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 近くに交番があれば場所を聞くんだが……



 だが、交番どころか人っ子一人いない。

 それどころか街灯もなく真っ暗だ。


 暗闇の中、建物に手を添えながら移動していると喧騒が聞こえてきた。

 喧騒に誘われるように足を進めると……



 何処だここは……



 大きな通りには店が並び、軒先にはランタンのような物が吊るされていた。

 薄暗い明かりで照らされた通りには、見慣れない格好の人たちが行き交っている。



 何だこれ……

 本当にここは日本なのか?

 取り敢えず場所を聞かないと。



 近くの店に入ると、中には見たこともない雑貨が並んでいた。

 店員に場所を聞こうと尋ねるも……



「あの、すいません。

 ここが何処か教えてくれませんか?

 出来れば交番の場所も教えて欲しいんですけど」



 店員の女性は首を傾げて不思議そうに見ていた。

 そして……



「………………………………………

 …………………………………………………………

 …………………………

 ………………………………………」



 何言ってるか分かんねぇ……

 初めて聞く言葉だ。

 何処の国の人なんだよ。



 身振り手振りで説明するも全く分かってもらえない。

 すると店員は俺をまじまじと見て、何か思い出したように手を叩いた。


 店の奥に何やら話し掛けているようだが、何を言っているのかさっぱり分からなかった。

 そのまま帰ろうとすると、なぜか腕を掴まれ呼び止められる。



 何なんだ?

 全く意味が分からん。



「他の奴に聞くから離してくれ!」



 店員はやはり不思議そうに首を傾げる。

 まったく話が通じない。


 強引に引き剥がそうとすると、店員が何かを叫んだ。

 すると店の奥から筋骨隆々の大男が現れ、優也を瞬く間に拘束する。



「俺が何をしたって言うんだ!

 場所を聞いただけだろ?

 早く離してくれ!」



 だが大男も首を傾げる。

 二人とも日本語が分からないらしい。



 何て厄介な所に来たんだ。

 これは暴行、監禁になるんじゃないか?

 後で警察に被害届けを出してやる!



 暫く大人しくしていると店の中に複数の男たちが入ったきた。

 その格好に思わず目を見張る。


 何故なら男たちは金属の胸当てをして槍を持っていたからだ。

 日本では間違いなく銃刀法違反で捕まる。

 まるで中性のヨーロッパに来たのではと、錯覚さえ覚えた。


 店員と男たちが何やら話すと、目の前にロープを取り出した。

 この状況でロープをどうするのか、それは考えるまでもない、一つしかないだろう。

 優也は慌てて抵抗した。

 掴まれた両腕に力を込め、抜け出そうと必死に藻掻もがいた。

 こんな訳の分からない所で捕まったらどうなるか、そんなことは想像もしたくない。



「クソッ!

 捕まってたまるか!

 離せよこの馬鹿力が!!」



 必死で暴れた次の瞬間、意識が次第に遠のいていく。

 どうやら後ろから後頭部を強打されたらしい。

 後頭部が痛む中で意識は完全に消えていった。











 いってぇ……

 何だってんだ。

 ここはどこだ?



 気が付くと周囲は壁で覆われ、目の前には鉄格子が見えた。

 壁には窓一つ無い。

 薄汚れたベッドに桶が一つ。

 どっからどう見ても牢屋にしか見えなかった。

 素足の足にはいつの間にかサンダルの様な安っぽい靴が履かされ、弥生に切られた傷は綺麗さっぱりなくなっていた。



 ほんとにどうなってるんだ?

 恐らく日本じゃないよな……

 日本でこんな扱いをしたら問題になるはずだ。

 拘置所だって最低限の衛生は保たれている。

 と思う……入ったことがないから知らんが多分そうだ。



 通路の壁に掛けられた松明の明かりが、人の影を伸ばしている。

 どうやら誰かが来たらしい。

 遠くから複数の足音が聞こえてくる。

 話し声も聞こえるが当然理解できない。


 勇也の入る牢屋の前で立ち止まったのは、神官服のような衣装を着た男たち、そして少女が一人だけ。


 少女は蒼白のセミショートの髪をかきあげ、真紅の瞳でじっと優也を見つめていた。


 男たちも、優也を観察するように見ては何かを話している。

 まるで見世物にされている状態に、怒りが沸々と込み上げてくる。

 無意識のうちに叫び声を上げていた。



「ここから出せ!

 俺は何もしていない!

 こんな事が許されると思っているのか!」



 男たちは顔を見合わせまた何かを話している。

 それに加わり少女が何かを話し始めた。

 すると、男たちは驚愕の表情で優也を見つめる。



 一体何なんだ?

 せめて話してる内容が分かれば……



「異世界の方、このような酷い扱いをして申し訳ございません」



 日本語?

 この少女、日本語が分かるのか?



「言葉が分かるなら、俺をここから出してくれ。

 俺は何も犯罪は犯していない」


「勿論です……と言いたい所ですが条件があります」


「条件だと……」


「はい、異世界人はとても貴重な存在です。

 異世界の知識は国をより豊かにします。

 ですが、他国に渡ればそれは驚異となるのです。

 我々の望む知識があるのなら、その知識をこの国のために使うこと。

 それが牢屋から出す条件です」



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