024軒:地底からの脱出計画と拠点
――坑道で床が崩落、ティルと一緒に落下してアーチェ、リヴィーナとは分断されてしまった。
俺は左手の甲の肉が少し削がれてしまったが、ティルに貰った薬草で応急処置し止血する事はできた。
俺一人なら双方向に瞬間移動できるプレートで、惑わせの森近くの崖下かオフィールの商業ギルド鑑定担当のベルガルの家の転送小屋に飛ぶことはできるだろうが、この場所に戻ってこれなくなる可能性もあるので使うのは最終手段としてだ。
まずは周囲を確認し状況分析……
落ちて来たと思われる頭上を見上げたが暗くてハッキリとは解らない、試しに魔導ペンでレーザー照射してみたところ穴がうっすらと確認でき
≫『レーザー距離計のスキル獲得』
こんな時だと言うのにスキルを獲得した……
頭の中に220mと数字が浮かび上がった。
俺がこの世界で最初に目を開けた崖で30m~40mだったから、ここはその5~7倍ぐらい深い位置だろうか
「ティル、どうやら大体220mぐらい下に落ちたみたいだ」
「220mがピンとこないけど穴がちゃんと見えないぐらいに落ちたのは分かるよ」
……新宿の東京都庁舎が243mで地上48階だったはずだから約50階、アガルタの天井より高い位置から落ちた事になる。
直径50mぐらいの吹き抜けた空間で気温は街より暖かく、周囲には自ら発光する鉱石や黒い岩は転がってるが草木は見当たらない。
俺は魔導ペンから惑わせの森の木を取り出し、紙代わりになるように薄くスライスしてみた。
そこに魔導ペンで焼き付け現在の様子を図面化していく。
この世界で魔導建築士のスキルを得て、ヘルプでTRF-CADを見た時、空想を現実にする製図システムとなっていた。
魔力による材料の高速切断や加工は何回も使用してきた。
そして、魔導書をプラグインとして追加した以外の事に今使い、改めてTRF-CADの片鱗を感じている。
「ミナトが何か凄い事はじめてる?」
俺の様子を覗き込み食い入るように見ている。
現状の平面図に周囲の様子を言葉で注釈した物から三次元パースまで木の板に描いてみせた。
そして、ティルにこの世界にトロッコ的な物が無いか尋ね、箱に車輪が付いただけの手押しトロッコやレバーを上下させて進む手漕ぎトロッコをスケッチして見せてる。
「これ何?車輪はわかるけど何に乗ってるの?」
「これは線路とかレールとか呼ばれる物で、平行に敷かれたレールの上をこの箱の付いたトロッコを走らせるんだ」
「ワクワクする見た目だね、荷物とか運ぶのに便利そう?」
どうやら少なくともドワーフ達はトロッコを知らないようだ……
「そうだよ、採掘した鉱石を箱に入れて運ぶ為に使ったりできる」
「何か見たこと無いから詳しい原理は分からないけど凄いね、オイラこれ作りたい」
「じゃあ上に戻って作って貰わないとな」
落ちてすぐは不安でとても暗い顔をしていたティルに明るさが戻ってきた。
俺は上に戻る為の階段空間として、内側に約直径52mの吹き抜け、その周囲に幅2mのレガレイラ庭園イニシエーションの井戸を思わせるような螺旋階段エリア、2m厚の壁を挟み外側にトロッコをあとで通せるよう内側曲線半径が30mで幅3m縦断勾配を8%(5度)程度のスロープで取り囲むよう構想した。
それを先程木の板に描いた三次元パースに重ねるように改修パースを描いてティルに説明する。
「いくらなんでもこれは一人二人では無理があるんじゃ……」
規模が大きいので夢のように捉えられたのだろうか……
たしかにティルには俺のスキルをほとんど見せていないので無理があるようにも思えるのだろう。
だが過去に崖で行った事やここ最近のスキルアップを考えればやれなくはないはずだ。
「じゃあまず少しだけど魔導ペンで実演してみるぞ」
俺はTRF-CADで現実の空間に改修パースを脳内投影する。
ティルには見えていないだろうが、俺には緑に光る線が空間に描かれ、それに沿って魔導ペンで螺旋階段の幅2m天高2.5mを20分程で高さ3m程分削り上げた。
「凄いね……まだ全然時間経ってないのに、2階に上がれるぐらいの高さが削れて階段になっちゃうなんて思わなかったよ」
TRF-CADの補正と言うかアシストが優秀なのか、自分でも今まで以上に機械的に造れたと感じた。
魔導ペンで削っている間は肉体的に疲れないが、魔力が抜けて行く感じはあるので休憩無しの不眠でと言うのは無理だ。
単純計算なら1時間で9m、243mあるから27時間あれば上まで行ける計算になり、1時間毎の休憩と睡眠時間を入れると3~5日間と言うところだろうか。
「こんな感じで高さ5m毎に踊り場を設けながら上に階段を造って進もうと思ってるんだ。
大まかに計算したら問題が起きなければ3~5日間で上には行けるんじゃないかな」
「オイラはミナトについて行くよ!」
「あとは当初の目的のウーツ鉱石が見つかるかだな。それと……まず休める場所を確保しようか」
俺は螺旋階段より外周のスロープの下なる所を、魔導ペンで40cm四方の立方体に切りだし幅5m 奥行3m 高さ2m の9畳(4.5坪)分を削る
「ティルは石造の住居作れるのかな?」
「大丈夫だと思うよ。手伝う?」
切りだした40cm四方の立方体を更に組積式構造しやすいように40cm x 20cm 20cmのブロックに
「今削り出した石でブロックにしてみたんだけど、これで削った部分に壁を作るの手伝ってもらえるかな」
「了解だよ、扉とか窓はどうする?」
「扉は木で60cm x2mのを作ろうと思ってるから、それがハマるように空けておいてもらって、窓はどうしよう……無くてもいいかな?」
「ところどころ1、2個ブロックを抜いて空気が通るようにするのはどう?」
「それがいいかもね、その辺はティルに任せるよ」
壁を積むのをティルに託し俺は惑わせの森の木で扉を作る。
高さ2mに対して身長が低いティルは大変そうだったが、余ってるブロックを使って上手に上まで積んでいて職人気質を感じたのだった。
部屋の中には固定の魔導書を付与して貰った大き目な革袋を膨らませて置き、外では惑わせの森の木の枝で焚き火を熾し食事の準備をはじめる。
日の光は無いが腹時計の感覚から既に夕方になっていそうだ……





