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1.「相対する敵」

 人知れぬ某ビルの屋上にネオンの明かりに照らされた小さな影が一つ浮き出ていた。

 幼女然とした幼き小さな形を成す「それ」は、形を震える様に変え、不気味さを醸し出しながら生物の本能を刺激する程に嫌悪感を放ち、人間とは一線を画している。


「・・・ケケケッ。月は雲に隠れてるが人間達の言葉を借りるなら『今宵は良い夜だ』と言うのだろうなぁ」


 眼下に見据える煌々と光る出された町並みを見下しながら「それ」は日本語を吐き出した。どうやら驚く事に「それ」は人間の言葉を用いり、自身を人間と区別する知能まで有している様だ。

 行き成り「それ」は触手の様に関節が無くあらぬ方へ向く両手を掲げて叫ぶ。


「オレサマは此処だ! 出てきてくれやがれよ、敵!! 」


 ただの化け物とも一線を画す存在。現状の見解では「それ」に対する評価はそうなる。

 じゃあ、「それ」とは何なのか?

 また「それ」が呼ぶ敵とは何なのか?

 その答えは突如、現れた少女によって導き出される。

 



「参上してやったわよ! 「歪み」野郎!! 」




 瞬間移動はたまた時間停止の仕業か、空中から突如として現れた存在は棒状の何かを高速で思いっきり振り下ろし、「歪み」と呼び捨てた「それ」に叩きつけた。

 瞬間、見えない何かに弾かれて空間が揺れ、爆音が生じる。強烈にぶつかり片方の均衡が崩れたのか鼓膜をつんざく音から数秒後れて少女が「歪み」の後方、同じビルの屋上に片足を着きながら危なげも無く着地した。

 少女は顔を上げて視線を「歪み」の方へ見据えると、不意打ち気味からの渾身と言ってもいい一打を受けて無傷で立っている事を確認すると軽く舌打ちをする。


「ちっ! 丈夫なシールドね。でも、次は打ち破ってやるわ」

「クッカカカッ! 出来るのかぁ~ん、「魔法少女」ちゃんよ!? 」


 「魔法少女」と呼ばれた少し派手な格好の少女は、きつく相手を睨みながら先程の言葉を屈辱と採ったのか下唇を噛み、姿勢を陸上競技で使用するクラウチングスタートのポーズをとる。全身の筋肉と骨が軋み苦痛に表情が歪む代償として少女は必殺の一撃を見舞おうと姿勢をよりきつくした。


「ワタシは「魔法少女」なんて、ちゃちなモノじゃない! ワタシは・・・」


 ギチギチとしなる筋肉が限界に達する時、言葉を言い切る前に少女は踏み締めていた屋上の地面を抉り、対面する「歪み」の視界から一瞬の内に姿を消す。

 365度、死角のなど存在しない化け物の視界から簡単に抜け出した事により

 人間の目など軽く凌駕する化け物の視界が彼女の姿を捉えたのは、少女が自身を覆い守っていたシールドを手にしていた棒で突き破り、さながらガラスを割ったかの様に砕きながら、漸くと速度を殺され失速した瞬間だった。

 安全地帯を越えて自分の危険地帯である懐に踏み越えようとする少女の勇姿を見て、思わず化け物は声を上げて驚くという似合わない行為を無意識にとりながら声を響かす。

 しかし、声が響く事も叶わないままに少女と交差し、人間の心臓部位を貫通された。

 失速するも余りの爆発的な前進の勢いを足の裏でブレーキを掛けながら地面と足裏の間に火花を散らす。

 やっとの思いで止まると丁度、「魔法少女」と呼ばれた少女と「歪み」と呼ばれた少女の明確な敵は背中で対面。

 尚も不気味に揺れ動く「それ」は何にも反応せず、少女の方が先に振り返り先程に言っていた言葉の続きを口にする。


天才・・魔法少女よ! 」


 言葉が屋上に響き渡った瞬間、「歪み」は形を失い、風船の様に体を破裂させた。

 当然、中身は溢れ出し、辺りを赤く染まるかと思えば飛び散るのは血潮ではなく、雪の様に白い結晶体。

 少女はその光景を静かに見守り、自身も白く染まり出した頃。それは降り止んだのでその場に座り込む。

 心の中で「疲れた」とぼやきながらもこれは自分に課せられた使命だと納得し、此処まで来た時と同じ手段で自宅へと向かった。


 篠山芽衣。14歳。職業 天才魔法少女。

 異世界ユースティアの王アルフォンス・ヘイゼラ・ユースティアと契約してから二年後の姿。

 物語は此処から始まりを告げる。

 

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