表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/220

第6章197話:遷都


「ゆえに代理を務めてもらう。政策案は読んだな?」


「はい」


「ならば、俺が目指すべき国家像こっかぞうは理解できたはずだ。後のことは委細いさい、お前に任せる」


「そのような大任たいにんを任じていただけるとは、光栄の至りです。しかし、私が陛下のお考えを完全に理解し、遂行できるかどうか……」


と不安げな様子を宰相は見せた。


俺は告げた。


「俺は自分の考えを、お前に100%理解してもらおうとは思っていない。俺が望んだことを、お前が完璧に察して、叶えてくれるなどとも思っていない。しょせんは赤の他人なのだから、完璧な意思疎通いしそつうは不可能だ」


さらに俺は続ける。


「だから『だいたい合っていればそれでいい』。お前の舵取かじとりが、俺の望む方向とおおむね一致していれば、文句は言わない。あまりにも方向がズレたときだけは口を出して、軌道修正してやる」


「はっ。承知いたしました」


と、うやうやしく頭を下げて宰相は承諾を示した。


ここで俺は、次の政策を提示することにした。


「あと、この王都から遷都せんとしたいと思っている」


ティメリアは一瞬、目を見開いた。


遷都――――王都を移すこと。


それは民衆だけでなく国政にも大きな影響を及ぼすものである。


「陛下、遷都とは……」


彼女の声には驚きと同時に、深い懸念けねんがにじんでいた。


俺は答える。


現王都げんおうとは、立地に縛られている。ベルナダ高原は人里離ひとざとはなれた場所にあり、周辺地域とのつながりが弱い。まあ攻め込まれたときに守りやすいという面もあるが……しかし、現在は経済的な利便性を優先したい」


そこで一拍置いてから続ける。


「ゆえに俺は、国の経済と文化の中心として、より開かれた都市―――『ノーファンダル』に遷都することを考えた」


王都を移動させるという大胆な計画。


ティメリアはしばし思案げな顔をしてから。


「なるほど……ノーファンダルへの遷都は確かに革新的ですね」


と肯定の意を示し、さらに続けた。


「正直、私には考えつかない発想でした。陛下がおっしゃるように、新たな首都としてノーファンダルは、極めて魅力的な候補でございます。かの都は、豊かな自然資源と先進的な職人技術、そして地理的に、近隣都市きんりんとしとの交易の中継地ちゅうけいちとなる場所です。あそこを首都とすれば、政治と経済の動きがスムーズになり、国全体くにぜんたいが活性化することに繋がるでしょう」


ノーファンダルへの遷都をしたときのメリットやデメリット、具体的な政策が頭に浮かんだようだ。


やはりティメリアは優秀であり、使える部下である。


「話が早くて助かる。すぐに遷都に関する計画をまとめ、実行しろ。さきほども言ったが、いちいち俺の裁可を待つ必要はないからな。全てお前の裁量で計画を進めろ」


「はっ!」


かくしてティメリアとの会合が終了するのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ