表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Navy Fate  作者: 時間旅行
19/24

転換期(後編)

「おい、起きろ」


ルイの不愛想な声と共に、僕は目を覚ました


気付けば眠っていたらしく、外は暗くなっていた


「あ、僕…」


まだ少し寝ぼけている僕は、今の状況を把握するのに少し時間がかかった


「夕食の時間だ、早く着替えて食堂まで来い」


「着替える?」


「お前はそんなボロボロの服で陛下の御前で食事をするのか?」


いつまでもぶっきらぼうで、親切心のないルイの声に

なぜだか不快な気持ちになることはなかった


じっと自分の服をみやる


オルウェイでの反乱に巻き込まれてから、ずっと着続けていた服


穴があいて、血や泥の跡が強く残る服は今でもお気に入りだった


「先に廊下で待っているからな」


男同士とはいえ、僕が着替えることに気を遣ってくれたのだろうか


ルイは扉の先で待っていた


クローゼットから適当な服を探すつもりだったが、どれも煌びやかな貴族服ばかりで

とても平民である僕なんかが着てもいいような服ではなく、着替えるのに躊躇した


でも着替えないときっと怒られるし、陛下との食事の時間を先延ばしにするわけにはいかない


でも、なんで僕が陛下と食事を?


そんな疑問を抱きつつ、早く着替えて廊下に飛び出した


ルイは何も言わず、先に歩き出し、僕はその後をついていく…



「似合っているではないか」


それが陛下に最初に掛けられた言葉だった


緊張で上手く返事が出来ず、僕はおずおずと頭を下げて指された席に腰を掛ける


部屋の端から端まで伸びる長いテーブルに、次から次へと見たこともない料理が運ばれる


空腹感を急に覚えた僕は、それでも陛下の言葉に耳を傾け、なぜここへ連れて来られたのかを

知らなければならないと思った


「ほっほ、まあ、そう緊張なさらずとも、好きなだけお食べ」


クリスやランシアがいた時には見せない笑顔を陛下は見せた


僕は言葉に甘えて、パンをひとつ手に取って口に運んだ



「それにしても、お前は本当に父上に似ておるな」


僕の顔をまじまじと見つめ、陛下は言った


僕の父さんと国王にはなんの接点もないと思っていた


だから今こうして言われたことに、疑問しか感じなかった


「あの、父を…ご存じなのですか?」


「おお、知っているとも。お前の父がいなければ、こうしてお前にも会うことは出来なかったしな」


言っている言葉の意味を飲み込めない


父さんと、国と、僕になんらかの関係があるのは確かだ


でも、その理由が語られることは今日はなかった



********************



「じゃあ、そろそろ行きましょうか」


クリスが短剣を袖に仕舞い込んで、ランシアに呼びかける


「ああ、でも、お前城の事わかんの?」


「ええ、国に関わる人でも厚い信仰心を持っている人はいるみたいだから

何度も城にはお邪魔したことあるの」


こんな形でお邪魔することになるなんて思わなかったけれど…


と切ない顔でクリスは零した


「ま、でも俺がいるからよ、安心しなって、絶対アランは助け出すしな」


得意気にランシアは笑顔を見せ、親指を自分に宛てた


子どもっぽい仕草にも見えるのに、なぜか今はそれが頼もしく見えた


「ふふ、期待しているわ」


そして、城を構える街に、深い夜がやって来るのだった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ