019軒:ドワーフの住む街アガルタ
――俺は商業ギルドの鑑定士であるベルガル・フィールから、ドワーフの街アガルタにいる包丁職人のボブ・クルレイマイヤーが作る、ウーツ鋼製136層ダマスカス縞模様を浮かべた320mm牛刀包丁作成依頼を受けた。
ドワーフの街アガルタ、大規模な地下空間はジオフロントとも呼ばれ30階建てのビルも入ってしまいそうに天井が高い。
中央通りには石と金属の建物に商店、宿、酒場の他に冒険者ギルド、商業ギルドも立ち並び、最も奥の方に一際大きい煙突が付いた建物が鍛冶師ギルドなのだろう。
鉱物と鍛冶の街と聞いただけあって何か所もから煙が上がっている。
少し空気の心配をしてしまったが、リヴィーナが言うには広い空間と『清潔なる空気』の魔導具で大丈夫らしい。
そんなアガルタの街に今着いた3人は……
いつの間にか相棒になった紅眼、赤髪の外ハネボブで赤い魔導士コート、白いレースの付いた赤ミニスカートに黒ロングブーツで絶対領域完備でボクっ子魔導書士なアーチェ・ブロン。
護衛は現在は冒険者で、翡翠色の瞳、白藍のストレートロングな髪に、白い布と鹿革のコートの上から隠しきれない巨乳エルフでお姉様なリヴィーナ・カレード。
そして、俺は一ノ瀬湊ことミナト、黒髪前下がりショートボブ、濃紺眼で黒革パンツに厚手の白い綿シャツ、漂白されたマントと地味な黒白モノトーンでまとめられている。
◇◆◇◆
「何だかんだオフィールの街から結構掛かったな……」
「商業ギルドでアガルタまでの地図を貰って山を西に下り、まさか洞窟があんなに入り組んでいるとは思わなかったのん……」
「アーチェが先頭になって走り出すから道が解らなくなってしまったのかしら」
遠足気分でアーチェのテンションが上がり、洞窟内で迷子になるとは思ってもみなかった。
アーチェの迷子スキル恐るべしである……
「途中でティルに出会えなかったら、アガルタに辿り着けなかったかもな」
「オイラは採掘した鉱石を鍛冶師ギルドに届けなきゃだし……」
洞窟を迷子になっていて、金髪に赤と黒のバンダナ巻き褐色肌が映え、アーチェより背は低いが筋肉質で藍目のティル・クルレイマイヤーと出会い、アガルタの街まで連れてきてもらったのだ。
彼女は、強調され過ぎない程度に胸のハリが判る黒タンクトップ、白糸でステッチされた黒綿布ズボンにつるはしを担いで洞窟内を採掘していたところだった。
「オイラの方こそ採掘した鉱石持ってもらって助かったよ」
「ティルは魔法の倉庫を使わないのか?」
「オイラ達ドワーフは魔力がまったく無いので魔導書関係使えないんだよ……」
「そうだったのか、悪いこと聞いたかな」
「まぁオイラだけじゃないからさ、その分筋力に関しては負けないよ!」
街に向いながら聞いた話によると、インゴットの作成は全て鍛冶師ギルドで行われ、出来上がったインゴットからの作製は各工房に持ち帰ってからになるそうだ。
ちなみにウーツインゴットは、鉄鉱石とウーツ鉱石に木炭や生の木の葉をるつぼに入れ、炉で溶かした後にるつぼを割るとウーツインゴットになるそうなのだが、詳しい配合はギルド内の資格で階級が親方以上必要だそうだ。
階級は大きく分けると親方、職人、見習いの3つ。
細かく分けると7つあるそうで
●伝説の親方
●上級親方
●親方
○上級職人
○職人
△上級見習い
△見習い
となっているらしい。
「オイラの父さんも伝説の親方なんだけどね、今はウーツ鉱石がなかなか採れないからウーツインゴットが作れなくて困ってるんだよ」
「ティルの父さんって凄い人なんだな」
「伝説の親方なんてカッコイイのん」
「そう言えばティルってティル・クルレイマイヤーって言ってたけど、ボブ・クルレイマイヤーとは親戚とかかな?」
「ん?……ボブ・クルレイマイヤーはオイラの父さんだよ……」
……!
…………俺って出会いの運はあるらしい!?
「実はな……」
俺は商業ギルド鑑定士のベルガルからの依頼をティルに話した。
「とりあえず父さんに話してみてよ……ただインゴットが無いから難しいかも……」
そんな話をしていたらドワーフの街アガルタが見えてきた。
◇◆◇◆
アガルタでも門の前で警備兵が検問しており、順番に並んでいるがオフィールに比べれば短い列だ。
他に並んでいるドワーフは大きな袋や1メートル四方の木箱に鉱石らしい物を入れて担いでいる。
それに比べて、ティルはつるはしを担いではいるが、俺達は魔導書と手荷物程度の軽装なので、ティルの手伝いにしても渡航者にしても少し怪しい。
「お前さん達は随分と軽装じゃのぉ」
並んでいたドワーフに声を掛けられた……
「魔導書に荷物は入ってますので」
「ワシ等は魔力が無いから使えないがそんなに便利なのかね」
「そちらで持たれてる木箱が沢山入りますよ」
「そりゃ凄いね」
そんな世間話をしつつ検問の順番が来た。
「今日は随分と軽装じゃな、全然採れなかったんか?」
……警備兵にやはり聞かれる。
「オイラの採掘した鉱石は、こっちのミナトが持ってくれてるから」
警備兵とティルは顔見知りなようで
「俺は一ノ瀬湊、後ろの二人は俺の仲間です」
「魔導書士のアーチェ・ブロンなのん」
「冒険者で護衛のリヴィーナ・カレードかしら」
名乗りながら俺の魔法の倉庫からティルは採掘した鉱石を出して見せる。
俺らの他に並んで居るドワーフは1人で1メートル四方の木箱で1、2個程度だが、こちらは魔法の倉庫なのでティム1人でも木箱5箱分になった。
「なかなか大量だな……」
魔法の倉庫を使った事がない警備兵は少し驚いたようだが、俺の魔導ペンには崖で採った岩がもっととてつもなく収納されているが、それは今はまだ知らなくてもよい事だ
「よし入ってよいぞ、何か揉め事をおこせば拘束して追放のあるから気を付けるように」
結構すんなりとアガルタに入る事ができ、一行は鉱石納品の為に中央通りを通って鍛冶師ギルドへと向かう。
ティル・クルレイマイヤー
21歳 / 身長146cm / 体重58kg
ドワーフ / 包丁職人 上級見習い
一人称は「オイラ」
ボブ・クルレイマイヤーの娘
褐色肌、身長はかなり低い、筋肉質、藍目、金髪に赤と黒のバンダナ巻き / 胸はアーチェよりは小さいがある
黒のタンクトップ、白糸でステッチされた黒綿布ズボン、茶色い革に裾に炎のような刺繍入りのエプロン、革手袋、革と黒レンズのゴーグル
ボブ・クルレイマイヤー
54歳 / 身長154cm / 体重69kg
ドワーフ / 包丁職人 伝説の親方
褐色肌、身長は低い、筋肉質、藍目、ハゲ、白金の髭
くすんだ赤のシャツ(胸板のせいでボタンが閉まらない)、綿布のような黒いズボン、茶色い革に裾に炎のような刺繍入りのエプロン、革手袋、革と黒レンズのゴーグル