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第6章221話:別視点5


「見返り、ですか」


「ああ。これからのベルナダ武人国を盛り上げるための手助けをしてもらいたい」


とアンリは言いつつ、テーブルの上に地図を広げた。


「ベルナダ武人国より遥か南東の地方――――フロスティア地方では、毎年、開催される大市おおいちがある。いわゆる年市ねんいちだ。お前には、その年市に参画するための販路を構築してもらいたい」


ヴィオレッタは身を乗り出した。


「年市は、商人にとって巨大な商機しょうきでもありますが……距離や輸送コストなど、様々な課題があります」


「そうだな。そこを俺が支援するということだ」


ヴィオレッタは考え込んだ。


そして懸念を口にする。


「失敗した場合のリスクが大きいと思いますが……」


「もちろん理解している。失敗したときは大赤字おおあかじになる商売だろう。だがそれを恐れてローリスク・ローリターンという戦略に走るのは、俺の好みではない。巨大な投資をして、巨大なリターンを取り返す――――それこそが国を豊かにする最も効率的な道だ」


巨大な投資をして、巨大なリターンを取り返す……


その言葉にヴィオレッタは心を動かされた。


「俺はベルナダ武人国の強みとして、戦闘力だけでなく、商売の上手さも鍛えたいと思っている。お前がその第一号となり、はんを示せ」


「……」


ヴィオレッタは考察する。


(陛下の狙いはおそらく貿易によって外貨を稼ぐこと。それにより国内の富を増やし、国の経済を豊かにしていくこと)


外貨を稼いで国を豊かにする……という発想は、グラストン政権下では存在しなかった考え方である。


なるほど新国王アンリは、経済のことをよく理解している。


(そして私たちに、その経済発展のいしずえになるよう求めている。ただし一方的な搾取ではなく、あくまで私たちももうかる形で……)


アンリの要求を叶えるのは簡単なことではないが、決して荒唐無稽こうとうむけいなことを述べているわけではない。


もしも年市での商売が成功すれば、ヴィオレッタ商会は一気に大商会だいしょうかいへと成長を遂げるだろう。


(この機会を逃しては、商会長の名が廃るわね)


ヴィオレッタの決意が固まっていく。


そして彼女は口を開いた。


「承知しました。陛下のご期待に応えるべく、全身全霊ぜんしんぜんれいをかけて年市の販路はんろ開拓かいたくはげみます。失敗した際は、私の命も商会もお好きになさってください」


アンリは満足そうにうなずいた。


「貿易にあたって必要なものがいくつもあるだろう。後日、それを書類にまとめ、国に提出せよ」


「はっ」


かくしてヴィオレッタ商会は年市のための活動を開始するのだった。







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