするのん」
「3冊で金貨1枚かきっとあれば使うだろうしいいと思うぞ」
「ありがとうなのん♪」
「他はペンとかインクとかいいのか?」
「ペンは父さんが使ってたのをそのまま使ってるのん。
インクは無くなったら自分で作るのん」
「じゃあ向こう側の魔導具も見てみるか」
……二人でブースを移動すると、思ってた以上に魔導具の種類があった。
「こっちも色々な物があるな……思ってた以上だ……」
手頃な物だと『温度を一定に保つ石板』『清潔なる水』『魔力照明』が銀貨30枚ぐらいからあり、『力が強くなるグローブ』は金貨5枚、『高く飛ぶ事ができる靴』『双方向に瞬間移動できるプレート』に関しては金貨50枚以上となっている……
「力が強くなるグローブって重い物が持てるようになるのかな?」
「説明を見ると力の魔導書付与ってあるからきっとそうなのん」
「どのくらいの物が持てるんだろうな……」
色々夢に溢れた物があってファンタジー世界に来たようだ!
……いや、ここは異世界だった。
「いらっしゃい、それが気になってるのかい?」
そんな事を思っていると、ショップに立っていた若い男性の魔導具士さんが声を掛けてくれた。
「えぇ、このグローブはどのくらいの物が持てるのですか?」
「それは主に石材建造物の現場や、木材や石材彫刻家が使うから結構重い物も持てるが、どのくらいかって言うとそうだなぁ……」
「あぁ、内郭からこのギルドに来る途中に白い石柱で女神彫刻のヤツとかあったろ?あれ何かも普通に持てるぞ」
「それは凄いですね……一つ買っておこうかな、アーチェは何か気になる物あるかい?」
「う~ん、ボクは魔導具は特に気になるの無いのん」
「そうか了解」
「魔導具士さん一つ伺っていいですか?」
「ああ何だ?解る事なら何でも聞いてくれ」
「こちらには並んでないようなのですが、包丁に刃が欠けないように付与したり、革袋に空気を入れて抜けないようにしたりもできるのですか?」
「ああ……今は手持ちに無いが、硬化の魔導書や固定の魔導書あたりがあればできるぞ、貴族様お抱えの料理人とかは自分の包丁に硬化の魔導書を付与したりする。」
「その魔導書ならボク作れるのん」
「おぉ……!」
何かこう……自分好みの魔導具が作れとテンション上がって楽しい!!
「嬢ちゃん魔導書士なのか、その若さで凄いじゃねぇか」
「持ち込みで付与して貰おうかなぁ」
「その時は受付で依頼を出すといいぞ、嬢ちゃんにも俺ら魔導具士にもプラスになるからなぁ」
「解りました。ありがとうございます!」
もっと色々この世界の事が解ったらオーダーメイド魔導具考えよう!
……お金も貯めないとな。
「アーチェ、硬化の魔導書や固定の魔導書用の白の書も選んで貰っていいかな?
それ選んで貰ったら受付で依頼出してから帰ろうと思う」
「わかったの~ん、さっき見た感じだと1冊金貨1枚のが2冊いるのん」
「じゃあそれも持って会計して行こう」
「白の書が計6冊と力が強くなるグローブの合計で金貨10枚になります。」
……金貨10枚を支払、これで手持ちの金貨17枚か……。
買った荷物はアーチェの魔法の倉庫に収納してもらった。
受付で俺が魔導書と魔導具への付与の依頼を出し、魔導書はアーチェに受けてもらってギルドを後にした。
◇◆◇◆
手持ちがかなり減ったから、200カラットの金剛石だけでも換金したいなぁ
――商業ギルド、外郭の雑貨屋に商品を卸したり、内郭の御用を聞いて商品を揃えたり、商売であれば何でも請け負う組織。
このオフィールの街だけでなく、各街の商業ギルドが連携しているらしい。
「お金が大分減っちゃったから、ちょっと物を換金したいんだよね」
「ボクは売れる物、一角猪の肉100kgぐらいであまり持って無いのん……」
……一角猪の角は俺の腰に挿さっている。
「一角猪の肉は貴重らしいから取っておいて、ここは俺のとっておきを出してみる!」
「よく解らないけどついて行くのん」
……二人は商業ギルドに足を踏み入れた。
「高く飛ぶ事ができる靴」
……グリフォンのなめし革を使用し作られた茶色いブーツ
元の魔法:飛行の魔導書
「双方向に瞬間移動できるプレート」
……希少金属であるミスリルのプレートを2枚使用し瞬間移動する事ができる。
元の魔法:瞬間移動の魔導書
「力が強くなるグローブ」
……マンティコアのなめし革を使用し作られた赤茶色のグローブ
元の魔法:力の魔導書
「魔力照明」
……さまざまな形があるが魔力を込めると光る
元の魔法:灯りの魔導書
「冷風を出す筒」
……銀板の円筒にしてそこに魔法を付与した物
元の魔法:風の魔導書氷の魔導書
「熱風を出す筒」
……銀板の円筒にしてそこに魔法を付与した物
元の魔法:風の魔導書熱の魔導書
「清潔なる水」
……教会で清められた聖水に魔法を付与し汚れや菌を浄化する水
元の魔法:清潔の魔導書
「温度を一定に保つ石板」
……溶岩の空洞に銅を流し込み魔法を付与した石板
元の魔法:保温の魔導書