表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/35

【18】盛大な勘違い/幕間

「今日は本当にびっくりしたわ。まさかシスターが、レイとのリハビリまで嫌がるなんて……!」

ミモザはテーブルに肘をついて、がっくりとうなだれていた。テーブルに置いたワインのグラスを見つめて、頭の痛そうな顔をしている。


「本当ね……。せっかく、少しずつイイ仲になってきたと思っていたのに」

「王太子殿下が来たとき、しくちゃったなぁ……」

ローゼルとアニスも、ワインを飲みつつ重たい溜息をついた。


彼女たち3人組は今、ミモザの部屋で女子会の真っ最中である。仕事後に誰かの部屋に集まってよく晩酌するのだが、今日の女子会は気分が重い。重い理由はもちろん、エルダがラファエルと距離を置こうとしたからだ。


ちなみにミモザたちは、本人のいないところでは昔と変わらず『シスター』、『レイ』と呼んでいる。


王太子が訪問した際に自分たちがしでかしてしまった『ミス』を、彼女たちは包み隠さずラファエルに報告していた。エルダとの約束を違えることにはなってしまったが、報告しない訳にはいかない。ラファエルに情報共有しておかないと、エルダとの関係性に深刻な問題が生じかねないからだ。


「そりゃシスターの気持ちも分かるわよ……自分の承諾もなしに、勝手に結婚式の準備まで進められてたらショックよね」

「あのときシスター、泣いてたよね。全然嬉しそうじゃなかったし、やっぱりレイと結婚するのは嫌なのかなぁ」


うーん……。と、ミモザは難しい顔で首を傾げた。

「でも、嫌いって訳でもないんじゃない? だって本当に嫌だったら、はっきり拒否すると思うのよね。『聞かなかったことにする』っていう反応が、イマイチよく分からないというか……」


彼女たち3人は気付いていない――エルダが盛大な勘違いをしているということに。


エルダは王太子が来たあの日、『ラファエルが愛しい人との結婚式の準備をしている』という話を盗み聞きした。だがその『愛しい人』が自分だなんてちっとも気づいていない。『ラファエルには婚約者がいて、その女性との結婚式を準備している』と思い込んでいるのだ。


しかし侍女たちは認識のズレに気付かないまま、ラファエルに報告していた……。


「要するに『レイは嫌いじゃないけれど、まだ男としては見れない』って状況なんじゃないかしら」

「「あー……。なるほど」」

3人とも合点のいった顔をしている。だが実際は大ハズレだ。


「それにしてもレイは、いつあのことをシスターに打ち明けるのかしら」

「うーん……まだ無理でしょ。今シスターが知っちゃったら、ショックで失踪しかねないもの」

「せめて今より少しでも、シスターがレイに心を開いてくれなきゃね……」


ワインのグラスを空にしたローゼルが、少しお酒の回った口調で言った。

「シスター、素直に落ちちゃえばいいのに。あんなに何度も求愛されたら、その気になってきても良い頃だと思うんだけどな。レイはいろいろ歪んでるけど、まあ、いい男だし」

ミモザもアニスも賛同している。

「そうね。意外と度胸があるし、あれだけ一途に愛してくれる男はそうそういないと思うわ」

「うん。しつこいし腹黒いけど、いい奴だよね」


3人はグラスにワインを注ぎ直すと、意気投合して再度の乾杯をした。


「ともかく私たちのやるべきことは一つ! シスターがレイを好きになるように、引き続きがんばりましょ。新生アルシュバーン侯爵家のためにも、あの二人には幸せになってもらわなくちゃ」

「「おー!!」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ