第1章8話:下山
デレクが死んだ。
かなりの戦闘能力を持っていたであろうが、サイコキネシスを使えば楽勝だった。
やはりサイコキネシスは圧倒的な能力だ。
「……」
人を殺したことに対する罪悪感は……そこそこある。
しかし、思ったより平気だった。
アンリは英才教育のなかで、盗賊を殺すなどの経験を積んでいたため、人殺しには慣れている。
いざというときには、殺すこともできてこその貴族だという帝王学を学んできたのだ。
だから、デレクを殺したことに関するショックは薄い。
「戦利品の確認をするか」
俺はデレクから入手できたアイテム類を確認することにした。
まずアイテムバッグ。
大容量が入るバッグのようで、これはそのまま頂いておこう。
中身は、
ポーション類、
武具類、
魔導具類、
魔石類、
魔物の素材類
(レアアイテムや高ランクのアイテムが多い。これはありがたいな)
俺はシンプルにそう思った。
特に気になるアイテムはコレだ。
◆◆◆
【鑑定妨害の護符】
所持しているだけで、他者からの鑑定を妨害できる。
◆◆◆
誰かから自分に対して鑑定スキルを使われても、防ぐことができる護符。
これを持っていれば、誰かに鑑定されて、サイコキネシスの詳細がバレることはなくなる。
(サイコキネシスは俺の切り札。詳細を知られないようにできるのは、大きいな)
と俺はほくそ笑んだ。
さてアイテムバッグをさらに探る。
取り出したのは金銭袋。
大量の金貨が入った金銭袋が、三つも四つも、アイテムバッグに入っていた。
(めちゃくちゃ溜め込んでやがるな)
デレクが所持していた資金は極めて多いようだ。
今後、旅をするための軍資金として、もちろん頂いておく。
(要らないものも結構ある。街にたどり着いたら、売却するか)
俺はそう頭の中で計画を立てる。
さて、もうここには用はない。
俺は立ち上がり、その場をあとにするのだった。
霊玉の広場を出て、俺はガレイン岩山を下山しはじめる。
来たときの道とは別の道を進む。
下りるときはこちらのほうが近道だからである。
緑の少ない大地、岩石の多い坂道を、下りていく。
坂道をくだる。
くだる。
くだる。
……その途中のことだった。
円形の広場のような場所にたどりついた。
ガレイン岩山の中間にある休憩ポイントのような広場だ。
そこに4人の男女がたむろしていた。
2人が男。
2人が女である。
こいつらは……
デレクの仲間、か?