不思議な人
俺、吉川経介ははっきり言って、普通ではない。俺がテストで100点を取ることは当たり前である。これ以上に退屈なものはない。他の者とは視点が違うこともわかっている。誰と会話をしていても、面白くもなんともないし、常に退屈なだけである。だが、あえて、下の視点に合わせることによって対話を成立させている。大体の人はそのやり方で成立するのだが、あの人だけは違った。月浦美咲。心が全く読めない。ミステリアス。それだけで俺の心をつかむには十分だった。心がどこにあるのかわからないような女の子。それが、月浦だった。話しかけても必要最低限の返事しかしない。俺はそんな彼女に徐々にひかれていった。月浦はよく図書室で、郷土史を読んでいた。その時だけは、どこか楽しそうな表情をしている。単に歴史が好きなだけだと思っていたが、星美神社のページをずっとずっと見ている。ある時彼女に話しかけてみた。
「なんで郷土史ばっかり見てるんだ?」
「どこか惹かれるんだ。この星美神社に。」
星美神社は、ここ星美町にある神社で、俺が通っている星美高校からはかなり近い距離にある。俺たち地元の人間は、なじみ深い神社で、秋になると星美祭と呼ばれる秋祭りが開催されたり、春になると、祈願祭と呼ばれる豊作を願う祭りが開催されたりする。だから、地元の人々に崇められ奉られている。月浦はこのときだけ自分から語ってくれた。祭神は、ここに住んでいた地元の百姓の月兵衛だそうで、日本全国探しても、一般の百姓が祀られている神社は稀有であるそう。しかし、新田開発などの実績もなく、なぜ祀られているのかは不明だそう。この話を語るときの彼女の顔は素敵な笑顔でより一層惹かれた。俺はそのとき、星美神社のことが不思議と気になり、今夜、行ってみることに決めた。
俺の家を出て徒歩約6分ほどで星美神社には着く。山陰の田舎の夜の道は背筋が凍るほど暗い。スマホのライトをつけようとしたが、寒さのせいで手がかじかんで、なかなかつかない。ほっと手に息を吹きかける。しかし、無駄なことだと分かっている。ジャンパーのポケットに手を突っ込みカイロで手を温める。そんなこんなで、星美神社に到着した。星美神社の鳥居に一礼しくぐると、星美神社の照明が俺を照らす。ここの管理は県がしているらしく、田舎には似つかわしくない、蛍光灯に目をくらます。ひどく寒いが、礼儀を忘れてはいけないと思い、柄杓を手に取り、手を清める。そのあと、郷土史に書いてあったことを一つずつ検証しようと思い、神社を回った。寄付者奉名板と呼ばれる神社に寄付した人がずらっと書かれている板を見る。墨が滲んでいたり、一部寄付者の名前が消えていたりと、歴史を感じさせられるものであった。俺の曽祖父や祖父も寄付したと小さいころに聞いた。左から一つずつ確認していく。高見権右衛門、松浦義右衛門、徳永隆... あ!あった!そこには、俺の曽祖父である吉川経高、祖父である吉川経邦が記載されていた。また、その隣には月浦姓の名前がずらっとあった。これを見ると、月浦はここの人なんだろうなと考察できる。俺は、父から先祖は落武者でこの村に逃げてきたと聞いている。一人、一人、名前を確認していくと、墨と埃で滲み月浦〇〇と見えない名前がある。しかし、自然な滲み方ではなく、人為的な滲み方をしていた。まるで不都合が塗りつぶし隠されたような。埃を払う。すると突然、バチっという音とともに、頭上の光が失われた。一瞬のうちに視界が暗くなり、突如深い闇に包まれた。心拍が速くなる。なんだ...?停電か...?いや、雷鳴もないのになぜ停電だ...?とりあえず探り探りに歩いてみよう...っ...!まずい!足を踏み外した!!!くっ!痛っ!頭を打ってしまい、それと同時に白い光に包まれた。




