謎の女性
サンダリアにはもう着いたのだろうか
僕は、生きているのだろうか?
「もう誰もいませんか?」
甲板の方からそんな声が聞こえている気がした
僕はここにいます、と叫びたいのに、身体は発熱し、じっとりした嫌な汗が体にまとわりつき
髪も濡れている
横たわったままの僕は自分の存在を訴えることも出来ず、ただ荒い息を漏らすだけ
「すみません、少し寝坊してしまって」
「次の出向の準備があります、早く降りてくださいね」
女性と船員のそんな会話が聞こえてきた…気がする
意識の曖昧な僕にとっては夢だったかもしれない
でも、きっとそれは夢なんかじゃない
「ちょっと、あなた大丈夫!?」
僕の荒い息が聞こえたのか、甲板からその女性が倉庫に駆け込んできて僕に声をかけてきた
「すごい熱…それにこの身体、船員さん、今すぐセルカディア教会の人を呼んできてください」
その女性は僕の額に手を当ててそんなことを船員に訴えていた
「教会の人?医者じゃなくて?」
疑問を投げかけ呆ける船員に、その女性はさらに語気を強めて
「サンダリアに町医者はいないんです!だから早く!」
急かされた船員は急ぎ船を降り教会方面へと走っていった
「もうちょっとで楽になるからね」
その女性は手にしていたハンカチで僕の顔を拭いてくれた
アデリアの甘い花の匂いが、僕の苦痛を少し和らげてくれた