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春爆竹  作者: ゆるゆん。
21/27

全部、大嫌い。

誰も、私のことなんて、大事にしてくれない。

ママは私のことなんて、愛してない。


私がどんなにあの人に叩かれても、傷付くことを言われて泣いても、ママは見てないフリをして、仕事に行ってしまう。


泣いて泣いて、だんだん頭が痛くなってきて、そんな時、私は死ぬんだって思った。

暗い部屋で膝を抱えながら座って、静かに泣きながら死ぬんだ。

こんなに頭が痛いのは きっと重い病気で、それを知らないで あの人にひどいことされて死ぬんだ。


それを知ったママが、泣いて後悔すればいい。

助けてあげられなくてごめんねって、死んだ私にすがりついて泣けばいい。


私は自分のお葬式を想像しながら、泣きつかれて眠った。


でも、朝になれば目が覚めてしまった。

私はやっぱり生きていた。なんで?なんで生きてるの?

ママが愛してない私なんか、死んだって誰も悲しまないからいいのに。


頭の痛いのも治って、ただ腫れすぎた瞼だけが、昨日の涙を覚えていた。

こんな目、大嫌い。

ママにそっくりのこの目が大嫌い。


そんな時を繰り返してもなかなか死ねないって気付いたから、イライラして、ある日 自分で学校帰りにコンクリートの壁に足を力いっぱいぶつけてみた。

壁の角に当たった部分が線になって青く腫れ上がった。皮もむけた。


家に帰ったら今日は ママが夜勤明けでいるはず。


私はドキドキしながら、足に血を滲ませて家に向かった。

玄関を開けると手も洗わず、カバンも下ろさずにママの寝室に向かった。


心配して欲しい。


玲央かわいそうって、抱きしめて欲しい。


抱きしめて、髪をなでて欲しい。


ママ。いたいよ。


私がそう思ってドアを開けると、ママはあの人とベッドにいた。

いつもなら絶対に入らないけど、足の怪我を見て欲しかったから、血が出てたから、私はママに近づいた。


「ママ、足、怪我した」

祈るような気持ちで、私はママの肩に手をかけた。


目を開けたママはチラッと私を見て、すぐに寝返りを打って私に背を向けた。


「ママ」


お願い、痛いよ、痛い。助けて。 


「ママ!」

私はママの肩を揺すった。

涙がシーツにポタポタ落ちた。

ポタッ ポタッと涙が音をたてたけど、あの男の鼾でそれは聞こえなかった。

ママはそのまま、あの男にくっついて、寝息を立て始めた。ママは何も言わなかった。


でも、それだけで 私が世界中をだいっ嫌いになるのに 充分だった。


ママ、大嫌い。

そのママから産まれた自分、大嫌い。

ママがつけてくれた私の名前、大嫌い。


全部、大嫌い。


全部 なくなれ。消えろ。



その日から私は、自分が消えればいいと思うようになった。イライラや苦しさがどうしようもなくなると、発作的に、自分を傷つけるようになっていった。


でも、傷つけても傷つけても、心のザワザワが治まることはなかった。


大嫌い、と思ってママに冷たくすればする程、ママに追いかけて欲しくて たまらなくて泣いた。


ママ、どうしたら私を見てくれるの?

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