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 もう昼過ぎか、そういえば腹が減ったな。



「シエラ、宿で昼飯は出るのか?」


「出ませんよ。朝食と夕食だけです」


「もし金に余裕が有るなら、どこかで軽く食事がしたいんだが……」


「では屋台で何か買いますか?それにユウヤさんの装備も買わないといけませんし」


「俺の装備?」


「丸腰で依頼を受けるつもりですか?死にますよ」


「マジか、そんなシビアな世界なのか……」


「繁華街には屋台も武器屋もあります。さぁ、行きますよ」



 シエラに引っ張られ繁華街にくると、そこは人で溢れ返っていた。

 通りは多くの人が行き交い、店の軒先では商品を手に取り悩んでいる人が大勢いる。



「凄い賑わいだな」


「王都ですからこれくらい当たり前ですよ」



 いい匂いがするな……



 匂いの元に視線を向けると屋台からモクモクと煙が上がっている。

 魅惑的な香りに思わずフラフラと吸い寄せられた。


 屋台では串に刺された肉が焼かれ、肉から垂れた脂が蒸発して、なんとも言えない美味しそうな匂いを漂わせていた。

 ユウヤが屋台でじっと肉を見ているとシエラが後ろから覗き込む。


「ユウヤさん。もう、急にどうしたんですか?」


「いや、余りに美味しそうだから。昼飯はこれにしないか?」


「仕方ないですね。おじさん串肉3本ください」


「あいよ、嬢ちゃん彼氏とデートかい。いや旦那さんかな?」


「えっ!そう見えます?」


「とってもお似合いだよ」



 シエラは恥ずかしそうにモジモジし始めた。



「そ、そうですかぁ。おじさんやっぱり串肉5本ください」


「毎度有り銅貨1枚だよ」



 シエラは嬉しそうに銅貨をおっちゃんに渡している。

 俺は串肉を受け取ると勢いよく頬張った。

 溶けた脂の旨味が口にいっぱいに広がっていく。

 噛むごとに肉汁が溢れ出た。



「美味い。なんだこれ、こんな美味い肉は初めてだ。塩加減も絶妙で最高じゃないか」



 それを聞いた屋台のおっちゃんは、ニカッと笑い自慢げに胸を張った。



「だろ?俺のところの肉は格別にいいのを仕入れてるからな」


「おっちゃん顔は悪いけど、いい腕してるな」


「顔は余計だよ。商売のじゃだ。早くどっかいけ」


「分かったよ。気が向いたらまた買いに来てやるよ」



 そう言うとシエラを引き連れながら串肉を食べ歩きした。

 シエラも満足そうに串肉を頬張っている。



「ほんと、これすごく美味しい。買ってよかったです」


「これは当たりだったな。見た目よりも量も多いし十分腹一杯になれる」



 そう言って3本目の串肉を頬張った。



「確かに見た目より量が多いですね。私はもう食べられません」



 シエラは食べかけの串肉を手に持って苦笑いをしている。



「なら残しておいてくれ。俺はまだ余裕で入るから俺が食うよ」


「え、でも、私が口をつけた串肉ですよ」


「何か問題あるのか?」


「そうじゃないですけど……」



 俺は3本目を食べ終わると、シエラの持つ串肉に直接齧り付いた。



「ひぇ!」



 シエラは短い悲鳴を上げると凍りついたように立ち止まる。



「どうした?もしかしてやっぱり食べたかったのか?

 まだ少しだけなら残っているぞ」



 シエラの持つ串肉には僅かだが肉が残っている。



「そ、そうですね。残りは私がいただきます」



 恥ずかしそうにちょびちょびと串肉を齧るシエラを見て確信する。



 屋台のおっちゃんに彼氏とか言われて嬉しそうにしてたし、どう見てもシエラは俺のこと好きだよな……











 暫く歩くと武器屋の前にやってきた。

 軒先には武器が並び、店の奥には厳ついオヤジが座っている。

 店の中にも所狭しと武器が置かれていた。



「ユウヤさん武器はやはり剣がよろしいですか?」



 剣か、でも剣だと魔物に近づかないとダメなんだよな……

 俺はそんな危険なことはしたくない。

 出来れば後ろからコソコソ攻撃したいんだが、でもそうすると前衛がいなくなる。

 どうしよう……取り敢えず無難に剣にしておくか……



「そうだな剣にするか、だが安いのでいいぞ。

 高いのを買っても使いこなせなければ意味がない。

 所持金だって限られているんだ」


「そうですね。剣が合うかも分かりませんし、試しに安い剣を買って試してみましょう。

 剣は私が選んでもよろしいですか?」


「任せるよ。俺に剣の良し悪しは分からないからな」



 シエラは頷くと集中するように並べられた剣を眺めている。

 特価品の剣が並べられている中から1本の剣を選ぶと俺に手渡した。



「これはどうでしょうか?」



 受け取るとずしっと程よい重量が伝わってきた。

 振ってみると剣に振り回されている感じだが振れないことはない。



 折角選んでくれたんだ、これでいいだろう。



「これにしよう」



 店の奥に持っていくと厳ついオヤジが睨みを利かせている。

 何故かシエラをじっと見ていた。



「お嬢ちゃん。あんた目利きが出来るのか?」



 目利き?もしかしていい剣なのか?



「いえ、適当に選んだだけですがどうかしましたか?」



 シエラは変わることなく平然としている。

 その様子をみてオヤジは肩を落とすと、何でもないと話を切り上げた。



「その剣は銀貨5枚だ。鞘はサービスしてやる」


「ありがとうございます」



 シエラは代金を渡すと、嬉しそうに俺の腰に剣の鞘を取り付けた。

 剣があるだけでも随分違って見えるものだ

 だが、残念なことにジーパンに剣ではちょっと格好がつかない。



「なぁシエラ、今度は服屋に行かないか?この格好はどうにも目立つ」


「分かりました。マントなども買わなければいけませんし服屋に行きましょう」



 次の買い物が決まると服屋を目指すことにした。



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