幽閉
「ごめんなさい…」
僕とランシアとクリスが同じ牢屋に幽閉された時に、最初にクリスがそう言った
「なんで、クリスが謝るのさ。悪いのは僕だよ。教会や街のみんなに危害を加えてしまったから」
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「ほう、ティルキスのガキか。いい度胸だ」
僕が出てきたのを確認して、軍の高官であろうその男は顎に手を当て、僕をにやにやと見やった
「僕は、あなたに着いて行きます。だからこれ以上クリスや街の人には手を出さないで」
僕は連行されることに対し、僕以外の人間の無事を条件づけた
それを真っ先に否定したのは驚くことにクリスだった
「ダメよそんなの!」
気が緩んだ高官の腕からすり抜け、ロッドを手にして立ちはだかった
だけど、街が軍に包囲されているのに、一人で立ち向かうなんて出来るはずがない
しかし、そのクリスの行動に感心したランシアが人混みの中から走り寄ってきた
「へえ、いい度胸じゃん、感心するな」
そう言ってランシアも槍を構えた
「お前ら、軍に逆らうと言うのか…」
高官はわなわなと怒りを迸らせ、手下に取り押さえの命令を出した
当然のようにふたりはすぐに捕まってしまった
僕も応戦はしてみたものの、大人の軍相手では、赤子の手を捻るようにされ、すぐに頭を押さえられ、地に伏せられた
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「僕の為に二人は戦ってくれたんでしょ?それだけで嬉しいよ」
結局、軍に逆らった身として、クリスもランシアも武器を取り上げられ、牢屋に放り込まれてしまった
僕の切ない感謝の言葉に二人はただ黙る
その空気に耐えられない僕は、別の話題を切り出した
「でも、軍も酷いよな、クリスを人質に取るなんてさ」
クリスの話によると、僕を教会から逃がした後、本当は軍に殺されそうになっていたのだそうだ
だけど、こいつは人質に使えると言う軍の思惑で、ノウゼンの街まで連れて来られたらしい
「教会の人は無事だったの?」
僕が気にかけていたことを尋ねてみた
「ええ、私を人質に取った軍はすぐに満足して街を出て行ったの。だから大丈夫よ」
それはよかったと胸を撫で下ろすも、これから僕ら三人はどうなってしまうのだろうと不安ばかりが胸に押し寄せた
そして、目隠しされ連行されたため、ここがどこの牢屋なのかも知る由もなかった