第6章214話:鉱山
ボーゼスは声を震わせながら続けた。
「全身が赤いうろこで覆われ、背中には棘が並び、口からは炎を吐き、前足で地面を打ち付ければ洞窟が震動し、崩落する―――――多くの鉱夫たちが、ヤツのせいで命を落としました」
「なるほど。それで採掘が難航しているというわけか」
「はい。この鉱山からは【セリダナイト】という特殊な鉱石が採れます。魔法武具の製作に極めて重要な素材で、かつては王国の重要な収入源でした」
俺は深く考え込んだ。
セリダナイト鉱石はゲームの中でも貴重な素材として知られていたものだ。
魔具の製作の特殊強化において必要なアイテムであり、ボーゼスの述べた通り、ベルナダ武人国の貴重な資源である。
「前国王グラストンには何度も援助を要請しましたが……」
ボーゼスはため息交じりに告げる。
「『戦士の国に魔物退治すらできぬ弱者は要らん』と一蹴されました」
「そうか」
と俺は冷静に応じた。
「事情はわかった。明日、鉱山を案内してくれ。己の目で、グラドベヒーモスを確かめるとしよう」
「なっ……!?」
とボーゼスの顔に戸惑いの色が浮かんだ。
「き、危険です! グラドベヒーモスは手練れの冒険者が十数人で囲んでも、太刀打ちできない化け物ですよ!?」
「心配するな。俺は強い」
有無を言わさぬ圧力を放つ。
ボーゼスは驚きの表情を浮かべ、やがて深く頭を下げた。
「……承知いたしました。明朝、ご案内いたします」
そして。
翌日。
朝。
晴れ。
澄んだ空気の中、俺は鉱山へと向かった。
鉱山の入り口は巨大な洞窟のようだ。
中から熱気と硫黄のような匂いが流れ出てきた。
ボーゼスの案内で洞窟の中に入る。
しばらく奥に進み、下へと続く経路をいくつも進む。
やがて、鉄の柵が張られた場所にたどり着いた。
ボーゼスが立ち止まる。
「ここから先は立ち入り禁止にしています」
とボーゼスが緊張した面持ちで説明した。
「最後の犠牲者が出たのは半年前。経験豊かな鉱夫チームが中層まで調査に行ったときのことです。生きて戻ってきたのは一人だけでした」
俺は無言で中層の入り口を見つめた。
闇の奥から、大きな気配を感じる。
「案内は十分だ。お前は帰っていいぞ」
「ええと……本当に陛下ご自身が中層へ潜られるのですか? しかもお一人で……」
「そうだ」
俺は短く答え、それ以上語ることなくボーゼスと別れた。
鉄の柵を超えて、中層へと足を進める。
しばらくは小さな通路が続いていたが、やがて大きな通路へと変わった。
予想以上に横幅が広く、天井も高い。
壁面には精巧な支柱が整然と並んでいた。
(鉱山……というより、ダンジョンだな)
俺は心の中でつぶやきながら、歩く。
鉱山中層は照明もないのに明るい。
ゆえに松明やランタンなどを持たずとも、俺はサクサクと進んでいくことができた。




