第2章22話:秘境の魔族2
俺は告げた。
「失礼。少し尋ねたいことがあるのだが?」
すると全員の視線が俺に向いた。
ブロースが目を細めて、聞いてくる。
「あン。なんだよテメエ?」
「俺は旅人だ」
「旅人?」
「ああ。……それで、尋ねたいのだが、この村はお前のような魔族に支配されているのか?」
確認のために聞く。
ブロースはニッと笑って答える。
「ああ、そうだぜ? こいつらヒコ村の連中は、俺たち魔族の家畜だ!」
その言葉に、フレミアとオッサンはうつむいてしまう。
反論したいが、刃向かっても仕方ないのであきらめている顔だ。
俺は告げた。
「なるほど。もう一つ聞くが、お前たち魔族は、山のふもとにあるローゴス砦を根城にしている……間違いないか?」
ゲームにおいては、ローゴス砦という古びた砦が、秘境魔族の本拠地である。
ブロースが目を細めつつ尋ねてくる。
「……俺たちの根城なんか聞いて、どうするつもりだよ。テメエ?」
「決まっているだろう?」
と俺は前置きをしてから、言い放った。
「お前たち魔族を、皆殺しにするのだよ」
「……!?」
「俺はこれから、お前たちの根城であるローゴス砦を襲撃し、陥落させる。砦の中にいる魔族は虐殺する。一匹残らず、全てだ」
フレミアとオッサンが、唖然とした。
ブロースも沈黙する。
空気が冷えていくような気配がした。
直後。
「クハッ」
とブロースが笑い始めた。
「クハハハハハハハ!! 面白いことをほざく旅人じゃねえか!! 俺たちを殺す!? 全員虐殺するだとォ!?」
「ああ、そうだ。皆殺しにする」
「ギャハハハハハハ!!! こいつは傑作だ!! まさかこんな命知らずがやってくるとはよォ!!」
ブロースが爆笑する。
俺は肩をすくめ、告げる。
「何を笑ってるんだ? 俺はお前も殺すつもりだぞ?」
「あン?」
ブロースが爆笑をやめる。
ふう、とひと息ついて、ブロースが告げる。
「テメエ……見たところ魔力量がかなり低いじゃねえか。そんなんでオレ様を殺せると思ってんのか?」
「ああ。その気になれば、10秒も要らないだろうな」
「はンッ……実力差も理解できねえカスが。粋がってんじゃねえよ!!」
怒鳴りつけるような声とともに、ブロースが動き出す。
俺に拳を放ってきた。
魔力が込められた剛風をまとうパンチだ。
普通に食らったら即死だろう。
だが俺のサイコキネシスの前では、全ては無意味だ。
ブロースが放ってきた拳が、俺の腹へと突き刺さる。
「……」
しかし俺は、攻撃を食らう直前にサイコキネシスを発動していた。
ブロースのパンチが無力化される。
だが、攻撃が無効化されたことに気づいていないのか……
ブロースは生き生きと言ってきた。
「どうだ? これがオレ様のパンチだ! 魔族にナメた口きいたら、こうなるんだよ!」
だが、俺は告げた。
「弱いな」
「……!?」
「お前の弱すぎる拳では、俺の腹筋には効かないようだ」
さも腹筋で耐えたかのように、俺は言い張った。
もちろんサイコキネシスをカモフラージュするための方便である。
「バカな……俺の拳が、効いてない、だと?」
とブロースは驚きながら、冷や汗を浮かべる。




