016軒:金剛石再び
――崖の下、左手に力が強くなるグローブ、右手に素材を収納可能な魔導ペンを持ち崖に構える。
「じゃあはじめてみるよ」
立方体をイメージしてから魔導ペンに意識を預ける。
崖の岩肌に向けてみると腕が勝手に動き出す。
細いレーザーのような熱線で60cm四方の立方体を切りだして、ブロックになった岩塊は魔導ペンに収納。
魔力が上がって来た事もあり30分程夢中になって階段から少し離れた部分を幅3m、高さ1.8mで奥に掘り進めて行った。
≫『周囲に微弱ながら鉱物の反応を感知。金剛石が含まれた部分がありそうです。』
久しぶりに当り判定がキタ!
幅を広げ更に岩塊を採取していくと3個程特に強い反応を示している。
ここで優しく削る作業をするか悩み、とりあえず魔導ペンに収納し2人の所に戻った……
「ミナトがドンドン掘って奥に行っちゃうから何も言えなくなっちゃったのん」
「まさかあんなに早く掘れるとは思っていなかったわ」
「それに掘った岩どこにしまってるのかしらね……」
「1時間ぐらい休憩無しで掘ってたのん」
アーチェとリヴィーナは色々言いたい事が溜っていたようだ
「ゴメン、ゴメンつい夢中になっちゃって」
「リヴィーナは知らないかもしれないが、アーチェと商業ギルドに売った金剛石はここで偶然採れたんだよね」
「えっ……金剛石って何の事かしら?」
「ミナトは商業ギルドに大きな金剛石を売ってお金持ちになったのん」
「それで、さっき偶然金剛石が入ってそうな塊が一つでたんだ」
ミナトは60cm四方の立方体の岩塊を1つ出してみせた。
(本当は全部で3つの塊が反応してるが、これはその中で反応が一番弱いのだ)
「それで、これはまだ岩塊だから削ってみようと思う」
「噂の金剛石が入ってるかしら……」
「楽しみなのん」
頑張って削りはじめた……
前回よりブロックのサイズが大きい為になかなかに大変だ……
二時間ほど経ってから徐々に金剛石が姿を見せだした。
「光ってる石なのん!」
「まさか本当に出てくるなんて……」
さらに金剛石を削って行くと100カラット(20g)程だろうか?
今までの2つよりは小さいが、それでもなかなかのサイズの物が出てきた。
「商業ギルドに売ったのよりは小さいけど大きいのん」
「これは私の居たアスフェリアの森で、長老家に代々伝わっていた金剛石にも匹敵しそうかしら……」
「この前商業ギルドで言われた金額が、通常は1カラットで金貨30枚、2カラットで金貨65枚程度って言ってたから、30枚で計算して金貨3000枚か……」
「「おおぅ……」」
「またお金持ちなのん」
リヴィーナは固まっている。
「二人ともココの事は内緒な」
「了解なのん……それも商業ギルドに売るのん?」
「そうだな、これも売っちゃおうか、街から旅立つのにこのくらいならあった方がいいだろう」
「さて、そろそろ街に戻ろうか」
「今から歩いて帰ると結構遅くなっちゃうのん」
「そこは試してみたい物があるからさ!……その前に体を清潔の魔導書で綺麗にしよう」
そう言って清潔の魔導書を使ってみたら、魔力調整が強すぎたのか茶色のマントが漂白されてしまった……!?
「ミナトのマントが白くなっちゃったのん」
「それはそれで良いんじゃないかしら」
「疲れてて魔力操作を失敗してしまったらしい……」
「そんな時もあるのん」
「別に困る物でもないし教訓になるんじゃないかしら」
二人とも他人事だと思って……
「じゃあ気を取り直して、これからが本番です。」
そう言って『双方向に瞬間移動できるプレート』のプレート1枚を取り出して見せた。
「これももう一枚は宿屋の部屋にあります。」
「「おお!」」
「これを使って今から戻ろうと思います。」
先程堀広げた洞窟にプレートを置きミナトから順番に乗って行ってみる。
「……本当に戻れた!」
ミナトは部屋に帰還したのだ。
「これって便利だなぁ」
……そんな事を思いながらしばらく待つも二人が一向に出てこない
「もしかして……」
ミナトは部屋のプレートに乗り洞窟へ
そこには茫然とした表情の二人が座って下を向いている。
「これボク達が乗っても何も反応しなかったのん」
「置いて行かれてしまいましたわ」
どうやら購入し1枚を設置した段階で本人にのみ帰属してしまったのだろう。
「すまない、こうなるとは思ってなくて……
どうやらこのプレートは俺専用になってしまったようだ」
瞬間移動で揃って帰る事ができなくなってしまったので、今夜はこの洞窟で野営だ……