第6章218話:別視点2
<ヴィシーたちの視点>
リュドラウスダンジョンの上層。
そこは壁から浮かび上がる青い結晶の光に照らされていた。
水滴が天井から落ち、その音が静かに響いている。
「ここの魔物は弱くないニャ」
ヴィシーが先頭を歩きながら言った。
「まだ上層とはいえ、油断は禁物ニャ」
ディオネは無言で二刀流の剣を構え、周囲を警戒しながら進んでいた。
ディオネの鋭い目は常に危険を探し、わずかな音にも反応している。
そしてクレミュアは少しうしろを歩いていた。
クレミュアの双剣は鞘に収められているが、その目はヴィシーの背中に釘付けになっていた。
彼女のくちびるに小さな笑みが浮かんだ。
「あ、こっちだニャ」
ヴィシーが通路の分岐点で左を指し示した。
ディオネはすぐに従い、その方向へと進み始める。
その瞬間だった。
「えいっ!!」
クレミュアは双剣を引き抜きながら、猛スピードで駆け出し、ヴィシーに向かって剣を振り下ろした。
不意打ちの攻撃である。
しかし彼女の剣が届く前に、ヴィシーの姿は消えていた。
「え?」
次の瞬間。
クレミュアは何かに強く押され、通路の壁に叩きつけられた。
「うぎゃっ!!?」
クレミュアのつぶれたような声。
ディオネは振り返り、呆れたような表情を浮かべた。
「またか……」
クレミュアは壁から身体を引きはがし、ぶつぶつと何かをつぶやきながら立ち上がった。
「どうしてわかるのよ……」
不意打ちを避けるだけでなく、反撃まで繰り出したヴィシーの動き。
クレミュアは驚きと歯ぎしりを禁じ得ない。
「余計なことはしてないで、さっさと行くニャ」
ヴィシーは何事もなかったかのように前を進む。
三人はふたたび歩き始めた。
クレミュアは肩のほこりを払いながら、徐々にヴィシーとの距離を縮めていった。
ダンジョンはさらに奥へと続き、通路は狭くなったり広くなったりしていた。
ときおり、魔物が現れたときはディオネかクレミュアが処理した。
「ここの魔物は本当に強いな。こんなダンジョンがあるなんて」
とディオネが感心している。
通路が広い空間へと開けた。
そのとき、クレミュアがふたたび動いた。
今度はさらに素早く、前回の失敗を教訓にしたかのような動きだった。
彼女はヴィシーに向かって【ザティルト】を放ちながら、双剣で斬りかかった。
「これでどうよ!!」
しかし魔法は通じず、ヴィシーの姿は消えていた。
「ニャ!」
背後から聞こえた声に振り返ると、クレミュアの身体は宙に吹っ飛ばされていた。
「きゃああっ!!?」
彼女は天井から垂れ下がっていた結晶に激突し、粉々になった結晶の破片とともに床に落ちてきた。
「いたた……」
「大丈夫か?」
とディオネが声をかける。
クレミュアが舌打ちした。
「ちっ、あのクソ猫。なんであんなに強いのよ!?」
不意打ちだろうがザティルトだろうが、ものともしないヴィシーの強さに、クレミュアは悔しい思いをさせられるばかりだ。
「さあな……アンリといいヴィシーといい、世界は広いことを痛感させられる」
ディオネはしみじみそうつぶやく。
クレミュアたちの強化訓練は、まだまだ続くのだった。




