ソフィア、公爵家に到着
新作です!お付き合いいただけると幸いです!
タマヌヤ王国には様々な魔法が存在する。属性な火、水、葉、光の4つ。
光をすべるのはタマヌヤ王国の、王族の血を引くもの。
火をすべるのはタマヌヤ王国三代公爵の一つ、フランマ公爵家。
水をすべるのは同じく三代公爵家のルー家。
葉をすべるのは同じく三代公爵のサーユ家。
この物語は、ルー家の末端貧乏分家に生まれた女の子の物語。
「ソフィア…本当に行くのかい?」
心配そうな目をする母に
「お母様、何度目ですか、その話は。もう、お母様がそう引き留めるせいで、公爵家まで2日半で向かう予定だったのに、もうあと2日しかありませんよ」
「で、でも…やっぱり心配なものは心配でね。あなたがあちらさんで、高級な壺を壊してこないか」
ほんとにお母様は…。、
「心配するところが違います!」
「あぁ、ごめんごめんうっかり心の声と口から出る声が逆になってしまったわ。心配なのよ、やっぱり…」
「お母様…」と、ため息をつきつつ、
「お母様、うちは子爵という肩書を持つ一応貴族ではありますが、私が働かなくてはエヴリンも、ジュリもルーベンもドマニクも父上も母上も領民も生活が苦しくってよ。次期当主のジェームズお兄様は当主になるためのお勉強で忙しいですし。私以外選択肢はないのですよ」
お人好しのお母様とお父様によって運営される。各領民が納める税と同じだけの税をアグア家からも出し、国税として納める。
そんな、領民とほぼ変わらぬ生活を送る貴族である。領民同士はもちろんのこと、領主である私たちと領民も仲がいい。
だが、あまり作物が育つわけではない我が領地を運営している必要最低限しか領民から税を取らない領主が貧乏じゃないわけがない。
「反論できないのが辛いな。すまない、、おまえに大変な思いをさせて」
お父様が申し訳なさそうに肩をすくめる。
そんなに申し訳なく思う必要は全くないのに。だって、だって、
「我がアグア家の貧乏は昔からですので。しかも、メイドの仕事だって経験です!経験は私を助けてくれる糧になりますから、問題はありません!」
「てもルー家の次期当主も含め、あまりいい噂聞かないよねぇ。ルー家に不敬を働いた人は次の日には溺死して見たかったし、その人の一族はもろとも行方不明とかさ」
「水をすべる本家様の家にそんなことを言わないの」
「だってさぁ」
次男で弟のルーベンが余計なことを言う。治安的には安全だけれども、いちばん命を落とす危険性の高い職場だ。矛盾しているが…。
だが、そんな職場にあえて就職する理由は給金が高いからだ。
「そもそも、お試し雇用期間にほとんどのメイドがクビにされているそうですしね。もしかしたら2週間後にはもう返ってきてるかもしれませんし…。まぁ、雇ってもらえたとしても2年間ですから」
そう、メイドとして働きたいと言う旨を本家に手紙で送ったところ、
『研修期間2週間を設ける。その期間内に不適とみなされたものはその期間分の給金を渡す。その後速やかに立ち去ること。5/30午前10:00に屋敷に来るように。ただし、研修期間を通過するものは100人に1人程度である』
的なことが書いてある文章が返ってきた。給金が高い分、優秀な人しか雇わない、としているのだろう。
2年間とはこちらの都合だ。私はいま16歳。18歳になったら今の婚約者と結婚しなくてはいけない。
超女好きで、超亭主関白。要はただのクズ男。でも、うちより財産はあるし身分も伯爵。家を継ぐ男はクズだとしても、現段階は商売などで家が潤っている有名な伯爵家。
断れるはずもないし、まぁ愛のある結婚よりも家族が幸せになれる結婚がいちばんいいからな。
と思う。
そもそも、ウィルと結婚できないのなら誰と結婚しても同じだ。と、幼少期の初恋に思いをはせる…。
が、ハッと気づく。そんなこんなで家族と話しているうちに半日が経ってしまった。
あと、1日半で公爵様の家まで着かなくてはいけない。結構ギリギリのスケジュールになりそうだ。
これ以上長引くのはまずい。
「二週間で帰ってきてもちゃんとおかえりって迎えてくださいね。それで入って参ります」
「あぁ、もちろんだよ」
「帰ってくるにしても雇ってもらえるにしても手紙は書くのよ」
「「「「ソフィー姉、元気にがんばってね」」」」
家族のみんなに見送られながら私は馬に乗った。
屋敷の前に着いたのは9:48頃。
本当にギリギリセーフ…。
駅場で馬を変える時以外休まずにきたため、お風呂に入る暇もなく、汗だくだ。
流石に研修期間入る前に「おまえ汗だくでくさいから入ってくるな」とか言われたら悲しいからなぁ…。
「オーダ」
魔法で体と顔の汚れや洗い流しついでに服も綺麗にする。久しぶりにやったが我ながらよくできてる。
普段魔法は畑に水やりをする時とか、大規模にしか使わないから、これほど小さい規模の魔法は久しぶりに使った。
でもやっぱり、我ながら天才的な腕前ではないだろうと、自画自賛しつつ、門番の人に
「本日からメイドとして研修期間に入ります、ソフィア・アグアと申します。中に入れていただけますか?」
門番の人は驚いた顔をした後に
「…確認取れました。メイド長が迎えにきますので少々お待ちください」
と言う。なぜ、驚いた顔をした…?私臭かった?臭いも落としたつもりだったけど、やっぱり腕がおちてて、臭いまで消せてなかったとか…?
え、だとしたらめちゃめちゃ恥ずかしい…。
メイド長さんがくるまでにもう一回魔法をかけて、臭いを…
「あなたが、ソフィアさんですね。ルー公爵家でメイド長をしていますメリッサと申します。着いてきてください」
と、60代くらいの優しそうなおばあちゃんが出てきた。
「は、はい!」
明後日返事の声が少し大きくなってしまった。
そんな私に微笑みメリッサさんは孫を見るような優しい笑みを向けてから歩き始めた。
とりあえず、とりあえず、絶対に、室内に入る前までには臭いを消さなきゃ…!
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また次話で、あなたとお会いできたら嬉しいです٩( ᐛ )و