恐い一面を見た気がする
宿に戻る途中
「そこの姉ちゃん、俺らと一緒に遊ばない?」
振り向くと見知らぬ男が三人。ニヤつきながら立っていた。
「やっぱり男の方はねずみの被り物っすよ」
と小柄な男が話すと
「どんなセンスをしてるんだか」
リーダー格であろう小太りのガタイいい男がケタケタと笑いながらリンドさんのねずみの被り物をバカにした。
「あなたたち失礼ですよ!こんなやつ置いて行きましょう!リンドさん」
リンドさんの手を取り歩く。
「変なねずみより、俺らの方が楽しいって」
もう一人のひょろっとした男が私の腕を掴んでしつこく絡んできた。
(気持ち悪い……)
ここは仕方なくガードの魔法をかけようと思った時、リンドさんが小声で何かをつぶやく。ドスンと音がして、そこに目をやると男たち三人が転んでいた。
男たちはすぐに起き上がり、こっちに向かおうとするが足元の土が隆起し、再び転んだ。
「ミーナ、今のうちに行くぞ!」
男達から離れるため、リンドさんと走る。
「おい!何すんだよ!うわっ」
「逃げるな!わぁ」
「どうにか…いてっ」
男達の悲痛な叫び声が聞こえた。
気になり走りながら後ろを向くと、男たちは立ち上がると同時に土が盛り上がりバランスを崩し再びこけるの繰り返し。時折、リンドさんがつぶやきながら指を動かしているので、きっとリンドさんの魔法だろう。
「まるで、ずっこけトリオだな」
リンドさんはほくそ笑む。
男達から見えなくなったので、再び歩き出した。
「リンドさん、ありがとうございます。土魔法も使えるんですね」
「それは王族だからな。火と土の魔法が使えるよ。生前は第二部隊の魔法騎士団長まで上り詰めたよ」
この世の中で、二属性の魔法を使えるのは王族、または王族と血縁関係がある者。あとは稀に生まれるぐらい。それにしても魔法騎士団長だなんて。恐るべし。今後、リンドさんをあまり刺激しないでおこう。
「あんなやつ、やろうと思えば丸焼きだってできるぞ。あははは」
えっと…それ犯罪ですよ。横目でチラリとリンドさんを見る。表情は分からないが、きっと恐ろしい事を考えているだろう。この時、リンドさんに対する危険度が急激に高まった。
あの三人組、あの後どうなったんだろう?自業自得だけど、ちょっぴり可哀想に思えた。




