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春爆竹  作者: ゆるゆん。
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15/27

帰り道との出逢い

次の日、私たち家族は、不思議な人物と出会うことになる。


学校が休みの萌を連れて、家族3人で買い物に行った時の出来事だった。


私が1人トイレへ行き、用が終わって、手を洗っていると、隣の洗面台に、年配の女性がやってきた。

私は気にせず手を洗っていたが、ふと視線を感じて、顔を上げた。


鏡越しに、女性と目が合う。


化粧が異常に濃く、眉はつり上がっていて、口角が左にひどく歪んで…

目をそらすことが、出来なかった。

嫌な汗が出て、口が乾く。



『あなた、バラバラじゃあないの。』

女性は突然、そう言った。

笑うと、ますます唇が歪んだ。

背中に鳥肌が立つ。


すると、フイ、と踵を返し、彼女はトイレを出て行った。入り口で、私を迎えにきた萌と彼女がすれ違う。彼女は萌をジッと見つめると

『あら、まあ。そう。』

と納得した表情で、去って行った。



『ママ!?なにあの人!怖い!』

萌が私の腕にしがみつく。


『ね……怖いよね、なんなんだろ…』


嫌なモノを見た。そんな感じだった。

“バラバラ”って、どういう意味だろう?

まさか、私と萌のこと?

からだと心が、バラバラ?


『ママ、大丈夫?』

萌が心配して、私の目を覗き込んだ。


『うん、大丈夫、ビックリして』


ま、……いっか。


『ね~…』


『今日、アイス、食べる?』

萌はまた、私を覗き込む。今度は期待を込めたキラキラの目で。


『ヤスさん、なんて言うかな~?』

私は答える。


『萌、今日ストロベリーがいいなぁ~!ね?シングルでいいから。』


通路に出ると、本屋で立ち読みしているヤスさんが見えた。

萌が走り寄り、アイスに誘っている。

何度となくやりとりしたあと、ジャンケンが始まった。

『ジャンケンで萌が勝ったらアイス』 

ということにでもなったのだろう。

あいこ。

また、あいこ。


あ、萌がチョキで勝った!


よし、私はチョコミントにしよう。


『負けたね』

私が笑うと、


『いや~、萌強いな!』

と、ヤスさんも笑った。


3人で、アイスを食べて帰った。


今夜はチキンカレーだ。

チキンがほろほろに崩れるまで煮よう。

虎奈さんが、カレーの隠し味用にブレンドしてくれた、コーヒーの粉をほんの少し、入れる。


付け合わせに、バナナヨーグルト、アスパラのサラダ。アスパラの時期は、そろそろ終わりかな。


カレーライスの時に飲む麦茶って、どうしてあんなに、美味しいのかな?


キッチンの窓に、萌の姿の自分が映る。

また、あの女性のことを思い出してしまう。

嫌なモノは早く忘れてしまいたいのに、心のどこかに、引っかかったままだ。忘れてしまっていいのだろうか、と考えている自分が不思議だった。

あの女性が、なにか重要な鍵を握っているような、微かな期待が、そこにはあった。

胸がざわざわと、うるさかった。

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