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婚約者から「やっぱり俺がいないと君は何も出来ないんだね」と言われ続けたとある令嬢がその婚約者から離れた結果

作者: 柊瑠璃

よろしければ楽しんで行ってください

「やっぱり俺がいないと君は何も出来ないんだね」


そう言われ続けてもう何年がたったのでしょうか。婚約者のリオン・クオーツからそう言われ続ける度に内心ため息をついている私、リリアベル・ガーネットはこの最低男の婚約者に選ばれてしまったのです。


 きっかけは、私が幼い頃まで遡らなければなりません。リオン(こいつ)と私はいわゆる幼なじみというものでして……。私はいつ会っても嫌味ばかり言われるので全く好きでは無かったのだけれど、親同士の間でいつの間にか話がまとまっていました。私が嫌だと言っても外面だけは良い奴なので本気で嫌だとは思われていないようなのです。しかもリオン(こいつ)は私と二人きりの時だけ嫌味を言ってくるのです。もう少し愛想良くした方がいいとかそんな無愛想だと嫁の貰い手が無くなるとか余計なお世話って感じでしょう? 本当に幼い頃から鬱陶しいったらないですよね?


幼い頃はそれだけで済んでいたからまだ良かったのだけれど……私が中等部にあがる頃にはまだ婚約者という立場なのにですよ?  リオン(こいつ)の母親から結婚するなら少しずつ領地経営のことも覚えていかないといけないとねと言われて何故か領地経営の勉強がはじまりました。

本来であれば毎日だったのだけれど学業との両立が難しいため三日に一度でお願いしますと懇願してやっと納得していただきました。しかもこの母親がリオンを溺愛していましてね……私にリオン(こいつ)の中等部の課題をやれとやってきたんですよ!? 私もさすがにご自分のお子さんが授業についていけなくなりますけどよろしいので? と言い返したらそれは困るということでこの話は無くなりました。だいぶ話が脱線してしまいましたね。話を戻しましょうか。


 幼い頃から婚約させられ中等部から領地経営やお偉いさんの名前などを叩き込まれた私は、高等部にあがる頃にはもう顔を見ただけで名前が浮かぶようになっていました。パーティや夜会に参加する機会も増え、その度に着飾られてリオンと一緒に参加していたのだけれどリオン(こいつ)は全く覚える気がないのかいつも私を頼りにしていたのですが、そのパーティーで少しハプニングがありました。私がいつも大切にしていた猫の刺繍が施されているお守りが無くなってしまい、奴を放って探し回り何とか見つけられたから良かったのですが……その直後にお偉い様が来られて咄嗟に名前が出てこなかったんです。その時だけいつの間にリオン(こいつ)が隣にいてその方の名前を覚えていて冒頭にあったセリフをこれみよがしに言ったんです!!


 私だって普段ならわかってましたけど? あのお守りはお父様から貰った大切なものだったので見つかってほっとしていた時に急に話しかけられてみなさいよ! 名前なんて出てこないでしょう!! 失礼しました。

うっかり取り乱しました。ですが、この出来事をきっかけにリオンから離れようと決心しました。そんな時、新しい出会いがありました。この出会いが私の人生を変えるとは思っていませんでした。


 いつものように無駄に着飾られてリオンと一緒に夜会に参加していたとある日のことです。奴が少し席を外すということなので私も少し夜風に当たろうかなと思いバルコニーに出たのが間違いでした。なんとそこには奴とクラスで私が一番尊敬していた女性であるカレン様が抱き合っていたのです!!  私が呆然としていると後ろから現れたのは美しい水色の瞳をした見目麗しい男の人でした。


「あれ、君の婚約者だよね?」


そう聞かれたので私は頷きます。すると彼は深いため息をつきました。どうやら彼の婚約者は今奴と抱き合っている彼女のようです。


「僕の名前はクラウス。君の名前は?」

「リリアベル・ガーネットと申します」

「それだけ? 僕になにか言うことはないの?」

と尋ねられましたが、どこかで聞いたことがあるようなないようなそんな名前でしたので首を傾げていると急に彼は笑いだしました。何事かと思い彼を見ているとこんなことを言い出したのです。


「君、僕と手を組まない? 君と僕ならいい関係を築けると思うんだ」


そんなことを急に言われて驚いたのですが、私も奴には呆れていたし、奴よりかはこの人の方がいいかなと思ったので彼と手を組むことにしました。


「私は何をすればいいのですか?」


と尋ねると「君はその時が来るまで何もしなくていいよ。僕が全部その障壁を取り払ってみせるから」

とだけ言うと行ってしまいました。

それから数週間後が経ちましたが、特に何も音沙汰はありません。リオンとカレン様はあれからさらに仲良くなったのか学園でも、一緒にいることが増えました。横を通る度に勝ち誇った笑みを浮かべていたのでどうしてそんな笑みを浮かべているだろうそして彼のあの言葉は一体なんだっただろうかと考えているうちに月日が流れました。カレン様は度々私に接触を図ってきましたが、私は彼女にあまり関わらない方がいいと思っていため彼女を避け続け、彼女も上手くいかないことにイライラしているようでした。そんな日々を送っているうちに彼の言葉のことはすっかり忘れてしまい、卒業パーティーの日となりました。


前日にリオンからは緑色のドレスが届いたのですが、派手な作りであるのとレースがたっぷりと使用されていて私にはとても似合いそうにありません。どうしようかと考えていると水色のとても綺麗なドレス家に届きました。そこにはこんなメッセージが添えてありました。


ついにその時がきたから明日そのドレスを来ておいで


それはクラウス様からのものでした。そういえばそんなことあったなと思いつつ本当に明日これを着ていいのだろうかと考えているとお母様が背中を押してくれました。こんな素敵なドレス着ないともったいないと。私がこれを着ようと思い直していると父様がやってきてドレスを見て感嘆の声をあげました。


「こんなドレスを送ってくるなんてさすが……」

「お客様がいらっしゃいました」


父の言葉を遮るように焦ったようなメイドの声が聞こえ、何事かと思いそちらに視線を向けるとクラウス様が来ていました。


「クラウス様! どのようなご要件でしょうか?」

「こら! この方は……」

「いいんだ。リリには隠しているからね」

「あら? 愛称呼びはまだ許していませんが?」

「そう固いことは言わないで欲しいね。僕らは協力関係にあるのだから」


そう言いつつどこか楽しげな彼に対し不満そうにしていると、彼はお父様に何かを囁きその囁きにお父様が驚きなんの話しをしているのか気になっていると彼が楽しそうにこう言いました。


「明日は少し変わったショーを用意しているから君も楽しむといいよ」

「変わったショーですか?」

「ああ。そうだ。君も関係があるからね。では明日迎えに来るよ」


そう言うと彼は帰っていきました。変わったショーとはいったいなんなのかと思いながら夕食を食べ、お風呂に入り髪を乾かしてベッドに入り考えているうちにに眠ってしまいました。当日の朝、クラウス様が私を迎えに来ました。私はリオンがもし迎えに来たのならば彼はまだ私の婚約者なので彼と行くべきだと思っていましたが彼は迎えに来ませんでした。きっとカレン様を迎えに行っているのでしょう。そんなことを考えていると馬車から彼が降りてきました。


「約束通り迎えに来たよ」

「ありがとうございます。ですが、リオンが来ると思っていたので驚きました。あら? クラウス様珍しい色のジャケットを着ているんですね?」


そう尋ねると彼はにっこり微笑みました。その笑みにはどこか威圧感がありました。その笑みを浮かべたまま彼は話を続けます。


「あぁ。彼は用事があるみたいでね。そんなことよりこの服似合っているかな?」

「お似合いですよ。とてもよく似合っています」

「それだけ?」

「ええ。他になにか言う事ありますか?」


そう聞いたのだけれど彼は答えてくれませんでした。何かを小声で呟いたようですが私には聞こえませんでした。会場に到着し、馬車から降りるとクラスメイトが傍にいました。そのクラスメイトが何か言いたげな表情をしていましたが、クラウス様が何かを囁くと納得の表情を浮かべて行ってしまいました。私はいったいなんだろうと思いつつ、ここで彼とは一旦別れることになりました。協力関係にあるとはいえ、彼の婚約者は私ではありませんからね。私は仕方なくリオンと会場に入りました。会場に入る際、奴の目が驚きに見張っているような気がしたのですが気のせいだと思い、エスコートを受けて会場に入りました。そしてしばらくたった後、彼が言っていた変わったショーが始まったのです。


リオンはカレン様を守るように抱きしめ声高に宣言しました。


「リリアベル・ガーネット! 君との婚約は破棄させて貰うよ! 嫉妬でカレンを虐めるなんて人としてありえない行為だからね」

「嫉妬ですか? わたし《・・・》がカレン様にでしょうか」

「あぁ! カレンから全て聞いているよ」

「何をでしょうか?」

「君がカレンしてきた数々のことだよ。教科書を破ったり、池に突き落としたりということをだよ!!」


ふと彼女のほうを見ると怪しげな笑みを浮かべていました。


「私はそんなことしていませんが? そもそも私がカレン様に嫉妬することなど有り得ません! わたしはあなたのこと好きではありませんから」


その言葉に対しリオンは驚いていましたし、隣のカレン様も信じられないような目で私を見てきました。


「いつもいつも嫌味を言われて鬱陶しいなと思っていたんです。ではいい機会ですね! 婚約破棄承りました」


そう言った瞬間、リオンは困ったような表情をしカレン様も何かに気づいたようで鬼気迫る表情で私に迫ってきました。


「そのドレス! どういうことよ? なんであんたがそのドレスを着ているのよ?」

「どういうことと言われましても……これはリオンが私に似合わないドレスを送り付けてきたのでクラウス様が今日のために用意してくださったものですが?」

「そういうことを言っているんじゃないの!! だってそのドレスは……」


彼女が何かを言いかけたその瞬間、会場に声が響き渡りました。その声の方をみるとクラウス様が入場されるところでした。


「クラウス・クロイツ王太子殿下のご入場です!」


 その言葉を聞いて私は彼がこの国の王太子殿下だと初めて気がついたのでした。私が呆然と立ち尽くしているとそこにクラウス様が楽しげな表情を浮かべながらやってきました。


「やっと僕の正体に気づいたんだね? でもまだ気づいていないこともあるようだけれど……」

「王太子殿下だったのですね……どこかで聞いたことあるような名前だとは思っていたのですが、思い出せなかったですし、まぁいいやと思っておりました。気づいていないことですか?」


そう尋ねたのですが、彼は困ったように笑うだけでした。そしてカレン様の方を向くと彼女に向かってこう言い放ちました。


「カレン・スピネル! お前の良くない噂はよく聞いている。他人の婚約者を次々と奪うような女は私の婚約者にはふさわしくない! よってお前とは婚約を破棄しここいるリリアベル・ガーネットと新たに婚約を結び直すこととする! さぁ、リリアベル返事は?」


そう問われて、これは断れないものだと思い素直に頷くと会場から歓声があがり、気づくと私はクラウス様に抱きしめられていました。ですが、その状況をみてまずいと感じたのかリオンが私に縋ってきました。


「リリアベル! 俺の事を好きじゃないなんて嘘だよな? 俺たちは愛し合っているよな?」

「何を言ってらっしゃるのですか? そんなことあるわけないじゃないですか……。いつもいつも嫌味ばかり。『やっぱり俺がいないと君は何も出来ないんだね』でしたっけ? その言葉を言われる度に私はなんでこの人と一緒にいるんだろうといつもいつも思っていました! 私 、あなたがいない方が幸せになれみたいです。さようなら」


そう言い切ると彼はその場に崩れ落ちていました。そんな彼に対しクラウス様が何かを囁くと彼はさらに項垂れていました。


「何を言ったのですか?」

「君は気にしなくていいことだよ。それにしてもお互いの瞳の色のドレスを身につけているのにそれに気づかないなんて思わなかったよ。僕の噂を君は知らないの?」

「そういえば、そうですね! 今気づきました。綺麗な空の色だなとしか思っていませんでした。噂って何のことですか?」

「君はそういう人だった……まあそんな君だから僕は好きになったんだけど」


そう言うと私を抱き寄せ、皆に宣言しました。


「彼女が受け入れてくれたため、婚約は成立した! みな楽しんでいくといい」


その言葉に私が少し恥ずかしいなと思っていると彼が耳元でこう囁きました。


「もう絶対に逃がさないから」


そう言われ彼の方をみると目をぎらつかせてまるで捕食者のようだと思いこれは捕まってはいけない人に捕まってしまったのではないかと思ったのですが、それを顔に出さないように私はにっこりと微笑んだのでした。


おわり

お読みいただきありがとうございました!

面白いと思った方は評価いただけると嬉しいです。


彼女が幼い頃のこんなひとこまをお楽しみください!


リリアベルがまだ3歳の頃のお話です。

「ねぇねぇ、母様? 母様のドレスは父様の瞳の色に似ているのね。どうして?」

「それはね……あの人が私は俺のものだとみんなに主張しているからよ。いわば独占欲というものね」

「どくせんりょく? よく分からないけど……母様をみんなにじまんしているっていうこと?」

「ええ。そうね。そういうことになるのかしら?」

「父様って愛がおもいのね。母様とはもう結婚しているのに」

「そうかもしれないわね……私も少し恥ずかしいわ」

「でも、父様と母様ってラブラブだよね」

そんな話をしているところに通りかかったお父様がこの話を聞いてしまい俺の愛は重いのかと落ち込んでしまったとか。そこを何とかお母様が励まし、お父様とお母様の2人だけに分かるドレスの色を着るようになったそうです。

 後にこの話を聞いたクラウス様から「僕の愛、重いみたいだけど覚悟してね」と言われるのはまた別のお話。

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