敵のアジト襲撃
ラップルに応援要請をしている間、マキシルさん達と作戦を練る。「これはどうかな?」と、リンドさんが案を出す。
リンドさんの案はまず、さっき捕らえた敵の馬車に私達が乗り込む。洞窟まで近づき、見張りを馬車の荷台まで誘導。マキシルさんの雷魔法で見張りを失神させる。それから私ががマジカル弾の眠りの弾を洞窟に撃ち、リンドさんが土魔法で洞窟の入り口を塞ぎ敵の出方を見る案だ。
「その作戦なら眠りの弾で戦う人数が減りそうだな」
マキシルさんや他の人達も賛同しその計画に決まった。念のためその洞窟に他の出入り口がないか、敵に気づかれないように何人かに分かれ調査した。
「他の出入り口はなさそうです」
いよいよ計画を実行する。さっき捕らえた敵の身ぐるみを剥がし、体型が似た騎士団員がその服を着て御者に成りすます。馬車の荷台の中は私とリンドさん、マキシルさんが待機。他の仲間は少し離れたところで待機した。
「よし行くぞ!」
マキシルさんの掛け声で馬車は出発する。馬車は計画通り見張りの横につけた。
「チャーチ、お疲れ様。えっ、おまえ誰?」
「すみません。チャーチさんは魔物を捕獲する際に怪我をしちゃって。荷台で横になっています。他の人も怪我をしてしまって。チャーチさん達をアジトまで運んで頂けますか?」
「おう。いいぜ」
見張り役の男達が荷台の扉を開けた瞬間、
ビリビリビリビリ
二人の男性は白目を剥き倒れ、マキシルさんは男達を捕縛する。私とリンドさんはすぐ荷台から降り、私はマジカル弾を撃つ。すぐさまリンドさんは土魔法で洞窟の入り口を塞いだ。
「マキシルさん念のために…」リンドさんはコソコソとマキシルさんに耳打ちをする。私達は何があっても対処出来るように入り口から少し離れた場所に立つ。全員眠ってくれたらありがたいけど。そう願いながら入り口を見つめる。
ドーーーーーーン
願いは叶わず、リンドさんの土の壁が勢いよく壊れた。辺りは土埃が立ち、入り口付近では視界が悪くなっている。
「誰だ!アジトに変な土の壁を作ったやつ。出てこい」
土埃で姿が見えにくいが怒り狂った男の怒号が聞こえる。
「俺様を怒らすと命がないものと…」
ビリビリビリビリ
声の主はどうやら感電したみたい。土の壁の外に雷魔法をマキシルさんが張ったみたい。さっきリンドさんが耳打ちしていた事とはこのことか。
「くっ……クソ野郎!許さないぞ」
「ほう。雷魔法で失神しないとは」
リンドさんは感心していた。土埃は消え、敵の姿が見えた。二十代の赤髪を後ろで一つに束ねている男。殺気立ってこちらを睨みつけている。
「ねずみの被り物とかふざけてるだろ。お前らを許さん。ウィンド・ブレード」
刃物のような鋭い風がこちらに向かってきた。リンドさんは魔法で土の壁を何層も出し防ぐ。
「風属性の魔法使いか。なかなかの使い手だな」
「そこのねずみやるな。じゃあこれはどうかな?ストーム」
大きな暴風がこちらに向かってくる。リンドさんは何層もの土の壁を出し防いでいるが壊されていき心もとない。風は少し進路を変え、私の所にやってきた。
「ミーナ、ガードの魔法だ」
リンドさんの土の壁でぶつかった暴風は弱まり私のガードの魔法ではじき返した。
「むむむ」敵は顔を赤くしこちらを睨みつける。今度はリンドさんが土の手を複数出して敵に攻撃を仕掛ける。敵は暴風を身にまとわせ土の手を弾き返す。
「土魔法の使い手か。この土の手はしつこいな」
リンドさんと男の攻防が一時続いた。
「もうアジトに変な眠りの魔法をかけたのは誰?危うく私も眠ってしまうところだったわ 」
目を擦りながら女が出てきた。
「ラメンヌ、加勢してくれ 」
「しょうがないわね」
女は怪しく笑った。ラメンヌという女は黒髪のウェーブのかかった長髪で妖艶な色気がある。私は女に警戒しマキシルさんまでの範囲でカードの魔法をかける。
「フラッグ・フォッグ」女は魔法を唱えた。女から黒い霧が出てきて、私達周辺に黒い霧が覆う。これでは周りが見えない。
「下手に動けないな」マキシルさんが嘆く。
見えるのはカード内のマキシルさんだけ。辺りは見えず赤髪の男とリンドさんとの攻防の音だけが聞こえる。こちらにも風魔法が来るが、ただガードの魔法でその場に止まるしかなかった。
「あのねずみ霧で見えないのによく戦えるな」
「ふふふ。まあ、私の魔法でさらに戦えなくなるわ。ブラック・ニードル」
黒い針が雨のように降ってくる。
「リンドさん、大丈夫ですか?」
「おう。土魔法でなんとか。暗くて見えねえし、二人同時の攻撃とかちょっとキツイな。今から一気に畳み掛ける。その場を動くな」
リンドさんが魔法を唱えると地鳴りがした。
「何だこれは」
突然の地面の揺れにマキシルさんと目を合わせる。敵の二人も想定外の揺れに動揺している。しばらくすると揺れは収まった。周りはまだ霧で暗く黒い針が降り続いている。
「ウィンド・ブレード」
「さっきからねずみの場所に魔法を撃っても当たった感覚がないんだ。ただ通り過ぎる感じで」
「避けているだけじゃないの?」
男は何発も風の魔法を撃つ。相手もこちらの状況が分からないため、色々な箇所に撃ち続ける。私は風の魔法をガードしていく。このままだと厳しいな。
「ねずみは反撃しないし、どうしたんだ?」
しばらくすると黒い霧は薄まっていき、周囲が少し見えるようになってきた。リンドさんの方を見ると誰もいない。辺りを見渡しても空を見ても何もない。
「ラメンヌが倒したか?」
「いやいや。倒しているんだったらねずみが倒れているはずだし、分からないわ」
敵味方もリンドさんの行方が分からず。この分からない状況に固まっていた。




