靴の保護剤はトラウマのアレだった
目を覚ますとお昼だった。テントから出ると洞窟にいた子供達は起きていた。子供達や現場にいる騎士団員達にパンが支給されている。近くにいるケロリーさんと目が合う。
「今回は密猟者襲撃に携わってくれてありがとう。ミーナさん達のおかげで多くの人が助かりました。よかったらパンをどうぞ」
「これは私が貰っても大丈夫ですか?」
「これはラップルから支給されたものです。ミーナさんも魔法を使ってお疲れでしょう。どうぞ」
ケロリーさんに促されて固いパンを貰う。どこで食べようかと迷っていると
「ミーナさん、こっちで一緒に食べましょう」
マキシルさんが大声で手招いた。マキシルさんとアジト襲撃で一緒だった人達でパンを食べて休憩していた。
「今回は本当にありがとう。ミーナさん達の大活躍で助かったよ」マキシルさんや周りにいる人達からお礼を言われた。
「それよりリンドさんはすごいな。俺が見る限り、まだ余力があって相当強いぞ。さっきの敵なんかまさに蟻地獄の蟻だったな。ハハハハハ」
昔の魔法騎士団長なんて言えないが、私達が思っている以上に強いと思う。リンドさんの事を色々聞かれたが笑ってごまかしながらその場をやり過ごした。
話は変わり話題は密猟者の犯罪グループになった。今回の密猟者達はここ最近勢いのある若手の犯罪グループだそう。洞窟にいた子供達に聞き込みをすると多くの子供達はサーマンから連れ去られたそうだ。今、犯罪グループの資金や資料を押収しているらしく、孤児院襲撃の件に関与しているか調査中だそうだ。また表彰があるかもしれないのでしばらく滞在することになった。
日没前リンドさんが起きてくる。
「何か進展はあった?」
リンドさんが新種の魔物だと間違えられたことは伏せておく。マキシルさんと話したことを伝える。
私達は騎士団のご厚意で馬車でラップルまで送ってもらえることになった。町に戻り宿に宿泊延長をお願いしに行った。その後、冒険者ギルドでクウを預かってもらっていたので迎えに行く。
「ミーナ・ルポルテです。クウを預かって頂きありがとうございます」
受付の女性は部屋の奥からクウを連れてきた。私達を見るなり尻尾を大きく振っていた。
「クウちゃん、とてもお利口でしたよ。可愛くて職員みんなで癒されていました」
ギルドを出て宿に戻る。今日は宿の夕食はなし。出発のため買っておいた保存食を部屋で食べることに。クウはパンに牛乳入れてふやかしたものをあげる。明日は登山用の靴を見て、それから冒険者ギルドで依頼を見てみようということになった。
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「いらっしゃい。靴を探してるのかい?」
翌日の日没前、登山用の靴を探しにお店へ。道具屋なのであまり品揃えは少ない。
「あの、この靴のもう少し大きいサイズはないですか?」
私は良さげな大きさの靴はあったが、リンドさんはなかなか合うサイズがない。
「すまんね。今、出ているだけだよ。靴の保護剤を靴の中に貼ると靴擦れ防止に良いよ。試しに貼ってみる?」
「お願いします」
私達はこの黄緑色のスライムみたいな靴の保護剤を靴に入れて履いてみる。スライムみたいな柔らかさが程よく足になじみ登山じゃなくても長距離移動にも良さそう。お店のおばあさんに白い粘着のあるスライムみたいなものも渡される。
「これは滑り止め剤じゃよ。靴の裏に貼ると滑り止めになって、険しい道でも良いよ」
滑り止め剤も靴の裏に貼ってみる。ほどよく靴の裏に粘着があって険しい道や登山に良さそう。
「両方ともいいな」リンドさんは使い心地に感心してた。
「この靴の保護剤の黄緑色はなダダンボーの液体を固めたもの。滑り止め剤の白いものはイトムシの糸を固めたものじゃ」
お店のおばあさんの発言に私達は固まった。あのトラウマのある虫の魔物が使われているなんて。便利なものだけど一気に使いづらくなった。おばあさん、材料は言って欲しくなかったな。結局、私の登山用の靴と靴の保護剤、滑り止め剤をそれぞれ買った。これらは気分的には使いたくないが便利だし無臭だし使うことに決めた。




