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高貴なる傍流

 みなさん、舎人一号です。

 今までたくさんのぼっちゃんの恋のお話を舎人たちで語ってきましたけど、最後は恋のお話ではなく、友情のお話にしようかと思います。

 お優しいぼっちゃんは、女性ばかりか男性にも好かれる、真のイイ男でした。ですから、最後はそんなエピソードを一つ、と考えたのです。

 

 そうそう、この日誌の初めの方に、陸奥で出会った女たちのお話が載ってますよね。なぜぼっちゃんが陸奥へ旅に出なければならなかったかというと、やんちゃをしすぎたために、京に居づらくなってしまったというのが本当のところでした。

 特に、藤原の高子様(たかいこさま)との駆け落ち事件。あれは、いけませんでしたね。

 そんな時も、ぼっちゃんと一緒に東下りをしてくださるようなご友人もいました。酒を酌み交わしお互いの境遇に涙する、歌を詠み合いお互いの素晴らしさを認め合う……そんなお仲間が、ぼっちゃんの周囲にはいつもいらっしゃったのです。


 あ、ここで一つ皆さんにお伝えしておきたいことがあります。


 平安時代のお話を読むと、男が泣く場面が多く出てくると思うんですけど、これ、女々しいわけじゃないんですよ。

 この時代は「泣く」という行為は「男らしい」こととされていたのですからね。友の辛かった昔話を聞き及び「そうであったか……」と涙する。美しい楽の音に涙する。そういうことは、男らしいことだったんです。でも、このお話を読むのが未来のみなさんなので、僕なんか、なるべく泣く場面は削って書いちゃいましたけど。

 だって……ほら、ぼっちゃんのイメージもあるじゃないですか。


 さて、ではぼっちゃんとそのご友人とのお話を書き残すにあたって、ぼっちゃんにとっての親しくお付き合いの合った御方は誰だったのであろうか? と、考えました。

 多分、惟喬親王(これたかのみこ)ではなかったのかな、と思います。

 惟喬親王(これたかのみこ)は伊勢の斎宮恬子内親王(やすこないしんのう)のお兄様です。腹違いではなく、正真正銘同じお母様から生まれた兄と妹になります。それもあって、ぼっちゃんが狩の使になったときには「くれぐれも丁寧にもてなすように」と、お二人のお母様が文を送られたようなのですが、それを斎宮はどう取り違えたのか、あのようなことに!……いえ、まあ、あの話はもういいでしょう。


 惟喬親王は文徳天皇の第一皇子でいらっしゃいました。普通に考えれば、皇位継承権第一位です。ところが皇太子となられたのは、藤原北家の長、藤原良房のお子でいらっしゃる明子(あきらけいこ)様がお生みになった第四王子の惟仁親王(これひとしんのう)でした。このことで、惟喬親王様は皇位継承の機会を失ってしまいます。

 血筋から見れば間違いなく、皇位をお次になるべきお人であったにも関わらず、藤原によってはじき出されてしまった不遇の皇子。

 ぼっちゃんと、境遇がかぶります。

 ちなみに、惟喬親王をさしおいて皇太子となられた惟仁親王は、後に藤原高子様が入内なされた、あの清和天皇となられるわけですね。なんという因縁!

 ってまあ、狭い貴族の社会での出来事ですから、どこかしらかでつながっているのは致し方ないことですけれど。


 ではお話を戻しましょう。

 あともうお一方、ぼっちゃんと親しく交流されていたのが、紀有常様(きのありつねさま)でしょう。

 有恒様は惟喬親王の叔父にあたり、かつ、ぼっちゃんの奥方の父上に当たる方です。

 そうなんですよ。ぼっちゃん、ちゃんと奥方がいらっしゃるのです。

 もし自分の娘婿がぼっちゃんのようなプレーボーイだったら……。皆さんの時代ならとっても、仲良くなんてしてられないと思うでしょうけど、この時代は、それが許されてしまう時代でした。

 まあ、なんといいますか、ぼっちゃんのお友達ってば、反主流派が揃ってしまっているわけですね。しかも血筋は皆さんもう、文句のつけようのない高貴な方たち。

 こんな皆さん方が、狩りだの花見だのにかこつけて酒を飲んでは、どんちゃん騒ぎをしていたわけです。


 次のお話は、惟喬(これたか)親王(みこ)が出家なされる少し前、ぼっちゃんが右馬頭(うまのかみ)だった頃のお話です。



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