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想いのリフレイン  作者: 留菜マナ
公式トーナメント大会編
97/126

第九十七話 戦いのプロローグ

オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』の第四回公式トーナメント大会のチーム戦の決勝戦。

開始早々、春斗達、『ラ・ピュセル』と輝明達、『クライン・ラビリンス』のバトルは苛烈さを増していた。

春斗と優香vs輝明とカケル。

あかりとりこvs当夜と花菜。

二手に別れた優勝をかけたバトルに、観客達も食い入るように見守る。

「カケル!」

その輝明の声が合図だった。

「分かっている!」

そう口にした輝明のキャラの背中から現れたのは、刀を振り上げたカケルのキャラだった。

完全に虚を突いた二人の連携攻撃を前にして、春斗のキャラは一撃を甘んじて受けてしまう。

油断したーー。

そう思った時には、既に輝明は連携技を発動させていた。

『竜牙無双斬!!』

最短で繰り出された輝明のキャラの必殺の連携技にーーしかし、春斗はあえて下がらずに前に出た。

「ーーっ!」

春斗のキャラはそれを正面から喰らい、ぎりぎりのところまで体力ゲージを減らしながらも、輝明のキャラの必殺の連携技の終息に合わせて、春斗もまた、必殺の連携技を発動させる。

『ーー弧月斬・閃牙!!』

「ーーっ!」

春斗の起死回生を込めた一撃に、必殺の連携技を放った反動により、硬直状態に入った輝明は一瞬、目の色を変えた。

『ラ・ピュセル』のチームリーダーである春斗が、ここぞという時に放った土壇場での必殺の連携技。

「悪いな」

「ーーっ」

輝明のキャラが硬直状態に入ったことで、バトルの終わりが予測された連携技の大技は、しかし、すかさず、割って入ってきたカケルのキャラの連携技によってそれを阻まれる。

「なっーー」

春斗が驚きを口にしようとした瞬間、硬直状態が解除された輝明は、超反応で硬直状態に入った春斗のキャラに乾坤一擲のカウンター技を放つ。

「ーーくっ!?」

「春斗さん!」

音もなく放たれた一閃が、なすすべもなく春斗の操作するキャラを切り裂こうとした。

しかし、優香のキャラが春斗のキャラをかばうように前に出てくれたことで、春斗のキャラはぎりぎりの状態を保つことに成功する。

「優香、ありがとうな」

「はい」

きっぱりと告げられた春斗の言葉に、優香は嬉しそうに頷いてみせる。

一方、あかり達も苦戦を強いられていた。

「春斗、天羽!」

あかりはそう叫ぶと、春斗達のキャラの下へ駆けつけようとして、こちらの行く手を阻むように大鎌を構えた花菜のキャラに眉をひそめる。

「雅山あかり、今生りこ。あなた達の相手は私達」

「ーーっ」

決意の宣言と同時に、花菜のキャラは巨大な鎌を再度、あかりのキャラに振りかざしてきた。

花菜のキャラと対峙していたあかりのキャラは、手にした剣で一撃を受け止めるも、予想以上の衝撃によろめく。

「あかりさん!」

りこのキャラは手慣れた操作で槍を回し、当夜のキャラから一旦、距離を取ろうとする。

しかし、そこへ急加速した当夜のキャラが、正面から一撃を浴びせた。

「行かせるかよ!」

「むうー」

当夜のキャラの迎撃によって、りこのキャラは直撃を受けてしまう。

「一気にいくよ!」

「ーーっ」

だが、少しも動じないりこに、当夜は不服そうに冷めた視線を送る。

「くっ!」

言葉と同時に、あかりのキャラは花菜のキャラに背を向け、当夜のキャラがいる場所へと走り出しそうとする。

「逃がすわけーー」

「あかりさん、ここは、りこにおまかせ!」

「ああ!」

花菜にとって、予想外な彼女の声は遅れて聞こえてきた。

あかりのキャラを捉え、弾き飛ばした花菜のキャラの出鼻をくじくように、当夜のキャラの連携技の嵐から逃れた、りこのキャラがあかりのキャラに放った連携技ごと一撃を叩き込んだ。

あかりのキャラと花菜のキャラ。

それぞれ、体力ゲージを巻き散らしながらも、あかりのキャラはりこのキャラの元へと駆けていく。

振り返った花菜に、奇襲が成功したりこは意図して笑みを浮かべてみせた。

「今生りこ」

「高野花菜さんの相手は、りこじゃなかったのかな?」

「違わない」

りこのつぶやきに、花菜は目を細め、うっすらと、本当にわずかに笑った。

「ただ、私達の相手はあなただけじゃない。雅山あかりと今生りこ、どちらも私達が倒す」

淡々と言葉を紡ぐ戦姫の名を冠した少女ーー花菜は、髪をかきあげて決定的な事実を口にした。

「雅山あかり、今生りこ。私はチームのためにーー輝明のために動く。だから、対戦チームの中で、もっとも手強いあなた達は私達の相手」

「その相手が、あかりさんとりこ?」

りこの言葉に、花菜は一瞬、息を呑んだように見えた。

無表情に走った、わずかな揺らぎ。

そして、無言の時間をたゆたわせた後で、花菜はゆっくりと視線を落とした。

「…‥…‥そう、思ってもらっていい」

花菜がそうつぶやくと同時に、花菜のキャラは大鎌を振りかざしてきた。

大鎌による嵐のごとき斬撃に、りこのキャラはあえて下がらず、前に出る。

「りこ、ついにあかりさんと同様に、もっとも警戒する相手にランクアップしたよ!」

「そ、そうだな」

何気ない口調で告げられたりこの言葉に、あかりは少し呆れたようにため息をつく。

すると、りこは当然というばかりにきっぱりとこう答えた。

「これって、今回も、りこ達が勝つっていう理屈!」

「今生らしいな」

彼女らしい反応に、あかりがふっと息を抜くような笑みを浮かべる。

「はあっ!」

だが、その言葉が合図だったーー。

一瞬前までその場にいなかった当夜のキャラが、りこのキャラめがけて直上から連携技を放ってきたのだ。

裂帛の気合いを込めた当夜のキャラの連携技は、咄嗟に防ごうとしたりこのキャラの防御を打ち破る。

致命的な特大ダメージエフェクト。

体力ゲージを散らしたりこのキャラは、当夜のキャラの足元へと倒れ伏す。

当夜の固有スキル、『燃える闘志』。

通常の連携技を放つ度に、威力が上がっていく固有スキルだ。

当夜は、必殺の連携技を使えない代わりに、この固有スキルを何度でも使うことができた。

「あ~!りこの絶好調があっさり終わったよ!」

「そ、そうかもな」

自身のキャラが倒された途端、りこはそれまでの明るい笑顔から一転して頬をむっと膨らませる。

その場で屈みこみ、唇を尖らせるという子供っぽいりこの仕草に、あかりは思わず、呆気に取られてしまう。

「姉さん!」

りこのキャラを倒した当夜のキャラが、花菜のキャラと合流するのを見て、あかりはほんの一瞬、複雑そうな表情を浮かべる。

「だけど、これで本当に、今生の固有スキルには頼れなくなったな」

二対一の状況に追い込まれたあかりは、改めて確認するようにゲームのモニター画面をまっすぐ見つめた。

このまま戦っても埒が明かないな。

俺のキャラの武器は剣、当夜のキャラも剣。

そして、花菜のキャラは大鎌か。

ならーー。

「試してみるか」

言葉とともに、あかりのキャラは剣を手に地面を蹴った。

「ーーっ」

受けの姿勢を取った当夜のキャラを見据え、互いの間合いに入る直前であかりのキャラは立ち止まる。

そして、牽制するように連携技を地面に放った。

「なっ?」

「空打ち?」

あかりのキャラの連携技が放たれると同時に、当夜と花菜の動揺がはっきりと感じ取れた。

連携技の空打ちーー。

それも地面に向かって放つという明らかなミス。

それが決勝で起きるという不可解な事態に、当夜と花菜は驚愕した。

そして、それゆえに、そこに埋めようもない隙ができる。

『ーーアースブレイカー!!』

「ーーっ?!」

言葉とともに、あかりが間隙を穿つ。

瞬間の隙を突いたあかりのキャラの必殺の連携技に、ターゲットとなった当夜のキャラは完全に虚を突かれた。

致命的な特大ダメージエフェクト。

当夜のキャラは、ゆっくりとあかりのキャラの足元へと倒れ伏す。

「雅山あかり」

弟のキャラが倒されたというのに、表情一つ変えずに振り返った花菜に、あかりは満面の笑みを浮かべてみせた。

「これで、おあいこだな」

「そうかもしれない」

あかりの言葉に、花菜は一瞬、表情を緩ませたように見えた。

無表情に走った、わずかな揺らぎ。

そして、無言の時間をたゆたわせた後で、花菜はゆっくりとこう答えた。

「なら、私が当夜の分まで頑張るから」

言葉とともに加速。

正面から接近してきた花菜のキャラを迎え撃つように、硬直が解除されたあかりのキャラもまた、地面を蹴って花菜のキャラへと向かう。

あっという間に接敵した二人は息もつかせぬ激しい攻防を展開するのだった。

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