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ゾンビ化した君と夜の世界を廻る  作者: 中川謳歌
第1章

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リンドさん、石碑に手を合わせる

次の町はヤーガンを目指すが、その前に前回の大魔の渦の発生場所に行く。発生場所は石碑が建てられ、当時一番近くにあった小さな町が大きな被害に遭い潰れたそうだ。前にベガーさんに教えてもらった道を暗い中歩いて行く。クウは鞄に入れ揺れが気持ちいいのかウトウトしている。


最初の休憩でクウカイで貰ったカツサンドを食べる。


「冷めても美味しいな」


「このタレがいいですよね」


クウは硬いパンにミルクを浸したものをあげる。再び出発し今度は平坦な道から山道になる。険しい山をずっと登り進めていく。


「この道具屋で買った靴の保護剤いいよな」


山道で足は疲れるけど指が痛くならなくてとても良い商品だと思う。成分は嫌だけど。


魔物はベアコイル二体が襲い掛かってきたので倒した。変にベアコイルの肉を持つと他のベアコイルが寄ってきそうなので魔石だけ取って他はそのままにしておいた。


休みながら山頂を目指す。


「ようやく着いたな」


山頂で景色を眺めるが暗くてよく分からない。周辺は何もなくただ石碑がポツンと立っていた。近づいてみると


“1325年 大魔の渦発生場所 騎士団第三部隊 ヤーコス町民 犠牲者 525名 ここに眠る”


「昔、山の麓にヤーコスっていう小さな町があったんだ。当時は文献があまりなく大魔の渦について警戒していなくて。ここで渦が発生して、多くの魔物が町に流れ込んで町が壊滅したんだ。俺と仲良かった第三部隊のやつも犠牲になってな」


リンドさんは表情が見えないものの哀愁を漂わせていた。石碑の前に途中で摘んできた花を置き手を合わせる。リンドさんは、しばらく石碑を眺めていた。


「さて、ヤーガンに行きますか」


石碑があった山を下山する。五日間休みながら歩き続ける。しばらく歩くとヤーガンが見えてきた。ヤーガンは見る限りではラップルより小さな町のようだ。門番は真夜中にねずみの被り物をしたリンドさんを見て驚いていた。


「君たちはラップルから?」


門番が話しかけてきた。


「はい」


「すごく小さな町だから宿がまだ開いてなくて。日の出前ぐらいには開くと思うけど」


困ったな。町のどこかで時間を潰そうかと思っていたら開いているお店はないそうだ。


「そこの旅のお方はお困り事かい?」


「バタール様。この冒険者はラップルから来て宿が閉まっていて困っているところです」


「そうか。僕はタフネル・バタールと申します。この町の領主をしています。小さな町だから領主って胸を張れないけどね。よかったら僕の家で宿が開くまでお話をしないかい?僕、早く目が覚めちゃって散歩しているんだ」


お言葉に甘えてバタールさんの家にお邪魔することになった。


「みんな寝てるからね」


バタールさんがお茶を入れてくれた。


「この町は小さくてね。情報が入ってこなくて商人や警備隊の人に収集してもらってて。積極的に色んな人から話を聞いてるんだよ。ラップルは色々あって物騒じゃなかった?」


私達はラップルの出来事を話す。


「アカギリはやられたのか。最近ちょこちょこ悪事は耳にはしていたよ。アカギリはセルトリア公爵と繋がっていてね。今、裏で悪事など色々手を出して資金を集めているみたいだよ。隣接している領主は非常に迷惑をしているよ。セルトリア公爵は膨大な権力を持っているからあまり言える人が少なくて。今回のアカギリが襲撃されたのならセルトリア公爵が関与しているだろうね。君達はあまり関わらない方がいいよ」


「王家はセルトリア公爵に対して何もしないのですか?」


リンドさんが尋ねる。


「よく思っていないと思う。今、王家派、中立派、反王家派の派閥がいてそのバランスが難しいところなんだ。もう少しで大魔の渦も来ると言われているし。注視している感じなのかな」


バタールさんが言うには大魔の渦の後で反王家派が反乱を起こさないように今は反王家派を刺激しないようにしているのだと。難しいな。


「君達の旅の目的は何だい?」


「大魔の渦について調べる旅をしています」


「そうか。大魔の渦なら隣町のライトネルに行くといい。図書館があるし、滅多にお目にかかれないけどライトネル領主なら古くから領主を務めている家系だし、何か知っているかもしれない。まあここだけの話、女豹と言われるぐらい強いお方だ。 会われる機会があれば気を引き締めた方がいい」


バタールさんと世間話をし、気がつくと窓の外は薄暗くなってきた。


「君達とお話ができて楽しかったよ。若いもんとお話できるっていいものだ。最近、町でギャラスっていう男がうろついているから気をつけた方がいいぞ。厄介なのがライトネルに住む子爵の息子なんだ。貴族だからと言ってこの町で好き放題してるんだ。特ににミーナさんみたいな綺麗な女性は気をつけた方がいい」


バタールさんに礼を言って宿に行く。宿は開いていたのでリンドさんとは別の部屋を取りクウと一緒に眠る。お昼過ぎには目を覚ましたが、この町に変な男がうろついてるとのことなのでクウと部屋で過ごす。夕食前にリンドさんが起きてきた。この宿は宿泊者に普通に食事を提供しているが、夕食だけはごはん処として解放している。夕食のメニューはパンとクリームパスタとサラダだ。クウに冷ましたクリームパスタをあげると美味しそうに勢いよく食べていた。クリームパスタは鶏肉がゴロッと入っていてまろやかでコクのある味付けで美味しい。特にパンが香ばしくて美味しかった。リンドさんとクウとお話ししながら食べていると一人の男とよく視線が合う。私の自意識過剰かもしれないが気持ちが悪い。食事を終え、リンドさんにさっきの男のことを伝える。


「それは気味が悪いな。さっさとこの街を出よう」


明日食料を買って出発することにした。

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