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ゾンビ化した君と夜の世界を廻る  作者: 中川謳歌
第1章

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山の魔物と対決

次は冒険者ギルドに行き掲示板を確認する。すると急募で山菜採りの護衛の依頼があった。冒険者クラスがC級またはD級が2人以上。


「この町で冒険者ランクCとかなかなかいないだろうな」


急募と書かれてあったので困っているのだろう。ギルドで詳しく話を聞いてみることにした。


「これはですね、山の幸 クウカイさんからの依頼なんですよ」


話によるとこの大魔の渦の影響でラップルの山の魔物が凶暴化して山菜を取るにも一苦労だとか。少し前まではマキシルさんが手伝って一緒に山菜や山の魔物の狩りに行っていたが今回の犯罪グループの件でマキシルさんが行けずにお店の人は困っているみたいだ。


「クウカイのお店は俺達が夕食でお世話になっている店だな。行ってみるか?」


とりあえず、この依頼を受けることにした。この依頼書を持って山の幸 クウカイに出向く。


「いらっしゃいませ。今日は依頼の件で?ありがとうございます。奥の個室にどうぞ。店主を呼んできます」


店内は今日も多くのお客さんで賑わっていた。席に座ると店主がやってきた。六十代ぐらいの職人気質に見える風貌をしている。


「すみません。お仕事中に」


「いいえ。僕はランボと言います。急にマキシル君が行けなくなって困ってたんだよ。 お店で使う山菜がもう少なくなってきてね。助かったよ」


「あの、僕が日光がダメな体質で。山菜採りが日没後になるのですが大丈夫ですか?」


「えっ。夜かぁ」


ランボさんは腕を組みながら考える。


「まぁこの町にに腕の立つ冒険者はなかなかおらんしお願いしてみるか」


明日のお店の営業終了後に行くことになった。


「山の魔物はどういうものがいるんだ?」


「前、私達が食べた猪の魔物のイノガーや熊の魔物のベアコイルがいます」


昔は山に住んでいる魔物と遭遇しても魔物が逃げていたようだが、今となっては個体によっては向かってくるそうだ。イノガーやベアコイルなんて体長が2mあり、とてつもなくパワーがあって戦うとなるととても恐ろしい。


ーーーーーーー

ーーーーー

ーーーー


翌日、クウカイの営業終了後、ランボさんとお店の前で待ち合わせる。


「お待たせしました」


ランボさんが、手にはランタンと鎌を持ちカゴを背負って現れた。


ブワワワワン…ブワワワワン


ランボさんから不思議な音がする。


「これは何の音ですか?」


「これは山の魔物除けの音だよ。今は凶暴化しているからどのくらい効くか分からんけど。夜の山は初めてだから緊張するな」


私達は前回の山では虫の魔物に苦戦をした為、虫の魔物の魔除けをつけている。独特な香の香りがする。魔物と出会わないといいな。


前にリンドさん、真ん中にランボさん、後方に私と大きめの肩掛けカバンにクウを入れて歩く。リンドさんが杖に明かりを灯し私はランボさんと自分とクウにガードの魔法をかける。夜道なので見えづらい。ランボさんの勘を頼りに進んでいく。


「夜の道は不気味だな」ランボさんがつぶやく。暗く遠くの方から遠吠えやカサカサした音が聞こえる。ランボさんは立ち止まりランタンを下げ植物に光を当てていく。


「山菜あったぞ。今から取るから一時の間待ってくれ」


リンドさんは気を聞かせて杖の明かりを強くし周辺は明るくなる。


「ありがとう。これでだいぶ見えるぞ」


ランボさんは次々に採っていく。山菜だけではなく近くにあったきのこなど採っていた。カゴはだいぶいっぱいになってきた。


「おかげさまで だいぶ採れました」


「じゃあ今から帰り…」「ブオオオオ」


「「!?」」


声がする方を見るとイノガーがこちらを見て前足を地面に掻いていた。すぐリンドさんに突進してきて避けるとイノガーは木にぶつかる


“ドドン”


木は真っ二つに割れ倒れた。


「すごいパワーだな」


木にぶつかっても構わずこちらに向き変える。リンドさんはすぐに魔法唱え土の手を出す。複数の土の手がイノガーの体に巻き付く。


ブオオオオ


イノガーは必死に暴れまわり抵抗している。


「なかなか手強いな」


リンドさんが土の手を増やし土の手で全身をぐるぐる巻きにしてなんとかイノガーを倒した。


「こんなのとまた出会いたくないな。急いで帰ろう」


下山途中、私達の背後がずっとカサカサと音がする。少し離れたところでリンドさんが土の手を音のするところに近づける。するとベアコイルが現れた。


「べ…ベアコイルじゃあ!」


ランボさんがベアコイルを見て尻もちをついて驚く。


倒したイノガーを獲物と見てるのかよだれを垂らしながらこちらに近づいて来る。リンドさんは魔法の土の手で攻撃を仕掛けるがベアコイルが手を振り払うと土の手が壊れる。


「何というパワーだ」


土の手を何度も出すがベアコイルは壊していく。


「ミーナ、炎の玉をセットしてくれ」


私はマジカル弾にセットする。リンドさんの魔法でベアコイルが立っている地面に深い穴を空け下に落とす。ベアコイルは必至に上に登ろうともがいていた。


「ランボさん、今から撃つマジカル弾の弾は眩しいので目をつぶっててください」


リンドさんは小声で魔法を唱える。炎のマジカル弾に合わせ魔法も同時に発動する。穴に落ちているベアコイルは凄まじい炎の魔法で倒れた。


「えっ?これミーナさんのマジカル弾で?」


「そうなんです」


嘘だけど笑って誤魔化した。ランボさんはマジカル弾の威力に驚いていた。二種類の魔法の使用が知られると厄介なことを知っている為リンドさんに合わせた。多分、マキシルさんあたりにはこの嘘は通用しないけど。


帰る途中、またベアコイルに出会う。よだれを垂らしているので倒したイノガーの匂いがするのだろうか?さっきと同じ手法でベアコイルを倒す。イノガーが一体とベアコイル二体を土の手で持ち下山する。


「マキシルさんは毎回こんなことをしてすごいですね」


「日中だからこんなに強い魔物としょっちゅう出会わないよ。剣と雷の魔法を組み合わせて苦戦しながら戦っているよ」


町の近くに着いた。もう日の出前だった。門に近づくと門番に腰を抜かして驚かれた。確かに大型魔物を土の手で持ってる姿は恐怖だもんね。お店に着くと、ランボさんの帰りを待っていた奥さんがいた。


「これって…」


奥さんは目を丸くして驚く。


「山菜取りにおまけがついてな」


ランボさんはお店に入り、紙と袋に入ったお金を持ってきた。


「今日は本当にありがとう。魔物分を上乗せしとくよ。これ依頼完了のサインな。また山菜取りが大丈夫だったらお願いな」


お店の前でランボさんと別れた。


「山の魔物強かったな」


「そうですね。私達が美味しくクウカイで食べれるのは、山の恵とお店の人そしてマキシルさんのおかげなんですよね」


「ありがたいな」「クウ」



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