やさしい街
教会のベッドに寝かしつけられた僕は安らかに眠りに落ちた
町医者はいないものの、僕と同じく船にはオルウェイから逃げ出してきた医者がいたみたいで
教会の人々の助けもあり、一命をとりとめた
「こんな子供も巻き込まれるなんてなあ、かわいそうに」
医者のそんな呟きが聞こえてきた気がした
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サンダリアは大きな教会を持つ
王政の息がかかった街ではあるが、住民の心は穏やかで
実際は王政よりも協会が街を仕切っている
街の人々の喜捨や貢献で営めている教会も、例えば街が災害に襲われた場合、それらを解放して
街の人々に貢献する
よほどの住民からの信頼がなければこんな大きな教会にはならないであろう
街の最奥部に煉瓦造りの大聖堂が聳え、何人もの僧や尼僧らが奉仕活動に従事する
この街での犯罪はほとんどなく、もし犯罪を犯した場合は、教会にて尋問が加害者と被害者間で公正に行われる
孤児はひとりもいない
学校も教会の中に教室があり、そこですべての子に平等に行われる
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「う、ううん…」
目が覚めた僕の体にはまだ鈍さがあるも、船の上とは比べ物にならないくらい
楽になっていた
教会の一室にあるベッドの上で目覚めた僕は辺りを見回す
「そっか、僕、助けられたのか…」
自分の情けなさと、まだ残る痛みに歯を食いしばりながら、ベッドから起きて窓辺に立つ
外に見える景色は壮大ではないものの、オルウェイが失った、平和な街なみだった