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 森に着く頃にはユウヤは立ち上がれないくらい疲労していた。

 たかが2時間歩いただけだが、普段から体を動かしていないユウヤにとっては重労働である。


 対してシエラはケロッとしている。

 全く疲れを見せていない。

 途中からはユウヤの手を引いて歩いていたほどだ。



「旦那様しっかりしてください。大変なのはこれからですよ」



 なんでシエラはこんなに元気なんだ?

 これがステータスの差なのか……



「シエラ、待ってくれ少し休んでから森に入ろう」


「仕方ないですね。でも時間は余り取れませんよ」



 今日のシエラはどういうわけか体が軽い、普段であればもっと疲れているはずだが、今日はいくらでも歩ける気がした。


 原因は分からないが、きっとユウヤと一緒で楽しいからだとシエラは一人で納得する。




「では、そろそろ行きましょうか?」


「もう行くのか?」


「本当に陽が暮れますよ」


「仕方ないな……」



 ここに来るまでの間、ユウヤはシエラから夜の危険性を嫌というほど教えられていた。

 渋々重い体を起こすと、シエラが早くとユウヤの手を引っ張った。


 普段から冒険者が頻繁に来るのだろう、森の中は歩きやすいように踏み固められ、幾つもの道が出来ていた。


 ユウヤは剣を構えながら慎重に森の中を進んでいく。シエラはそのすぐ後ろを警戒しながら歩いていた。



「直ぐにゴブリンが見つかるわけじゃないんだな」


「ここは冒険者が頻繁に来ますから、ゴブリンも警戒して近づかないのかもしれませんね」


「道から逸れたら駄目なのか?」


「腕の立つ冒険者ならまだしも、私たちは初心者ですよ。

 道から逸れると危険な魔物と遭遇しやすいんです」


「なら、地道に探すか……」



 暫く道なりに進むと草木が擦り切れる音が聞こえた。

 慎重に覗き込むと緑色の肌をした小柄な魔物が木の実を拾い集めている。


 シエラを見ると頷いている。

 二人は目配せするとゴブリンの真後ろに静かに回り込む。


 目で合図をするとユウヤはゴブリンの背後から一気に剣を振り下ろした。

 ユウヤが怪我をした時のために、シエラは回復魔法の準備をしている。



「ギャ!」



 ゴブリンは短い悲鳴を上げると、その場に崩れ落ち動かなくなった。

 どうやら絶命したらしい。

 後ろを振り返ればシエラが嬉しそうにしている。


「やりましたね」


「ああ、思ったより簡単だったな」


「この調子で次のゴブリンを探しましょう」



 そう言った瞬間、シエラの後ろにある茂みから二匹のゴブリンが飛び出してきた。

 ゴブリンは手に持つ木の棒でシエラに襲いかかる。



「シエラ後ろだ!」



 必死で叫ぶがもう間に合わない、後ろを振り返ったシエラの頭部に二つの木の棒が叩き込まれた。



「キャァァーー」



「シエラ!」



 シエラは頭を押さえしゃがみこむ……だが。



「あれ?痛くない」



 シエラは不思議そうに自分の頭を摩っていた。

 そして大丈夫と気付くと、持っている杖を近くのゴブリンに振り落とした。


 次の瞬間「ゴンッ」という鈍い音と共にゴブリンの体が爆散する。



「えぇぇ!」



 杖を振り下ろしたシエラ本人が一番驚いていた。

 何が起こったのか理解できずに目を丸くしている。

 目の前の光景にユウヤも呆然としていた。



 うそだろ……

 いや、シエラの平均ステータスは俺の4倍以上だ。

 俺が一撃で倒せたんだ、シエラが倒せるのは当たり前じゃないか。

 何か俺が前衛をやる意味がない気がするな。 



 もう一匹のゴブリンは一目散に逃げ出していた。



「シエラ、大丈夫か?」


「はい、全然平気です」



 シエラは何でもないと頭の汚れを手で払っている。



「やっぱりシエラは強いんだな。俺よりステータスも高いし、ほんと頼りになるよ」


「えっ?そ、そうですか?」


「俺がいなくてもシエラだけで依頼は終わるんじゃないか?」


「もう依頼は終わりですよ。

 Gランクの中でも簡単な依頼を選びましたので、ゴブリン討伐は二匹で終わりです」


「そうなのか?そういえばどうやって討伐したことを証明するんだ?」


「魔物の体の一部を持って行くんですよ。ゴブリンの場合は右の手首から下の部分ですね」



 ユウヤはゴブリンの右手首を切り落とすと袋に仕舞いこんだ。

 幸い爆散したゴブリンの右手は無事で、これで依頼は完了したことになる。



「よし帰るか。これなら明るいうちに街に戻ることができる」


「そうですね。早く帰りましょう」



 二人は来た道を戻り街へと急いだ。



 冒険者ギルドに着いた時には、まだ陽も高く冒険者の数も少なかった。

 カウンターで討伐証明の入った袋を差し出し報酬を貰うと直ぐに宿へと戻る。


 部屋に戻るとユウヤは装備を外して服を脱ぎ捨てた。

 歩き通しでもう動けないと、そのままベッドに倒れ込む。

 よほど疲れていたのだろう、暫くすると静かに寝息を立てて寝てしまった。


 そんな光景をシエラは微笑ましく見ている。



 まったく私の旦那様は仕方ないですね。

 それにしても森での出来事はなんだったのかしら?

 まさかゴブリンがバラバラになって吹き飛ぶなんて……



 シエラは自分のステータスを確かめるため認識票に魔力を込めた。

 すると……




 ランクG

 種族 人間

 名前 シエラ・フォーゲル・シュタイン

 年齢 16歳


 Lv  2

 HP 256

 MP 275

 攻撃 129

 防御 149

 魔力 172

 抗魔 185

 敏捷 147

 耐性 291


 魔法 治癒魔法




 ステータスが大幅に上がってる?

 どうして、レベルは変わっていないのに……



 確かにレベルが上がらなくてもステータスは上がる。

 たが、それは微々たるものだ。

 稽古を積めばそれなりに上がるがそれでも時間はかかる。

 昨日の今日で3倍のステータスは有り得ない事だ。


 シエラは訳が分からず小首を傾げるのであった。



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