動き出す運命
セルカディアの教会に来て、1ヶ月ほどが過ぎた
教会の奉仕活動に従事しながらも、僕は良くしてもらい、本当に穏やかな日々が過ぎた
時には教会学校の授業に参加させてもらって、時には礼拝の時間にも参加させてもらって、オルウェイにいた頃には体験できなかったことを、体験させてもらい、色々なことが吸収できた
「じゃあ、アラン君、今日はステンドグラスの掃除をお願いするね」
高いところに位置するステンドグラスはいくつもの台を重ねて手を伸ばして掃除をする
高所恐怖症の人には少し難しいけれど、僕は平気だったために、すいすいと掃除をこなしていく
こうして今日も一日のんびり過ぎていくはずだった
いつの間にか、オルウェイの反乱のことも忘れていた
だけど、今日、それは動き出す…深い闇へのカウントダウンが始まる
************************
午後になると、外がざわつき始めた
教会にオルウェイ軍の人間が何人か来たらしい
「とにかく、ティルキスの息子がここにいることは知ってんだよ」
遠目だからわからないけれど、僕よりまだ少し年上くらいの若い兵士が教会の人間に問い詰めている
その光景を目にしたクリスがすぐに僕の所へ駆けつけてきた
「アラン君、大変!やっぱり、あなたのこと、気づかれているみたい!早く逃げましょう!」
クリスは慌てて僕に身支度をさせる
「でも、おかしいじゃないか!なんでただのオルウェイの市民だった僕を軍が探しに来るんだよ?」
「そんなの、私にもわからないわ。でも、きっとよくないことが起きると思うの。だから、この教会には秘密の地下道があるから、そこから逃げましょう」
クリスは手に燭台を持ち、僕の手を引いて、大聖堂へと連れてきた
「聖人、ここに在るは人事の憐み。月満ちるとき、彼の鮮血を…」
クリスがそう唱えると、床が開き、地下へ続く階段が、埃臭さと共に現れた
「ここから逃げるのよ」
「でも、僕は…」
まごまごしているうちに、大聖堂の扉は軍の人間に乱暴に開けられ、侵入を許してしまった
とん、とクリスに背中を押され、僕は転がるように、階段の下へと落ちていった
その刹那、開いていた床は閉じ、僕は光のない地下道に閉じ込められた
「クリス!開けてよ!僕は無実だよ!逃げるなんて出来ない!」
そう叫んだところで床が開くはずもなく、僕はただ途方に暮れるだけだった