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雨のある日常

作者: とある人。

試しと思い書いてみた駄作です。



平穏と引き換えにこれでもかと言わんばかりに平和で穏やか

な変化のない日常。

確かに世界は動き続けてるはずなのに、僕らにその動きは見ることが出来ないし、許されない。許されてるのは一部の人間だけ。



だからと言う訳ではないけれども、変わらない日常に大きな変化と少しの特殊性が欲しいのだと思う。平穏が過ぎて退屈が紛れるほどの興奮と非日常が。



過去の、人類の、歴史を作り上げてきた偉人達はきっと誰しもが、未来が良き世界であるようにと祈り、文字通りに粉骨砕身して作ったはずの現代社会は、異常を探してしまうほどの退屈さに飽きていたのだ。



それは死体蹴りの名に相応しい所業であり、なんとも皮肉が効いていて、深い人間の業からくるものなのだろう。





いつも通りの思考をしていると、教室の者殆どが席を立つ音が聞こえた。


……そうだった。もう帰りだ。

勿論、部活動に勤しむ者は部活動に行くのだが。


しかし、先程から教室の扉の音が聞こえず誰も帰ろうとしない状況を不思議に思い、寝ていた机から顔を上げて同級生達の顔を順次見ていくが、皆は窓の外を見て困惑していた。


独特の匂いと湿気、ザーザーと外に響く、空が泣いてるかのような心象を表すような分厚い雲と大量の涙。

そう。雨が降っていた。


遅まきながらにして、どうして帰ろうとする者がいなかったのかを理解した。

誰も傘を持ってきておらず、外での部活は軒並み休みとなるのだろうが何しろ傘が無いから さぁどうしよう と言ったところだったのだ。


お天気お姉さんだって外す時ぐらいはあるさ。にんげんだもの。








[皆! 傘買ってきたぞ!]

どうやら救世主が表れたらしい。

手に持つは大量の傘。傘。傘。傘。………流石に多くない?


救世主様が濡れてない様子を見ると、学校の購買から買ってきたのだろうけれど、そんなにストックがあったのかと驚く。

※ちなみにうちの学校の購買は、何でも売っている。





問題が片付いたのなら次は帰宅。

当然である流れなのに何故、友人は一直線に僕の方に向かってくるのだろうか。

なにやら、お怒りのご様子らしい。

分かりづらいとは思ってしまうが、僕の友人は怒ると歩幅が少し大きくなる。 それなのに優雅に歩いてるように見えるのは友人の身長が比較的高いからだろう。 羨ましい。






『お前、傘持ってるか?』

傘を貰えなかったようだ。


「持ってるよ。自分の分だけ。」

秘技。置き傘。


『傘を渡せ。それか傘に入れろ』

何で、僕の友人はこうも乱暴な言い方をしてしまうのだろう。

丁寧に話せば、異性にモテると確信出来るのに。


「男と相合い傘とかむさ苦しいと思うのだけど、それでも良いならどうぞ?」


『別に構わないぞ。』


「そっか。それじゃあ帰ろうか」


あっという間に物事が決まったので帰宅に着く。

しとしとと雨が降る中を友人と二人、相合い傘で帰る。

何だこの状況。



『お前は雨の日は嫌いか?』


突然どうしたのだろう。

いつも突発的な事を言い始めるのは、基本的に僕の役割だと自負しているのに、それが友人の役割と化したのは今日限りにしてほしい。

僕のアイデンティティーが無くなってしまう。


とはいっても、まずは返事をしなければ

「特に嫌いでもないし、好きでもないってところだね」


『そうか。』


「そう言う君はどうなの?」


『勿論嫌いだ。』


「嫌いなのかよ。」


『当たり前だ。こんなジメジメとしたのが好き奴がいるか。』


はて。これは困ったぞ。

何で友人は雨が好きかなんて問うてきた理由の手掛かりが綺麗サッパリと消えてしまった。

思案するより訊いてしまった方がはやいだろう。

そう珍しく、僕が早々に考えを纏めた。珍しく。


「そのような事を問うてきた理由は?」


『よしきた。話してやろう。』

『雨は確かに嫌いだ。だけれども、雨とは言わば地球を維持させるための循環機能。

であるならば人は生命をまだ謳歌して良いとの赦しでもある。正確には雨が降り、世の目に見えずに溜まった不浄を流し、希望を知らせる陽が出た瞬間だがな。』


ふむ。成る程。考えてみればそうかも知れない。

人類に結びつける飛躍には目を瞑るとしてもその考えは中々に素敵だと思う。

そう思うとこの雨に対して感謝の念が湧いて出てくる。


「また面妖と言うか不思議と言うか、新しい思想だね。」

……あれ?じゃあ、あの質問の正しい回答って


『気付いたみたいだな』

『正解は好きも嫌いも関係無いだ。』


「君って理系だったよね!?」


『そうだな。』


「提示してきた問いかけが文系過ぎるよ!」


『それこそ自然が起こす事象に対して無意味な考えだろ?』

『それにほら。雨が止んだぞ?

人類が生存を赦されている証拠だ』



友人の言う通り、いつの間にか空から一筋の希望の光が差していた。

ああ、雨の後の光によって煌めくのは、不浄であったはずのものたちなのにとても眩しい。

散りゆく様を、儚く美しいと思うのは人間が赦されている理由の1つなのでは無かろうか。



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