第3章47話-2:遠距離2
フィオリト岩原の中央付近までやってきた。
太陽が天頂から大きく傾き、青空にオレンジ色が混ざり始める。
そのとき。
「ん……」
視界の遠くに、大きなシルエットが見えてきた。
巨大で、翼がある。
――――竜だ。
おそらく刃竜だろう。
俺の進行方向にいるな。
……と思っていると。
「……!!」
刃竜の眼前で、白い光がまばやいたと思った次の瞬間、激しい轟風をまといながら何かが飛んできた。
それは白く輝く銀閃――――刃である。
白くかがやく刃が、かまいたちのごとく飛来してきたのだ。
俺は軽く横ステップをおこなって、そのかまいたちを回避する。
空振ったかまいたちは、俺のすぐ斜め後方にある岩壁をバターのごとく切断した。
10メートルほどもある岩壁が、中ほどから斜めに崩れ落ち、断面があらわになる。
すさまじい切れ味である。
(これは……俺に対する攻撃だな)
と俺は判断する。
刃竜による遠距離攻撃。
数百メートル先の的を攻撃できる射程範囲の広さ。
寸分違わぬ位置に狙い撃つエイムの正確性。
ただかまいたちを撃ってきただけであるが、刃竜の強力さを窺い知ることができる。
……なるほどな。
たしかに、あの竜は強い。
だが、もちろん、サイコキネシスの敵ではない。
「誰に喧嘩を売ったか、思い知らせてやらねばならんな」
と、つぶやきながら、俺は歩みを再開する。
逃げも隠れもするつもりはない。
堂々と、刃竜のいるほうに向かう。




