襲撃
「まだ、寝ないのか?」
宿屋の窓辺で星空を見上げる僕を気にかけ、ランシアが目を擦りながらベッドから身体を起こす
「あ、ごめん、起こしちゃった?星空を見てると色々考えちゃって」
「あんまり気に病むなよ?」
「うん、ありがとう」
僕は今になってサンダリアの教会の人たちのことが気になってきた
あの後、僕を逃がした教会の人々、そしてクリスは無事なのだろうか
考えても仕方のないことに、思考を巡らせ、仕方なくベッドに潜り込む
・・・・・・とても眠れそうになかった
ようやく微睡み始めた深夜に、外で大きな爆音が響き渡り僕もランシアは飛び起きた
いや、きっとノウゼンの街の住民みんなが飛び起きただろう
地面が揺れるほどの爆音…念のためだけれど、無意識的に僕は父さんに渡された短剣を、ランシアは自慢の槍を手に持つ
「いくぞ、アラン!」
「うん!」
急いで宿の外に向かう
すでに街の人々も外に出始めている
爆音の原因は、信じたくなかったけれど、ノウゼンの街までやってきたオルウェイ軍の爆撃が原因だった
「ティルキスのガキはここにいるんだろう!?出て来い!」
軍の高官とも見える男が、街に響き渡る声で叫ぶ
怯える僕の前にランシアが立ち、僕の姿を隠してくれる
だけど、僕が出て行かない限り街は砲撃を食らい続け、焼け野原にされてしまう
それ以上に僕には驚くべき光景が目の前にあった
・・・・・軍の人間に縛られ、頭に銃口を押し当てられたクリスの姿・・・・・
「おい、ティルキスのガキ!さっさと出てこないとこの女がどうなっても知らないぞ!?」
どうやらクリスは人質に取られてしまったらしい
「ダメ!出てきちゃダメ!私なら大丈夫だから!」
クリスも、姿の見えない僕に、でもきっとこの人混みの中にいるだろうと理解した上でそう叫んだ
「あんにゃろ、汚いマネしやがって」
ランシアが怒り、歯を食いしばる
僕は、そんなランシアやクリスに、守られているだけでいいのだろうか?
教会も、この街も、僕が行かなければ犠牲になる
そんなのダメだ
僕が一人犠牲になってすべてのことが収まるなら…
「お、おい、アラン…」
ランシアの言葉を遮るように、僕は無言で歩き出し、軍の方へ向かっていった
その光景を、クリスも、ランシアも、街の人々も呆然と眺めるだけだった