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018軒:商業ギルドのベルガルさんからの依頼

――崖の下に掘った洞窟で一夜が明けた。

 昨夜はリヴィーナから故郷の話や俺の知らない街の事が聞けて、個人的にはドワーフが住むと言うアガルタと言う街が気になった。


「リヴィーナは警戒してくれていたのか? 悪いなありがとう」

「まぁそう言う契約ですから問題無いわ」

革袋に寄りかかり横になってはいたようだが、リヴィーナは警戒してくれていたようだ……


「う……うん……おはようなのん」

 俺を枕代わりに寝ていたアーチェも起きてきた。

そして、ギュッと抱き着いてきて腹のあたりにふわふわした柔らかい物が……

……気持ちがよい……やはりおっぱいは良いものだ。


 しみじみその感触を味わいながら、頭を撫でてやるとアーチェは嬉しそうにしていた。

……リヴィーナの妨害なく朝のお約束を終えたな


「朝ごはんはトマトそのままぐらいでいいかな?」

「ボクはそれで大丈夫なのん」

「私も大丈夫かしら」

「手抜きですまないな」

魔法の倉庫(マジック・ストレージ)からトマトを取り出し、三人で食べてオフィールの街へと帰る事にする。


「帰り道、街道じゃなく惑わせの森を少し通っても大丈夫かな?」

「ボクは迷子になるから聞かないでなのん……」

「私は惑わせの森も慣れているから大丈夫かしら、でもなぜ態々森の中を通るのかしら?」

「ちょっとついでだから木を切って木材用に確保しておこうかと思ってさ」

「なるほど……了解よ」


 掘った洞窟には『双方向に瞬間移動できるプレート』のプレート置き、本当は扉を設置して鍵でも掛けておきたいが無いので、魔導ペンから切り出した岩塊を出し塞いでおいた。

 これでまた来たい時に来れるようになる。

だが、双方向に移動できるようになるのは便利でも、移動箇所が増えるとプレートの枚数も増えて解りにくくなりそうな……

とりあえず宿に戻ったらプレートにオフィール崖とでも書いておこう。


 崖を上がり、魔導ペンは木を切るのに使うのでアーチェに魔物避けアヴォイド・モンスターを使ってもらい、リヴィーナにも魔物を警戒してもらう。

 崖の階段を少し北に進んだ街道からは少し南側に入ったあたり、惑わせの森の木はブラックウォルナットのように硬く品がよい感じで高さ20メートル程の木が多いが、東に向かって魔導ペンのレーザーでサクサク切り、倒れる前に魔導ペンに収納。

 アーチェとリヴィーナは薪になりそうな枝を集めてくれているようだ、ついて来ている事を確認しなかなかの高回転で道が出来て行って少し楽しい……

……俺は結構単純作業が好きなようだ。

止める人が居なかったら惑わせの森を更地にしたい気分であるが、流石にそこまでやっては環境破壊過ぎるので自重しよう……

魔力が増えてきて魔導ペンを使える時間が延びたが、1時間程で休憩を摂る事にした。


「ミナトのそれ凄いのん」

「崖の岩を切ってるので解ってはいても、木を切りながらなのに普通に歩いてるのと変わらないとかどうなのかしらね……」

「まぁ何事も無いんだしいいじゃないか、さぁ少し休憩したし街を目指そう!」


 そう言って再びオフィールの街を目指し切り進め、1時間程すると少し遠目にオフィール内郭の塔が見えた。


「そろそろ街道に出て街に入ろうか」

「ボクお腹空いて来たのん……」

「街に着いたら昼食にしましょうね」

「ああ、新たに金剛石も掘れたし美味しい物食べような」


 木の方も宮殿とまでは行かないが、かなり大きな建物が建てられるぐらいの量を得られただろう。

勝手に惑わせの森の木を切って良かったのかは分からないが……


◇◆◇◆


――俺達は野営し外郭壁門前で警備兵の検問を受け、1日ぶりにオフィールの街へと帰ってきた。

太陽はちょうど中天になろうと言う時間帯、商業地区は活気に満ち人々が行き来している。


 宿の戸を開けると、昼時と言う事もあって食堂には多数の客が居たが、テーブルが一つ空いていたので3人で腰かける。

いつもの給仕担当の女性がやってきた。


「何か食べますかぁ?今日の日替わりランチはロールキャベツとバレです。」


 ブラックバイソンの骨を炊いた乳白色の濃厚スープに、トマトなどを入れて塩胡椒で味を調えたスープはストウブ的な感じだろうか、そのスープでじっくり煮込んだロールキャベツは実に奥深い味になっている。

全粒の小麦粉を使いパンケーキを薄く平たく焼いたバレは、そのまま食べても千切ってスープに浸すのもなかなかに美味しい。


「とっても美味しいのん♪」

「疲れた体に染み渡るかしら」

「朝飯がトマトだけだったのもあってか余計に美味しく感じるな」

 3人で生き返ったような幸せな顔になりポヤ~ンッとしてしまったが、こう言う和やかな時間は実に好きな時間だ


「この後は部屋に帰ってプレートを回収してから、商業ギルドに行こうと思うけどどうかな?」

「ボクは特に問題ないのん」

「私は一度自分の家に寄らせてもらって、部屋の片づけや旅の準備をしたいと思ってるのだけどダメかしら?」

「じゃあリヴィーナは一度別行動で、商業ギルドかこの宿で再び合流するって事でいいかな」


「了解かしら……また後でね」

……リヴィーナは白藍のストレートで長い髪をなびかせ、アーチェに抱き着くと胸の谷間に顔を挟んでギューッとしている。

アーチェはモガモガと苦しそうだが……俺としては実に羨ましい。


◇◆◇◆


――宿を後にし内郭の門を抜け石畳を少し歩いたところでリヴィーナと別れ、ミナトとアーチェは商業ギルドに向かう。


「いらっしゃいませ、商業ギルドへようこそ。」

「これはこれはイチノセ・ミナト様にアーチェ・ブロン様、本日はどう言ったご用件でしょうか?」

 入口そばに立っていたコンシェルジュの女性が声を掛けてくれた。

前回が大口だったので名前も憶えて貰えたようだ。


「今日は前回より小振りですが、また買い取りをお願いできればと思っています。」

「承りました。ただいま確認して参りますので少々お待ち下さい」


 コンシェルジュの女性は2階のギルドマスターの部屋に消え少しして戻ってきた。

「生憎ギルドマスターが不在でして、代わりに鑑定担当のベルガル様が対応されるそうです。

2階のお部屋まで宜しいでしょうか?」


 正面ホール奥にある階段を上がり、右手に曲がってギルドマスターの部屋へと案内された。

「ようこそお越し下さいました。まずはそちらにお掛け下さい。」


前回と同じソファに案内され座ると、やはりコンシェルジュの女性が紅茶を持ってきてくれた。


「本日も金剛石(ダイヤモンドルース)とお聞きしましたが……」

「はい、前回より小振りなのですが」


 そう言って魔法の倉庫(マジック・ストレージ)から100カラット(20g)程の金剛石(ダイヤモンドルース)を取り出しベルガルに渡す。


金剛石(ダイヤモンドルース)拝見致します。」

「拝見させて頂きました。こちらの金剛石(ダイヤモンドルース)(カラー)はファンシーインテンスピンク、透明度(クラリティ)包含する物(インクルージョン)がほぼ何も無く、重さ(カラット)は100カラット(20g)、研磨(カット)はエメラルドカットでなかなか良いですね。」


「前回は無色透明でしたが、今回は上質で濃いピンクにエメラルドカットが実に素晴らしい……

大きさは小振りでも明らかにレア度はこちらが上ですね」


魔導ペンの扱いに慣れてきて研磨(カット)が褒められたのは正直に嬉しい。


「……で値段はどのくらいになるでしょうか?」

「前回はたしか1カラット=金貨45枚でしたが、50枚で計算させて頂いて、100カラットですので金貨5000枚ではいかがでしょうか?」


「それはまた……凄い金額に……」

予想以上の金額に自分でも驚いてしまった。

横でアーチェも固まっている。


「そちらの金剛石(ダイヤモンドルース)は金貨5000枚でお願いします。」

「商談成立ありがとうございます。金貨5000枚なのですが、白金貨50枚でのお支払いでも大丈夫でしょうか?」

「今回は全て金貨でお願いしたいと思っているのですが……」

「はい大丈夫です。大変良い商品をありがとうございます。」


ベルガルはコンシェルジュの女性に目で合図を送ると、テーブルの上に金貨の入った袋が50並べられた。

「1袋に金貨100枚が入っておりますのでご確認ください」


 俺は確認して頷き魔法の倉庫(マジック・ストレージ)にしまって行く。

やはり魔法の倉庫(マジック・ストレージ)は便利だ。


金剛石(ダイヤモンドルース)の商談はこれで終わりとなりますが、一つミナト様にお伺いしても大丈夫ですかな?」

「はい、なんでしょうか?」

「先日、冒険者ギルドでリヴィーナさんを護衛としてパーティに加えられたと聞いたのですが……」

「パーティと言うか護衛依頼なのですけど……」

「なるほど、それではミナト様はもしや旅立たれるおつもりで?」

「はい……近いうちに旅立とうとは思っています……まだ行き先がハッキリと決まってはいないですが」

「そうですか……それではお願いと言いますか、依頼があるのですが……」

「俺が可能な事であれば受けれますが、冒険者ギルドとかに依頼すればよいのでは?」

「そうですね、ただとても個人的な事だったので見知った方に頼めればと思った次第です」


「とりあえず用件を聞きましょうか」

「このオフィールある山を西に下り、しばらく行った途中にある洞窟から進んで行くとドワーフの住む街に行けるのですが、そちらで一振りの包丁をお願いしたいと思いまして」


……おぉドワーフ!?


「それはアガルタと言う街ですか?」

「そうです、アガルタにいる包丁職人(ナイフビルダー)のボブ・クルレイマイヤーが作る、ウーツ鋼を使い鍛造時に独特な136層のダマスカス縞模様を浮かべた320mm牛刀包丁をどうにか……」


……リヴィーナから聞いた街の一つに元々興味はあったし良い機会だろうか

しかし、このベルガルさん本気過ぎる!?


「そこまで包丁職人(ナイフビルダー)のボブ・クルレイマイヤーと言う方は凄いのですか?」

「それはもう伝説とも言えるぐらいに素晴らしいです」

「俺も個人的に興味が沸いてきました」


「それでは!?」

「とりあえずドワーフの住む街アガルタには行きたいと思います。

その……ちゃんとオーダーを聞いて貰えるかは分かりませんが」

「ありがとうございます。……そうだ、この『双方向に瞬間移動できるプレート』の1枚をお持ち下さい。

1枚は私の家の転送小屋に置いておきますので、商業ギルドまで近くなると思います。」


 こうして俺はベルガルさんから、アガルタと言う街にいる包丁職人(ナイフビルダー)のボブ・クルレイマイヤーに会いに行く事になったのだ。

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