第6章219話:別視点3
<ヴィオレッタ商会の視点>
ヴィオレッタ商会。
この商会は貿易をおこなっている商会だ。
大手の商会ではなく、中堅の商会。
巨大な利益を上げてきたわけではないものの、堅実で安定した商会経営をおこなってきた組織である。
しかしそんなヴィオレッタ商会の会議室では、緊張が立ち込めていた。
なぜなら国王陛下であるアンリが、近日、ヴィオレッタ商会のオフィスを訪れるというからだ。
「陛下からの書簡です」
と秘書の女性が告げた。
商会長ヴィオレッタは書簡を手に取り、目を通す。
ヴィオレッタは24歳という若さで商会長を務める経営者だ。
茶色い長髪。
黄色い瞳。
ゆったりとした長衣に身を包んでいる。
ヴィオレッタは書簡の内容を簡潔にまとめた。
「陛下は、鉱山集落コルベックを視察したのち、うちのオフィスに参られるそうよ」
彼女は書簡を置き、部下たちを見渡した。
「本当に来るんですね、陛下が……」
と部下の女性が告げた。
「でも、なぜうちなんかに……? うちは大商会でもないのに」
とヴィオレッタは疑問を口にする。
大手商会ならともかく、中小商会でしかないヴィオレッタ商会に、なぜ国王が目をつけたのかわからない。
すると若い男性の部下が意気揚々と告げた。
「きっとヴィオレッタ会長の努力が認められたんですよ! これはチャンスです! 陛下からの支援を得られれば、一気に大商会の仲間入りができますよ!!」
「支援……ね」
ヴィオレッタは不安げだった。
グラストンやハイドラ卿のように、王侯貴族とはロクでもない連中が多いからだ。
特に脳筋大国であるベルナダ武人国では、その傾向が強いし、王が経済のことを全く理解していない場合も多い。
「新国王アンリ陛下は、経済を重視しているそうです」
と秘書が告げた。
「そしてそれゆえに貴族を嫌い、商人を優遇しているとか」
「その話は耳にしたことがあるわ。大商人のみなさんがひそかに沸いていたもの」
新国王アンリは経済の強化を最重視しており、商人への優遇処置を盛んにおこなっているのだとか。
だから大商人たちは、新しい時代の風が吹いてきたと喜んでいる。
そうした空気は、中小商人であるヴィオレッタたちのもとへも伝わってきている。
(だとすれば本当に、私たちのことも支援してくださるつもりでいる……?)
とヴィオレッタは期待感をにじませた。
……が、楽観は良くないと気を引き締める。
ヴィオレッタは告げた。
「……とにかく、陛下が参られるというのなら、こちらに拒否権はないわ。商会をあげて最大限のもてなしをおこないましょう」
「「「はい!」」」
と部下一同、返事をした。




