-三章-
三嶋は、木原が完全に消えるまで見送ると、再び境内の方へと目を向ける。
そしてそのまま目をスッと細めると、そこに現れた人影を見据え一言だけ呟いた。
「さて、最後の仕事といくか」
目の前にいるのは先ほど倒したばかりのシェイド。
そう、彼は再びひとりのシェイドに収束し、三嶋の首を狙いにきたのだ。
「やはり、あの程度で終わりはしなかったようだな」
「……気づいていたか、やっぱりアンタは危険な存在だね。ここで、消す!」
今まで力を分散させていたものがひとつに集まっただけあって、先ほどのシェイドとはスピードが随分違う。
更に投影の能力をフルに使って、一人が二人に、二人が三人になって三嶋に波状攻撃を仕掛けてくる。
同時撃破の成功によりもう別の空間に投影を作り出すことはできないだろうが、これだけの能力が使えれば十分な脅威だ。
だがそれでも三嶋は怯まない。
「ひとつになったことで勝てると思ったか」
まず始めに攻撃を仕掛けてきたシェイドの攻撃をあっさりかわして一突きで屠ると、続けて来た二人目目掛けて一人目を蹴り飛ばす。
二人目はそれを手で払いのけると三嶋に対し短刀を振りかぶり、それを当然のように受け流した瞬間二人目の体をShamainで貫く。
と、そこで三人目が後ろから迫ってきて、短刀で薙ぎ払うがそれを二人目を盾にすることで防ぎ、二人目と三人目を一気に串刺しにする。
いつの間にか現れていた四人目のシェイドが今度は横から攻撃をしかけてくるも、それを空いていた左手で受け止める。
四人目のシェイドは更に五人目を生み出し、三嶋を挟撃。
串刺しにした二、三人目から右手のShamainを抜き取ると、右から来たシェイドには右手で、左から来たシェイドには左手で応戦。
「なんだ…… なんなんだ!貴様は!?」
流石のシェイドも薄ら笑いを浮かべる余裕など無い。
むしろ三嶋の圧倒的な強さに恐怖さえ覚える。
「貴様程度ではこの『黒炎の鴉』を止めることは不可能だ」
「『黒炎の鴉』!?
……まさか貴様が、特務課の――」
言い終わる前に左側にいたシェイドを撃破し、右側にいる五人目を見据える。
「デッド・アイ」
三嶋が紫に染まる両眼を大きく見開くと、そこに血まみれになって地面に倒れ伏すシェイドの姿が映る。
それはまるで走馬灯のように、見えたと思った瞬間に消えていく。
三嶋は今、相手が向かうことになる未来――つまり相手の『死』を予見したのだ。
「貴様の死の運命は決まった」
まだ健在のシェイドにそう言い放つと、まずは左手の短刀を弾き飛ばし、右手でその頭を鷲づかみにする。
「だが、殺しはしない…… 必ずな」
そのまま相手を地面に叩き伏せると、シェイドは最後の抵抗に投影を二体作り出し、三嶋の左右から短刀を振り下ろす。
だが、それよりも三嶋の方が速かった。
「逝け、魂の牢獄へと!」
そう叫んで一層右手に力を入れると、目に見えない『気』のようなものが三嶋の右腕を伝って、その先にある相手の頭部で炸裂する。
その瞬間、砂の城が崩壊するように崩れ去っていく左右の投影。
そして頭を掴まれていたシェイドは魂の抜けた人形のように動かなくなった。
目を閉じて静かに佇むその姿はまるで、安からな眠りについたようにも見える。
「これで投影の能力はもう発現しない」
そう言い捨てて、三嶋は動かないままのシェイドの両手に手錠をかけ、制御室で待機中の海藤に通信を開く。
「隊長!ご無事ですか!?」
通信を開いた時、海藤から開口一番に出た言葉は三嶋の身を案じるものだった。
三嶋はそれに苦笑して、
「海藤、私を誰だと思ってる」
そう一言だけ返すと、それだけで海藤は黙り込む。
「ともあれシェイドは捕縛した。
そのままシェイドもろとも私を転送してくれ」
「了解です!」
海藤がすぐに転送の処理を施したのだろう。
三嶋とシェイドの姿が徐々に透明度を増していく。
転送の最中、三嶋は今回のVTR訓練での各員の動きを振り返っていた。
各員は、突然のBLN乱入に対しても冷静に対処し、十分に健闘したと言えるだろう。
……が、勿論目に付く改善点はまだまだ残されている。
海藤は単独での戦闘能力に自信があるせいか、ちょっとした注意力に欠けるところがある。
木原は持ち前の能力により他とは特異な戦闘力を有するが、動きにまだ無駄が多い。
高遠と八神はコンビネーションとしてのバランスは優れているが、単独での戦闘力が乏しい。
瀬川姉妹は天界武器に頼りすぎている節があるので、時間制御に頼らない戦い方を考える必要がある。
「……まだまだヒヨッ子揃いだな」
姿が完全に消える直前に、三嶋は親が子の成長を期待するような温かい眼差しで天を仰いで、小さく苦笑した。
―――To Be Continued...―――
はじめまして、丸伊善[まるい・ぜん]と言います。
この度、自サイトで公開していた小説をもっと様々な人に読んでいただきたいと思い、小説投稿に至りました。色々と改善点などあると思いますので、是非忌憚ない意見をお願いしたいと思います。
このDivineForceシリーズ(略してDF)はここからが幕開けです。なので設定についてもまだまだ謎が残されています。これからも機を見て不定期連載していきますのでよろしくお願いします。