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021軒:ボブ・クルレイマイヤー

――ドワーフの街アガルタ、鍛冶師ギルドで採掘した鉱石を納品しティルの父であり伝説の親方レジェンド・マイスターのボブ・クルレイマイヤー氏に会うべく工房を目指し歩いていた。


「ティルのお父さんのボブ・クルレイマイヤーさんってどんな人なんだ?」

「オイラの父さんは……外見で言うとさっき会った鍛冶師ギルド長のドゥヴィールと身長とかは同じぐらいかな……あとは仕事中は厳しいけど、普段は酒が好きなその辺によくいる親父って感じだと思うよ?」


 石板の敷き詰められた中央通りを少し脇に入りしばらく行く……建物同士の間隔は離れているが、あちこちから金槌の叩く音や研磨の音が聞こえてくる。


「この辺は色々なところから心地よい金槌の音が聞こえてくるな」

「包丁を専門にやってるのはオイラの工房だけかもだけど、この裏通りがずっと鍛冶屋小路になってるんだよ」

「なるほどな……それでティルの工房は……」

「見えて来たよ」


……聞こうとした時、鍛冶屋小路の端の方になる場所に、ティルの父でボブ・クルレイマイヤーの庖丁鍛冶工房が見えてきた。

 鍛冶師ギルドと同じように煉瓦組みの決して大きくないは母屋と、横に同じく煉瓦組みの別棟小屋があり、煙突は無いが屋根と壁が上下に分かれ、そこから煙が少しだが出ているようだ。

 ティルはまっすぐ別棟の小屋へと向かった。


 炉にはしっかり火が焚かれ、カキーン、カキーンと金床に向って金槌を振り下ろされている。


「父さ……師匠、ただいま戻りました」


 ボブ・クルレイマイヤーはティルより少し身長が高く筋肉質、頭の毛は綺麗に剃られているが顎には立派な白金の髭を生やしている。

くすんだ赤のシャツにティルと同じ白糸でステッチされた黒綿布ズボン、茶色い革の裾に炎の刺繍が入ったエプロン、革手袋、革と黒レンズのゴーグルと言う姿である。


「おう、帰ったか……鉱石はちゃんと納品できたのか?……って、そちらさんはどなただ?」


横目でこちらを見ながらも金槌を振り下す手は止めず作業は続けられ


「こっちの3人は坑道で迷子になってたから街まで案内したんだよ。

……ついでに(?)オイラの鉱石を運ぶの手伝ってもらって、いつもより多めにギルドに納品できたよ」


「はじめまして、俺は一ノ瀬湊(いちのせみなと)、ミナト呼んで頂けると嬉しいです」

「アーチェなのん」

「リヴィーナかしら」

「おう……ボブ・クルレイマイヤーだ。ティルが世話になったようだな」

 伝説の親方レジェンド・マイスターで外見は厳つく怖そうだが話せば気さくそうだ。


「とんでもない、ティルさんに会ってなかったらアガルタに辿り着けないで屍になるところでした……」

「ワッハッハ、あの坑道は蟻の巣のように枝分かれしているからな、知らない奴はなかなか抜け出せないだろうな。それでこんな小さな庖丁鍛冶工房に何の用だ?」


作業のキリがよくなったのだろうか……金槌を振り下す手が止められた。


「実はボブ・クルレイマイヤーさんに、オフィールの街のベルガル・フィールからウーツ鋼製牛刀包丁作成依頼を受けていまして、詳細はこちらの書面を渡すように言われています」


 ミナトが封書を渡すとボブ・クルレイマイヤーは目を通し渋い顔になった……。


「作ってやりたいのは山々なんだがな……肝心のウーツインゴットが最近はめっきり手に入らなくてな……それと研磨剤のダイヤモンドパウダーの在庫も少ないんだ」

「こちらに来る前にウーツ鉱石の事はティルさんから聞いていますので、明日にでもウーツ鉱石を探しに行きたいと思っています。ダイヤモンドパウダーも大丈夫だと思います。」

「そこまでする気があるんなら……ティル、お前さんが連れて来たんだ、一緒に付いて行ってやんな」

「そう言われると思ってたよ……」


「ティル頼めるかな?」

「しょうがないから付き合うよ……その代わりに今夜おごりね!」

「と……師匠、他に何かありますか?」


「オレはこの1本打って行かなきゃならないが、お前は採掘で疲れてるだろうから先に上がってもいいぞ」

「じゃあ先に上がらせてもらってミナトの宿を探すの手伝ってくるよ」


「鉱石を見つけたらまたお世話になりますが宜しくお願いします」

「しばらくウーツインゴットを触ってないが……まぁ、お前さん達が鉱石を持って帰るのを楽しみに待ってるぞ。無理はするなよ」


◇◆◇◆


「オイラ、ウーツ鉱石をもう1年以上見つけれてないのに大丈夫なの?」

「ちょっと特別な魔導具があるから大丈夫だと思ってるんだ」


 白い聖なるドラゴン(ホーリードラゴン)の心臓の琴線が芯に使われている黒檀の魔導ペンは、プラグインを追加(インストール)したスキルが5つを越えた事によって魔導具と言うより腕の中へ収納可能な固有スキルになっている……


「それじゃあ宿屋だったね、中央通りに何軒かあるけど要望はあるかな?

 えっとさっきの酒場の二階が宿屋になっていたはずだから、まずそこを聞いてみようかと思ってるけど大丈夫かな?」


「飯が美味くて小奇麗なところがいいな」

「あの酒場は味は保障できると思うよ」


「ボクは……ミナトと一緒の部屋がいいのん……」

「アーチェちゃん、またそんな事言って!」

 アーチェはリヴィーナに抱きつかれ胸の谷間に挟まれて苦しそうにしている……

「あふっ……えぅ……離れるの……ん」


……相変わらず羨ましいなんて思ってない。

うん、思ってないよ……


「2部屋空いてるといいね……」

 ティルがちょっと引いてしまっているが……

そんな感じでじゃれ合っていると酒場が近づいてきた。


「いらっしゃいませ、4名様ですね。酒場をご利用でしたら空いてる席にどうぞ」

「酒場も利用されてもらうんだけど、オイラ以外の3人の部屋あるかな?」

「お1人ずつ一部屋でしょうか?」

「空いてれば男1人と女2人で分かれて2部屋でお願いします」

「確認しますので少々お待ち下さい」

確認してる間に酒場の方に目をやると、空いてるテーブルはあと3つで1テーブルに3人座れるようだ。


「ティル、宿の方はこちらで話してるから席を取って待っててくれるかな」

「そうだねテーブル2つキープしとくよ」


「お待たせしました。今ですと2部屋空いていました。お1人様銀貨5枚で朝食付で御座います」

「ではこれでとりあえず7日間分お願いします。残りはチップで」

そう言って金貨12枚を渡した。


「ありがとうございます。それでは部屋にご案内致します。お部屋はこちらの211号室と212号室です」

「俺が211で、アーチェとリヴィーナが212でいいかな?」

「大丈夫なのん……」

「問題ないわ、アーチェちゃんの事は任せていいわ」

「それじゃ荷物はあまりないけど置いて下のティルのとこに行こうか」


 下の酒場に行くと鍛冶師ギルドで受付のナーリがティルの横に座っていた。


「先程はお疲れさま。私もご一緒していいかしら?ティルとこうして会うの久しぶりだったから……」

「大丈夫なのん」

「私も別に問題ないかしら」

「ええ、俺は別に構いませんよ。鍛冶師ギルドや街の事を聞ければ助かりますし」


「いらっしゃいませ、お飲物はどうしましょうか?」

話を切れ間を見計らって給仕担当の女性がオーダーを聞きに来てくれた。


「俺はワインの小樽」

「ボクは花の蜜と葡萄(ネクタール)のジュースがあればそれでお願いするのん」

「私はミナトと同じワインの小樽にしようかしら」

「オイラとナーリはいつものウォッカのレッド・エール割りで」


「かしこ参りました。少々お待ちください。」


食べ物は何が良いか悩んでいると、飲み物が運ばれてきたので先に乾杯する事にした。

「明日、ウーツ鉱石が無事に見つかる事を祈って乾杯!(ア・ラ・ボトル)

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