アカギリ拠点捜索〜レクト視点〜
サーマンの孤児院襲撃で裏で糸を引く人がいるか調査をしている時、乱暴にドアが開いた。
「レクトさん、ラップルで事件が」
サーマン騎士団長のニコルイさんが入ってきた。ラップルといえばミーナさん達がいる所だ。
「何があったんですか?」
「リンドさん達とラップルのギルマス達でアカギリと言う密猟者のアジトを襲撃して倒したそうです」
ミーナさん達が無事だと聞いてホッとした。
「アカギリは子供達も誘拐していたみたいで、ほとんどがサーマンからとのことです」
「なに!」
これは孤児院襲撃と深く関わりがありそうだな。
「ラップルは設備が整っていないのでアカギリと子供達はそれぞれ馬車にのせてこちらに向かわせています。アジトは洞窟を使ってますが、リトリアにも建物を所有しているそうです。リトリアに行かれますか?」
トマットとランデルを招集しリトリア行きを決めた。
「リトリアかぁ。セルトリア公爵が関わってないといいけどな」
「トマット、縁起でもないことを言うな」と、ランデルが叱責した。三人でポニソンに乗って駆け足でリトリアに向かう。サーマンの騎士団はリトリアは管轄外なので、サーマンの騎士団がアカギリの取り調べをし、自由に行き来できる僕達がリトリアに行くことになった。三日間休み休みでポニソンを走らせリトリアに着いた。
この町は外観は綺麗だが大通りを外れると危険なヤツがうろついている。リトリアの冒険者ギルドに行き詳しい町の地図を購入。まだ開店していないバーに行く。ドアノックを五回するとドアの鍵が開く。
「今日は何を買われますか?」
四十代のバーの店員が出てくる。ここはバーに見せかけた情報屋だ。事件を調査する時にたまに使っている。
「アカギリについてだ。所有の建物と他に裏で誰が糸を引いてるのかを知りたい」
「あなた様が聞き出すってことはアカギリは…。まあ奴らは利益主義で詰めが甘すぎますからね。所有の建物は…」
さっき買った地図を出した。
「ここですね」情報屋は地図に印をつけた。
「裏で糸を引いているのはセルトリア公爵で、餌をちらつかせているのはあの方でしょう」
「あの方かぁ」
貴族に権力…とても厄介だ。情報屋にお金を支払い、店を出る。
「今から行くか」
ポニソンに乗ってアカギリの所有する建物に向かう。建物に近づくにつれ周辺が騒がしい。
「レクトあれ !」
ランデルが指をさす方向を見ると火事になっている。もしや !急いで建物に近づくと、アカギリ所有の建物だ。
「クソ。先を越されたか」
建物の一部が燃えていた。
「誰か水魔法を使える人はいませんか」
火事に町の騎士団や警備隊が到着する。水魔法が使える騎士団員や近くにいた町の人の協力で火は鎮火した。火事で半壊した建物は規制をかけられる。騎士団員に王国職員の紋章を見せる。
「これは…中にお入りください」
人身売買の取引の関係などの資料を探したが燃えて何もなかった。燃え方もあまりにも不自然で誰かが燃やして証拠隠滅をしたのだろうな。聞き込みをしても放火をした人を誰も見ていなかった。
今から急遽サーマンに戻る事になった。トマットとランデルが食料品店で保存食を買いに行き、急いでサーマンに行く。今頃、誘拐された子供達やアカギリのメンバーがそれぞれ馬車で護送されているだろう。何もなければいいが。サーマンに向け走っていると途中、騎士団の早馬とすれ違った。
「レクトさん、アカギリが護送中襲われました。今から急いでサーマンに戻ってください」
早馬で知らせに来た騎士団員と共に急いでサーマンへ向かう。町に着き、すぐサーマンの騎士団本部へ出向く。
「ニコルイさん、戻りました」
ニコルイさんは静かに目を閉じていた。ニコルイさんからの話によるとラップルからサーマンに誘拐された子供達とアカギリを馬車で護送中に何者かに襲撃を受けたそうだ。子供達を乗せた馬車は逃げ切ったが、アカギリを乗せた馬車や馬車に付き添った騎士団員は全滅だそうだ。
「なんてことだ…」
衝撃の出来事に言葉を失う。襲撃した犯人は五人組で生き残った騎士団員は子供達と馬車で逃げるのに精一杯で襲撃者の特徴など分からないそうだ。馬車は周りから見えず正確に襲撃をするなんて。この一連のことをずっと監視していた者か町の警備隊や騎士団に内通者がいるかのどちらかだろうな。




