第6章222話:傭兵
<アンリ視点>
辺境都市クードランにて、ヴィオレッタ商会との交渉を終えた俺は、帰路へと着いていた。
(これで一通りの視察は終わった)
国のさまざまな街や都市を巡り、商談や交渉を済ませてきた。
あとは王城に戻ってティメリア宰相に報告をし、今後の方針を伝えるだけだ。
このまま一気に転移魔法で王城まで飛んで帰ってもいいのだが……
せっかくなので、のんびり旅をしながら帰ることにした。
―――――帰りの旅路。
足元には深い渓谷が広がっている。
険しい崖の間を一筋の細い道が蛇行していた。
空気は澄み渡り、岩肌に生える緑や草花が鮮やかだった。
「ここが……ジェレン渓谷か」
地図によれば、この先の町までは半日ほどの行程だ。
渓谷の道は狭く、馬での通行は危険を伴うため、徒歩での移動である。
景色を眺めながら歩く。
渓谷の道を進むうちに、いつしか日が傾き始めた。
岩肌が赤く染まる。
そのとき、俺は不穏な気配を感じ取った。
(……誰かいるな)
俺に向けられた殺気。
遠くから足音が聞こえてきた。
複数の人間が近づいてくる。
俺は足を止め、ゆっくりと周囲を見回した。
突然、岩陰から紅蓮のバトルアックスがぎらめき、一直線に俺へと飛来した。
俺はサイコキネシスによるバックステップで、バトルアックスを回避する。
(ふむ……刺客か)
先日、【影の使者】と交戦したことを思い出す。
老騎士ヴァルディンは処分したが、まだまだ俺に反発する貴族は多い。
今度はどんな刺客がやってきたのかと俺は注目する。
――――ぞろぞろと四方から武装した者たちが現れた。
彼らは統一された赤い肩当てと、さまざまな武器を手にしていた。
手斧、ハンマー、ハルバード、大剣……どれも重量級の武器である。
暗殺者ではなく傭兵であろう。
「新国王アンリ、お前の旅はここまでだ」
低い声が響いた。
大きな岩の上に、巨大な大剣を持つ男が立っていた。
その体格は他の傭兵を圧倒している。
全身を覆う赤と黒の鎧は、夕日に照らされて不気味に輝いていた。
「お前は誰だ?」
と俺は尋ねた。
「オレはゴルディアス。傭兵団【剣獣】を束ねる者だ」
そう男は高らかに宣言した。
「【剣獣】……傭兵集団か」
アンリはゲーム知識を思い出す。
たしかゴルディアスは傭兵王と呼ばれた男だ。
戦争、殺人、暗殺……などなど戦闘に関することなら、なんでも請け負う殺人鬼。
傭兵としても有名だが、裏社会でも名の知れた殺し屋である。




