第1章4話:真意
俺は尋ねる。
「なぜここにいる?」
デレクが答えた。
「この霊玉を破壊するためさ」
霊玉の破壊。
おそらく目的は、アンリの覚醒を止めるため……だろう。
(つまりこいつは、霊玉を使えばアンリが覚醒することを知っている)
そして、そんな知識を持っているのは転生者しか有り得ない。
俺は確認した。
「……お前は、やっぱり転生者なんだな?」
デレクは笑う。
「ああ、そうだよ。でもどうしてわかったんだ? 誰かに聞いたのか?」
「いや……俺も転生者だからだ」
「え?」
とデレクは怪訝そうな顔をした。
さらに告げてくる。
「そんなはずはないだろう? お前は今まで、明らかに転生者の素振りではなかったじゃないか」
そう思っても無理はない。
デレクの記憶にあるアンリは、きっとただの異世界人だっただろう。
だから俺は答えた。
「ついさっき、前世の記憶を思い出したばかりだからな」
「ほう……? なるほど」
とデレクは納得した。
俺は言った。
「なあ……デレク。俺と和解しないか?」
「和解?」
「お前は、俺が悪役貴族になると思ったから、排除したんじゃないのか?」
ここにくるまでに考えていたことがあった。
デレクは、なぜアンリを嵌めてまで追放しようとしたか?
それは、アンリが将来的に悪役貴族になることをわかっていたからじゃないか?
もしも、悪を未然に排除しておきたいという良心から、アンリを追放に追い込んだのだとしたら、デレクは根っからの悪人とまではいえない。
しかし。
「はははは!」
とデレクは笑った。
「お前は勘違いをしているな。俺は別に、お前が悪役予備軍だから潰したわけじゃないぞ」
「何?」
「単純なことだ。俺がお前を潰した理由は、俺がアンリの婚約者――――リズロッド嬢を推しているからだ!」
「な、なに?」
俺は困惑する。
たしかにアンリはリズロッド嬢という伯爵令嬢と婚約していたが……
彼女を推しているだと?
デレクは言った。
「だからアンリとリズロッド嬢が仲を深める前に、アンリを排除しておこうと思ったわけだよ」
「つ、つまりお前は、ヒトの女を横取りするために、俺を嵌めたというのか?」
「そうだ!」
堂々と肯定しやがったぞ、こいつ!