第6章210話:貴族の本拠地へ
<貴族たちの視点>
レイブン領。
古城。
ベルナダ王国北部の険しい山の中腹に建っている。
かつては重要な軍事拠点だった城だが……
今は会合などに使われるものだ。
城の最上階にある大広間では、数十名の貴族たちが集まっていた。
緊張した空気の中で会話を交わしている。
「『影の使者』からの連絡がまだ無いのは気がかりだな」
と一人の子爵が言った。
彼の渋い顔には焦りの色が浮かんでいた。
「『影の使者』は任務完了後、必ず連絡を寄越すはずだ。何かあったのかもしれん」
とエルベック伯爵が低い声で応じた。
ヴァルディン伯爵は杖を突きながら、冷静に言葉を返した。
「焦るな。あの山道で暗殺を試みたのは昨日のことだ。連絡が遅れることはよくある」
「しかし、もし失敗していたら?」
と若い貴族の一人が不安げに言った。
「失敗などするはずがない」
とヴァルディン伯爵は自信たっぷりに答えた。
さらに彼は続ける。
「『影の使者』は数百年の歴史を持つ暗殺集団だ。たとえアンリが強くとも、あの集団の前では無力だろう」
そのとき――――
大広間の扉が突然、大きな音を立てて開いた。
冷たい風が吹き込み、ろうそくの炎が揺らめく。
「本当にそう思うか?」
冷酷な声が広間に響き渡った。
扉の向こうには、アンリの姿があった。
<アンリ視点>
「ア、アンリ!?」
とエルベック伯爵が驚きのあまり言葉を詰まらせた。
貴族たちの間に動揺が走っている。
「お前たちに尋ねたいことがある」
アンリはゆっくりと前進しながら言った。
「なぜ『影の使者』などという、三流の暗殺者を差し向けたのだ?」
誰も答えられなかった。
広間には恐怖の空気が満ちていた。
アンリの冷笑が広間に響く。
「あの程度の刺客で俺を討てると思うたか? 浅はかにもほどがある」
「陛下、何のことだかわかりません」
とヴァルディンは冷や汗を浮かべながらも、とぼけるように言った。
「誰かが私たちの名を騙ったのでしょう」
彼の言葉を無視し、俺は広間の中央へと歩み出た。
「しらばっくれても無駄だ。俺は俺に対する反逆を許さない。卑怯な手段で暗殺を仕掛けてきた罪は重いぞ」
ヴァルディンたちをまっすぐに見据える。




