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027軒:帰還と代償

――崩落し地上に向けての螺旋階段を造り、ウーツ鉱石を見つけてから3日が過ぎ、どうにか螺旋階段で地上階に戻る事ができたが代償は大きかった……


 

「……う……ぅ……」


「ミナトが気が付いたのん!」


「こ……ここは……」


「ここはアガルタの街の宿屋なのん」

「ミナトは崩落した縦穴から登って来たところで倒れてしまって、5日間眠ったままだったかしら」

「ミナト何があっても落ち着いてなのん」


「……ん……?」


 俺は体を起こそうと力を入れるも上手く起き上がれなかったが、リヴィーナが背中を支えてくれて起こしてくれた。

ふと周囲を見渡すと俺の左側が違和感を感じる。

 そして視線を左側に向けると……


「あぁ……ぁ…………」

 右手で触ろうとするが、そこにはあるはずの物が無かった。

何となくは分かっていた。

螺旋階段を削り進める中、既に何日も感覚が無くなっていたのだから……


左肩を右手で掴みグッと身を縮める……


「俺は……左腕を失ってしまったのか……」

「「…………」」

「ティルは無事だったか?」


「うん……ティルがミナトを抱えて街に向って歩いていたところでボク達会えて……」

「一緒に街まで運んで街の魔導術士に回復系魔法を試してもらったりしたんだけど、既に壊死してしまっていて体に広がるからって……」


 階段を登る足音が聞こえてきた……扉が開き


「ミナト!……気が付いたんだね……うぅぅ……ゴメンね……」

 ティルが部屋に入ってきて泣き崩れてしまった。

しばらくして、どうにか泣き止んだティルに詳しく何があったのかを聞いた。


「地上階を目指してミナトは魔導ペンを握っていれば大丈夫だからって上に向って削り続けていて……3日目に水が無くなってしまって辛そうにしながらもどうにか辿り着けて、そこでミナトは倒れてしまったんだよ」

「ティルも街に着いたところで倒れてしまって、一昨日まで眠ったままだったのん」


「その……腕の事はオイラに任せて欲しいの」

 ティルが強い真剣な眼差しで俺を見つめてくる。


「父さんとも相談して、下で採れた鉱石でウーツインゴットはできたので、ミナトに合うウーツ鋼の筋電魔導義肢アーティフィシャルメイルを作ってみせるから!」

筋電魔導義肢アーティフィシャルメイル……?」

筋電魔導義肢アーティフィシャルメイルは、鍛冶師が元の腕の形態を復元して、魔導具として魔導書を付与する事で完成するのん」

「冒険者でも魔物に喰われて失った部位を補っている者がいるかしら」


「……すまない、色々起こりすぎて頭が追いつかない……少し1人にしてもらってもいいかな」

「わかったのん……」

「後で何か食べれそうな物もらってきますわ」

「オイラは一度工房に戻るね……」


 俺の腕が無くなって筋電魔導義肢アーティフィシャルメイルか……某漫画のオー○メイルみたいな感じか?

俺は戦闘はしないけど武器とか仕込まれちゃったりするのかな……

まだ左側の実感が全然沸かないんだけど触っても無いし、現実と向き合わないといけないのか……


◇◆◇◆


「師匠、ただいま戻りました。ミナトが意識を取り戻したよ!」

 ティルは宿を出て石板の敷き詰められた中央通りから脇に入った鍛冶屋小路の端、自身の家で工房に戻ってきた。


「帰ったか……ティル、俺はウーツインゴットの扱いには慣れてるが包丁以外の物を作る事に慣れてねぇ。

それでだ、俺の知り合いの筋電魔導義肢アーティフィシャルメイル伝説の親方レジェンド・マイスターの下に1週間程修行に行って来るか」

 目覚めてから父親で師匠のボブに坑道であった事や、ミナトが自分の事を庇って負傷し、それでも脱出の為に死力を尽くしてくれた事を説明していた。


筋電魔導義肢アーティフィシャルメイル伝説の親方レジェンド・マイスターって?」

「お前もよく知ってる人物だ。まぁ最近は筋電魔導義肢アーティフィシャルメイルの依頼が無くてインゴット作りばかりのようだが」

「それで……オイラにも筋電魔導義肢アーティフィシャルメイル作りが分かるようになるなら行って来たいよ」


◇◆◇◆


――中央通りの突き当り、一際大きい煙突が付いた煉瓦組み建物の鍛冶師ギルド、正面カウンターにティルの幼馴染でナーリ・ミョズヴィルが今日も受付をしていた。


「あらティルいらっしゃい。久しぶりね、大体の事は噂で聞いてるわ」

「師匠に紹介状は書いてもらったんだよ」

「ティルなら紹介状なんて無くて大丈夫だと思うけど、ボブさんは根が真っ直ぐだから筋は通したいのね。

今日も奥の1番炉の部屋に居るから行きましょうか」



「ボブ・クルレイマイヤーの紹介で来ました、ティル・クルレイマイヤーです。改めて宜しくお願いします」

 ティルは、水色のTシャツに白糸でステッチされた黒綿布ズボン、淡いベージュの革に裾に炎のような刺繍入りエプロン、革手袋と革と黒レンズのゴーグル姿で溶鉱炉に集中している、鍛冶師ギルド長たるドゥヴィール・アルドヘルの下を訪れた。


「ギルド長、ティルをお連れしたのですが」

「お前たち、少しの間任せるから見ておいてくれ」

 職人(ゲゼレ)3人に作業を任せドゥヴィールがこちらに来る。


「やぁティル。君たちがウーツ鉱石を見つけてくれたからウーツインゴットの鍛造で大忙しだ。

それで改まってどうしたんだね?」


 ティルは掻い摘んでドゥヴィールにミナトの事、筋電魔導義肢アーティフィシャルメイルの事を説明した。


「なるほどな、それで筋電魔導義肢アーティフィシャルメイルの作り方を学ばせて欲しいと言うわけか、ミナト君には今回のウーツ鉱石でギルドとしても世話になったしな」

 ドゥヴィールは腕を組みしばらく考えてから口を開いた。


筋電魔導義肢アーティフィシャルメイルは、ミスリルインゴットで骨格を作り骨格中にエーテル繊維で魔力の道を形成、ラスコヴニクの実をエセリアル溶液により腐食防止不動態化処理し関節を作る。

この骨格と関節だけでも日常生活は送れるが、冒険者など過酷な生活を強いられる場合は、チタンとミスリル、炭素繊維とエーテル繊維で炭素繊維強化形状記憶合金の人工筋肉を作り、あとは外装を取り付け完成形体となる。」


「オイラが思ってたより複雑……」

「ただ金属を打てばいいってわけじゃないからな。鍛冶師だけでなく、冒険者と魔導士にも力を借りなくては作れない」

「冒険者にも?」

「ああ。ミスリルインゴットは俺の手持ちでいくつかある。エーテル繊維は魔道具士が扱っている。

それで、ラスコヴニクの実がきっとこの街に無い。冒険者ギルドで依頼を出して採ってきてもらう事になるだろう」


「ラスコヴニクの実と言うのは、そんなに珍しい実なのですか?」

「そこまで珍しくはなく洞窟から外に出た森になっているはずだが、そのあたりも冒険者の方が詳しいだろう。

腕の関節は、肩、肘、手首に指用が15個と様々な大きさのラスコヴニクの実が最低18個程必要になる」

「結構な数が必要なのですね……でも解ってきたんだよ」

「今日は冒険者ギルドで素材集めの依頼を出し、魔導士ギルドでエーテル繊維の在庫を確認して明日また来い。こちらでも用意しておこう」

「ちなみにラスコヴニクの実の腐食防止不動態化処理は、魔導書士に書いてもらって魔道具士が付与する形だ」


 こうしてティルは鍛冶師ギルドを後に冒険者ギルドに向かう……


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