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ゾンビ化した君と夜の世界を廻る  作者: 中川謳歌
第1章

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表彰式とパーティー

「表彰。リンド・ロール殿。この度、孤児院での襲撃で子供たちの安全を守り犯人確保という素晴らしい功績を収められました。よってここに感謝の意を表し記念品を贈り表彰します」


私とリンドさんは今、サーマン領主の屋敷で表彰されている。この王国では何らかの地域貢献や功績を残した人に対して領主からメダルが授与される。メダルが授与されると冒険者カードに表彰の記載が乗り、依頼の幅が増えたり個人案件で仕事が舞い込んできたりすることもある。私たちは無事に表彰式を終えパーティー会場へ行こうとすると、サーマン領主がこちらにやってきた。


「改めましてかな?サーマン領主オルガー・モルトリートと申します。少し時間をもらえるかな?」


領主様は40代ぐらいのにこやかで優しそうな男性。オルガーさんに応接室に案内された。



「孤児院襲撃の件ですが。最近行方不明者が続いていて困っていたんですよ。実はね、領主案件で一部の人に依頼出していて。犯人確保ということで報酬の一部だけど銀貨30枚をお渡しします」


残高が気になりだしたこの頃。銀貨30枚なんてありがたい。私は心の中でガッツポーズをした。


「僕はまだ犯罪グループに上がいると睨んでますよ。とりあえず、サーマンの冒険者ギルドマスターに渡しておくからいつでも取りに来てね」


応接室を後にしてパーティー会場へ向かった。パーティー会場は表彰式とは別室で行われる。中に入ると立食形式ですでに何人か来ていた。


「ミーナさん、リンドさん」


レクトさん達も来ていた。レクトさんたちは王国の職員のためメダル授与はないらしい。他にもポーリーさん夫妻なども来ていた。他愛のない話をしていると、主催者のサーマン領主が入ってきて挨拶が始まり乾杯となった。


レクトさん達と食事をとりながらお話をしていると他の人に挨拶回りを終えたサーマン領主がやってきた。


「僕も一緒にまぜてもらってもいいかな?」


領主のモルトリートさんも一緒に食事を取りながら世間話に。


「ミーナさんとリンドさんはいつ頃までここに?」


「一週間以内には出ようと思っています。ライネルを目指していて、次はラップルに行きます」


「ラップルかあ。実は僕ラップルと領主を兼任しているんだよ。前の領主が体調崩されて、あまりにも田舎だから誰もやりたがらなくて兼任しているんだ。何かあったら言ってね」


聞けばラップルは相当な田舎でお店も少ないらしい。ここを旅立つ前に色々買った方が良さそうだ。


パーティーを終え部屋に戻る。


「ちょっとこっちに来てくれないか?」


リンドさんに呼ばれ席に座る。テーブル越しのリンドさんはなぜか緊張している。何かあったのか。いつもと違うリンドさんに心配になる。


「もう少しで俺らパーティーを組んでから一ヶ月近く経つじゃねえか。それでミーナはどう考えてる?」


「……!?」


すっかり忘れていた。確かパーティー結成の時、お試しで一ヶ月組むという話だった。リンドさんと一緒が当たり前すぎて頭から離れていた。


「こっ…このまま一緒に冒険を続けていきたいです」


「はあ。よかった」


リンドさんは自分がゾンビ化をしていて、夜しか行動できないことに負い目を感じて不安だったとか。


「っていうか、今、忘れてたって顔をしていたよな?」


「えっ?」


核心を突かれ目が泳ぐ。


「この!人が心配してたっていうのに」


「ごめんなさーい」


まあ、こんな感じだけどまだまだ冒険を続けられたらいいな。

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